妊娠すると新しい命に喜びを感じると同時に、何をすべきなのか、逆に何をしてはいけないのかと、これからの生活に不安を感じる妊婦さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「妊娠したらこれだけは気をつけたい!」というポイントをご紹介します。
妊娠したら、女性の体はどうなるの?

妊娠するとホルモンバランスが大きく変化し、体に様々な症状が現れます。特に妊娠初期は、下記のようなトラブルに悩まされる妊婦さんが多くいます。
つわり
つわりは胸やけや胃の不快感があり、ゲップがでたり、常に吐き気がしたりするような状態です。
何を食べても吐いてしまうという「吐きつわり」や、常に食べていないと気持ち悪くなる「食べつわり」など、症状が出るタイミングや程度は人それぞれです。
つわりがひどく、水の飲めないような状態となって体重が減っていくと「妊娠悪阻(にんしんおそ)」の可能性があり、点滴や入院での治療が必要になることも。
妊娠悪阻は、全妊婦さんの約0.5〜2%にみられます(※1)。
貧血
妊娠中はママの血液量が増え、赤ちゃんの発育のために鉄分が使われるようになるため、貧血になりやすい状態です(※2)。
貧血になっても多くは無症状ですが、ひどくなると、疲れやすい、めまい、息切れ、頭痛などの症状が現れることがあります。
肌荒れ
妊娠すると、ホルモンバランスの変化や、つわりによる栄養・水分の不足などで、ニキビや吹き出物、乾燥、かゆみ、シミといった肌トラブルに悩まされる妊婦さんが多くいます。
つわりが落ち着いたら栄養バランスのとれた食事を心がけて、規則正しい生活をおくれるようになるといいですね。
頻尿
妊娠すると、ホルモンの影響で膀胱や尿管などの筋肉が緩んだり、子宮が大きくなって膀胱を圧迫したりすることで頻尿になります。
我慢すると膀胱炎などの病気になってしまうこともあるので、こまめにお手洗いに行くようにしてくださいね。
便秘・おなら
妊娠すると、ホルモンの影響で便秘になりやすく、その分ガスが溜まっておならが出やすくなります。
水分補給を心がけながら食物繊維を積極的に摂取して、医師の許可がある場合は軽い運動を行うといいですね。
下痢
つわりの吐き気から、冷たい食べ物ばかりを口にしてしまうと、体が冷えて下痢をしやすくなります。できるだけ胃腸に負担をかけない食事を心がけましょう。
おなかの張り
お腹の張りは、子宮の収縮や、子宮を支える靭帯や子宮広間膜が引っ張られることなどで起こります。
痛みや出血を伴うときは、切迫流産の可能性も考えられるので、すぐに病院を受診しましょう。
むくみ
妊娠中は、血液量とエストロゲンの分泌量の増加によって、特に手足がむくみやすくなります。指輪や靴がきついと感じる人もいるようです。
妊娠したら塩分の過剰摂取を避け、体を冷やさないようにしましょう。むくみが気になるときは、塩分を排出する効果がある「カリウム」を多く含むバナナやほうれん草、トマト、かぼちゃなどの食品を摂ったり、マッサージや足湯をしたりするのもいいですね。
物忘れ
妊娠中は、記憶力や集中力が低下しやすくなり、物忘れがひどくなることがあるようです。正確な理由はわかっていませんが、ホルモンバランスの変化や妊娠による睡眠不足などの生活の変化によるものではないかと言われています。
また、血液が不足することで脳に血が届きにくいことが要因という説もあります。
情緒不安定
妊娠するとホルモンバランスが変化したり、生活環境が変化したりする影響で、イライラしたり、悲しくなったりと、精神的に不安定になりやすくなります。
また妊娠初期は、妊娠を喜ぶ気持ちがある一方で、仕事と家庭の両立など産後の生活について不安になったりと、気持ちが不安定になる時期でもあります。
急に泣きたくなったり、パートナーについあたってしまったり…。自分でコントロールするのは難しい時期なので、周りの人にも説明しておきましょう。つらいときは、人に頼ったり、相談したりすることも大切です。
疲れやすい・眠い
妊娠すると、ホルモンバランスの影響で疲れやすく眠気を感じやすい状態になります。
疲れたときや眠いときは、無理せずに体を休めましょう。お腹が大きくなると苦しくて、まとまった睡眠が取りづらくなるので、夜だけでなく、昼にもこまめな睡眠が取れるといいですね。
足がつる・こむらがえり
妊娠中期以降になると、日中や睡眠中に足がつることがあります。運動不足による血行不良、ミネラル不足、大きなお腹を支えることによる骨盤の歪みなどが原因です。
適度な運動や栄養バランスの取れた食事を心がけ、妊娠中から使える骨盤ベルトで骨盤のケアを行っておくと安心です。
足がつってしまったときは、つま先をつかみ、すねの方に引き上げるストレッチを行ってください。お腹が大きくなると自分では対処できなくなるので、家族に足裏を押してもらいましょう。
妊娠したら気をつける嗜好品は?

妊娠中は、下記2つの嗜好品を控える必要があります。
タバコ
喫煙をしている人は、すぐに禁煙しましょう。
タバコには、子宮や胎盤への血液量を減少させ、酸素の運搬能力を低下させる物質が含まれています。そのため赤ちゃんの低酸素状態や、胎盤の老化・機能低下を引き起こし、以下のようなリスクが生まれます(※3)。
- 常位胎盤早期剥離
- 前置胎盤
- 流産
- 早産
- 出生体重・身長の低下
- 赤ちゃんの発育遅延
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
受動喫煙でも赤ちゃんの発育に悪影響があるため、家族に喫煙者がいる場合は禁煙してもらうか、絶対に目の前では吸わないように配慮してもらってください。
受動喫煙をしないよう、タバコを吸っている人や喫煙所には近づかないようにするのも大切です。
飲酒
妊娠中のママの飲酒は、赤ちゃんに「胎児性アルコール・スペクトラム障害」と呼ばれる以下のような症状を引き起こす可能性があります(※4)。
- 催奇形性(妊娠初期)
- 赤ちゃんの発達遅延
- 中枢神経系の障害(脳の形態異常、頭蓋骨の成長不全、難聴など)
- 特異的な顔貌(薄い上唇、平坦な人中、平坦な顔面中央)
- 知的能力障害
- ADHD・うつ病・依存症などの精神科的問題
胎児性アルコール・スペクトラム障害には治療法がなく、唯一の予防策は飲酒をしないことになります。
少量の飲酒でも、妊娠中のどの時期でも赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるため、妊娠がわかったらお酒をやめるようにしましょう。
妊娠したら気をつけたい食事は?

妊娠すると、「食の好みが変わる」「2人分の食欲が出る」といいますが、下記のポイントに注意が必要です。
カフェイン
内閣府の食品安全員会は、妊娠中にカフェインを摂り過ぎると、胎児の発育に影響が及ぶ可能性が指摘されているとして、妊娠中はいつも以上にカフェインの摂り過ぎに注意するように注意喚起をしています(※5)。
カフェインが健康に及ぼす影響は個人差が大きいため、正確に評価することは難しく、日本ではカフェインの1日に摂取できる許容量が設定されていません。
国や機関によっても許容量は異なりますが、世界保健機関(WHO)は、妊婦さんはコーヒーの摂取量を1日3〜4杯(カフェイン量として約300mg)までにするべきとしています(※6)。
欧州食品安全機関(EFSA)は、カフェイン量として1日200mg以下であれば、赤ちゃんに健康リスクは生じないとしています(※6)。
カフェイン摂取量をゼロにする必要はないですが、妊娠中のカフェイン摂取はどこまでが安全でどこからが危険なのかがはっきりとしていないため、摂り過ぎないようにしておきましょう。
カフェインは、コーヒーだけでなく、チョコレートや紅茶、コーラ、栄養ドリンクなどにも含まれているので、妊娠中はカフェインの含まれる食品について注意を払っておくと安心ですよ。
生もの
妊娠すると抵抗力が弱まるので、感染症や食中毒にかかりやすくなります。できるだけ生ものを控えておくと安心です。
特に生肉や生ハム、サラミなどには「トキソプラズマ」という寄生虫が含まれていることがあり、注意が必要です。
妊娠中にトキソプラズマにかかると、水頭症や視力障害、精神・運動機能障害など、赤ちゃんに様々な影響が出るリスクがあります(※1)。
妊娠中は肉類や魚介類は十分に加熱して食べるようにしましょう。
暴飲暴食
妊娠初期はつわりがつらくて満足に食事ができないことがありますが、妊娠中期になるとその反動もあり、たくさん食べたくなってしまう人も。
しかし体重が増えすぎてしまうと、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった合併症のリスクが高まり、ママも赤ちゃんも危険な状態になることがあります。
妊娠中の体重増加量の推奨値は、次のとおりです(※7)。

妊娠中の体重増加の目安は妊娠前のBMI値によって異なるので、まずは自分のBMI値を計算してくださいね。
ただ妊娠中の体重増加が不足していると、早産や低出生体重児になる可能性が高くなるほか、赤ちゃんが成人後に循環器疾患や糖尿病を発症するリスク因子になりやすいことがわかっています。
医師の指示に従い、適切な範囲内で体重増加をしながら妊娠生活を送れるといいですね。
妊娠したら気をつけたい生活習慣は?

下記のような生活習慣は、妊娠生活をよりよいものにするためにも大切なものです。
運動
妊娠中の適度な運動は、マイナートラブルの改善やお産をスムーズに進めるためにとても大切です。
激しい運動は控えたほうがいいですが、時期にあわせて、下記のような運動に取り組んでみてください。
妊娠初期
妊娠初期は体調のコントロールが難しい時期なので、無理は禁物です。ひと駅分のウォーキングやストレッチなど、軽い運動を行いましょう。
気分転換程度に捉えてくださいね。
妊娠中期・後期
妊娠中期に入ると医師から許可が出れば、マタニティヨガやマタニティスイミングができるようになります。
ウォーキングや、ストレッチ、スクワットといった、手軽にできる運動もおすすめです。
ただし、お腹が大きくなるにつれてバランスが取りづらくなるので、転倒には十分注意してください。
ストレスを溜めない
妊娠中のストレスが赤ちゃんに及ぼす影響については、まだはっきりとわかっていません。しかし、妊娠中にかかわらず、ストレスが溜まると身体的にも精神的にも不調が現れてしまいます。
妊娠中は体も心も特にデリケートな時期です。ストレスを全く無くすことは難しいですが、溜め込まないようにしましょう。
好きな音楽を聞きながらゆっくりとお風呂に入る、友人や家族とおしゃべりする、適度な運動で汗をかくなど、自分なりのリフレッシュ方法をみつけてくださいね。
妊娠したら薬にも注意が必要?

妊娠中の薬全てがよくないわけではありませんが、赤ちゃんへの影響を考慮して、慎重になる必要があります(※2)。
なかには、子宮の収縮を促すものや、赤ちゃんの成長を妨げるものもあるので、自己判断での服用は避けてください。
薬を飲みたいほどの不調があるときは、妊婦健診を待たずに医師に相談して、緩和するためのアドバイスをもらいましょう。症状がひどいときは、妊娠中でも服用できる薬を処方してもらえることもあります。
妊娠したらするべきこととは?

妊娠したら、今後の生活のためにするべきことが意外にたくさんあります。慌てることがないように、事前に知っておきましょう。
出産する医療機関を探す
妊娠に気づいたら、できるだけ早く出産する医療機関を探しましょう。早めの週数でないと予約ができない医療機関も多くあります。出産経験のある人に話を聞いたり、ネットで調べたり、直接足を運んで医師に相談したりするといいですね。
分娩方法や費用、部屋の設備、出産後の対応もチェックしておきましょう。里帰り出産をする場合は、妊婦健診のために通院する近所の医療機関と、里帰り先でお産をする医療機関の2つを決める必要があるので、注意してください。
妊娠届を出す・母子手帳をもらう
妊娠7週目頃になり産婦人科で妊娠確定がされ、母子手帳をもらうように言われたら、自治体の窓口に行って申請しましょう。市役所や区役所、行政サービスセンターなどでもらえます。
妊娠届出書を指定の窓口に提出する場合もあるので、自治体のホームページなどで、事前に必要な書類がないかを確認しておきましょう。
妊娠報告
妊娠したら、両親や会社の同僚、いつもお世話になっている人に妊娠報告をしましょう。
下記の関連記事を参考にしながら、両親や直属の上司には早めに伝える、同僚には安定期に入ってから報告するなど、順を追って報告していきましょう。
戌の日に安産祈願に行く
日本には古くから、「戌の日」に安産祈願に行く習わしがあります。
ただし最近では、戌の日にとらわれず、妊婦さんの体調や予定の都合がいい日に行くことも多いようです。妊娠5ヶ月を過ぎて安定期に入ったら、体調を見て、神社やお寺にお参りに行ってもいいですね。
立ち会い出産を検討する
出産の際に、パートナーや家族などに立ち会ってもらうのかを検討して、出産する医療機関に希望を伝えましょう。
立ち会い出産に関しては、するかしないか、誰に立ち会ってもらうかなどに、良い悪いといったことはありません。自分や家族にとって、一番ハッピーなバースプランを考えてくださいね。
地域の助成金・手当の手続きについて調べる
妊娠・出産に際しては、自治体によって、様々な助成金やお得な制度があります。住んでいる地域にどのようなものがあるか、事前に調べておきましょう。制度を調べたら、手続きも忘れずに。
仕事の引継ぎ
現在仕事をしている人は、仕事の引き継ぎについても早めに考えておきましょう。
妊娠中は、何が起こるかわかりません。突然切迫早産になり、早めに休みに入らざるを得なくなる場合もあります。いつ引き継ぎが生じてもいいように、早め早めに準備しておくのがおすすめです。
妊娠したら気をつけることを考えすぎないのも大切
妊娠すると、赤ちゃんへの愛情が大きいあまり「あれもこれも気をつけないと!」と色々なことを制限してしまいがちです。しかし、あまりに窮屈な生活を送ると、ストレスが溜まってしまいます。
ママのストレスは、赤ちゃんにとっていいものとはいえません。最低限気をつけることだけは押さえて、周りのサポートや理解も得ながら、リラックスした状態でマタニティライフを過ごしてくださいね。