妊娠初期に気をつける8のことと、妊娠したら母体に起きる12の変化

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

妊娠すると新しい命に喜びを感じると同時に、何をすべきなのか、逆に何をしてはいけないのかと、これからの生活に疑問や不安を感じる妊婦さんも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「妊娠したらこれだけは気をつけたい!」というポイントをご紹介します。

妊娠したら、女性の体はどうなるの?

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妊娠するとホルモンバランスが大きく変化し、体に様々な症状が現れます。特に妊娠初期は、下記のようなトラブルに悩まされる妊婦さんが多くいます。

つわり

つわりとは、妊娠初期に起こる吐き気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状の総称です。妊婦さんの50~80%が経験し、特に初産婦の方がつわりが起こりやすいとされています(※1)。

何を食べても吐いてしまう「吐きつわり」や、常に食べていないと気持ち悪くなる「食べつわり」など、症状には個人差が大きいです。

つわりがひどく、水の飲めないような状態となって体重が減っていくと「妊娠悪阻(にんしんおそ)」の可能性があり、点滴や入院での治療が必要になることもあります。

妊娠悪阻は、全妊婦さんの約0.5〜2%にみられます(※2)。

貧血

妊娠中はママの血液量が増え、赤ちゃんの発育のために鉄分が使われるようになるため、貧血になりやすい状態です(※1)。

貧血になっても多くは無症状ですが、ひどくなると、疲れやすい、めまい、息切れ、頭痛などの症状が現れることがあります。

肌荒れ

妊娠すると、ホルモンバランスの変化や、つわりによる栄養・水分の不足などで、ニキビや吹き出物、乾燥、かゆみ、シミといった肌トラブルに悩まされる妊婦さんが多くいます。

体調が落ち着いているときは、栄養バランスのとれた食事を心がけて、規則正しい生活を送れるようになるといいですね。

頻尿

妊娠すると、ホルモンの影響で膀胱や尿管などの筋肉が緩んだり、子宮が大きくなって膀胱を圧迫したりすることで頻尿になります。

我慢すると膀胱炎などの病気になってしまうこともあるので、こまめにお手洗いに行くようにしてくださいね。

便秘・おなら

妊娠すると、ホルモンの影響で便秘になりやすく、その分ガスが溜まっておならが出やすくなります。

水分補給を心がけながら食物繊維を積極的に摂取して、医師の許可がある場合は軽い運動を行うといいですね。

下痢

つわり中に冷たい食べ物なら口にできるという妊婦さんもいますが、食べ過ぎると体が冷えて下痢をしやすくなります。できるだけ胃腸に負担をかけない食事を心がけましょう。

おなかの張り

お腹の張りは、子宮の収縮や子宮を支える靭帯などが引っ張られることなどで起こります。

お腹の張りがずっと続く、痛みや出血があるというときは、切迫流産の可能性も考えられるのですぐに病院を受診してください。

むくみ

妊娠中は、血液量とエストロゲンの分泌量の増加によって、特に手足がむくみやすくなります。指輪や靴がきついと感じる人もいるようです。

塩分の過剰摂取を避け、体を冷やさないようにしましょう。むくみが気になるときは、塩分を排出する効果がある「カリウム」を多く含むバナナやほうれん草、トマト、かぼちゃなどの食品を摂ったり、マッサージや足湯をしたりするのもいいですね。

物忘れ

妊娠中は、記憶力や集中力が低下しやすくなり、物忘れがひどくなることがあるようです。正確な理由はわかっていませんが、妊娠によるホルモンバランスの乱れや睡眠不足などの生活の変化によるものではないかと言われています。

また、血液が不足することで脳に血が届きにくいことが要因という説もあります。

情緒不安定

妊娠するとホルモンバランスや生活環境が変化したりする影響で、イライラしたり、悲しくなったりと、精神的に不安定になりやすくなります。

また妊娠初期は、妊娠を喜ぶ気持ちがある一方で、妊娠中や産後の生活について不安になったりと、気持ちが不安定になる時期でもあります。

急に泣きたくなったり、パートナーについあたってしまったり…。自分でコントロールするのは難しい時期なので、周りの人にも説明しておきましょう。つらいときは、一人で抱え込まずに人に頼るようにしてくださいね。

疲れやすい・眠い

妊娠すると、ホルモンバランスの影響で疲れやすく、眠気を感じやすい状態になります。

疲れや眠気があるときは、無理をせずに体を休めましょう。お腹が大きくなると苦しくて夜にまとまった睡眠が取りづらくなるので、日中もこまめに寝たり横になったりして睡眠不足を少しでも解消できるといいですね。

足がつる・こむらがえり

妊娠中期以降になると、運動不足による血行不良やミネラル不足などが原因で、日中や睡眠中に足がつることがあります。

ふだんから適度な運動や栄養バランスの取れた食事を心がけておくと予防できることもありますよ。

足がつってしまったときは、つま先をつかみ、すねの方に引き上げるストレッチを行ってください。お腹が大きくなると自分で対処するのは難しくなるので、パートナーや家族に足裏を押してもらうといいでしょう。

妊娠したら気をつける嗜好品は?

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妊娠中は、下記2つの嗜好品を控える必要があります。

タバコ

喫煙をしている人は、すぐに禁煙しましょう。

タバコには、子宮や胎盤への血液量を減少させるため、赤ちゃんの低酸素状態や、胎盤の老化・機能低下を引き起こし、以下のようなリスクが生まれます(※3)。

  • 常位胎盤早期剥離
  • 前置胎盤
  • 流産
  • 早産
  • 出生体重・身長の低下
  • 赤ちゃんの発育遅延
  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)

受動喫煙でも赤ちゃんの発育に悪影響があるため、家族に喫煙者がいる場合は禁煙してもらうか、絶対に目の前では吸わないように配慮してもらってください。

タバコを吸っている人や喫煙所には近づかないようにすることも大切ですよ。

飲酒

妊娠中の飲酒は、赤ちゃんに「胎児性アルコール・スペクトラム障害」と呼ばれる以下のような症状を引き起こす可能性があります(※4)。

  • 催奇形性(妊娠初期)
  • 赤ちゃんの発達遅延
  • 中枢神経系の障害(脳の形態異常、頭蓋骨の成長不全、難聴など)
  • 特異的な顔貌(薄い上唇、平坦な人中、平坦な顔面中央)
  • 知的能力障害
  • ADHD・うつ病・依存症などの精神科的問題

胎児性アルコール・スペクトラム障害には治療法がなく、唯一の予防策は飲酒をしないことです。

少量の飲酒でも、妊娠中のどの時期でも、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるため、妊娠がわかったらお酒をやめるようにしましょう。

妊娠したら気をつけたい食事は?

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妊娠すると、「食の好みが変わる」「2人分の食欲が出る」などといわれたりしますが、特に下記のポイントに注意が必要です。

カフェイン

内閣府の食品安全員会は、妊娠中にカフェインを摂り過ぎると、胎児の発育に影響が及ぶ可能性が指摘されているとして、妊娠中はいつも以上にカフェインの摂り過ぎに気をつけるように注意喚起をしています(※5)。

カフェインが健康に及ぼす影響は個人差が大きいため、正確に評価することは難しく、日本ではカフェインの1日に摂取できる許容量が設定されていません。

国や機関によっても許容量は異なりますが、世界保健機関(WHO)は、妊婦さんはコーヒーの摂取量を1日3〜4杯(カフェイン量として約300mg)までにするべきとしています(※6)。

欧州食品安全機関(EFSA)は、カフェイン量として1日200mg以下であれば、赤ちゃんに健康リスクは生じないとしています(※6)。

カフェイン摂取量をゼロにする必要はないですが、妊娠中のカフェイン摂取はどこまでが安全でどこからが危険なのかがはっきりとしていないため、摂り過ぎないようにしておきましょう。

カフェインは、コーヒーだけでなくチョコレートや紅茶、コーラ、栄養ドリンクなどにも含まれているので、妊娠中はカフェインの含まれる食品について注意しておくと安心ですよ。

生もの

妊娠すると抵抗力が弱まるので、感染症や食中毒にかかりやすくなります。できるだけ生ものを控え、肉類や魚介類は十分に加熱してから食べるようにしましょう。

特に、生肉や生ハム、サラミなどには「トキソプラズマ」という寄生虫が含まれていることがあるため注意が必要です。

妊娠中にトキソプラズマにかかると、水頭症や視力障害、精神・運動機能障害など、赤ちゃんに様々な影響が出るリスクがあります(※1)。

暴飲暴食

妊娠初期はつわりの症状がつらくて満足に食事ができないことがありますが、妊娠中期になるとその反動もあり、たくさん食べたくなってしまう人も。

しかし妊娠中に体重が増えすぎてしまうと、妊娠糖尿病などの合併症のリスクが高まり、ママも赤ちゃんも危険な状態になることがあります。

妊娠中の体重増加量の推奨値は、次のとおりです(※7)。

妊婦 体重増加目安 2021年3月改定 BMI値

妊娠中の体重増加の目安は妊娠前のBMI値によって異なるので、まずは自分のBMI値を計算してくださいね。

一方で、妊娠中の体重増加が不足していると、早産や低出生体重児になる可能性が高くなるほか、赤ちゃんが成人後に糖尿病などの病気を発症するリスクになることがわかっています。

医師の指示に従い、適切な範囲内で体重増加をしながら妊娠生活を送れるといいですね。

妊娠したら気をつけたい生活習慣は?

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妊娠生活をよりよいものにするために、下記のような生活習慣を心がけましょう。

運動

妊娠中の適度な運動は、マイナートラブルの改善やお産をスムーズに進めるため大切です。

激しい運動は控えたほうがいいですが、妊娠経過が順調で医師から許可が出ていれば、時期にあわせて下記のような運動に取り組んでみてくださいね。

妊娠初期

妊娠初期はつわりの症状が現れたり、体調が安定しなかったりする時期なので、無理は禁物です。体調が良いときにストレッチなどで軽く体を動かして気分転換すると良いでしょう。

妊娠中期・後期

妊娠中期に入ると医師から許可が出れば、マタニティヨガやマタニティスイミングができるようになります。

ウォーキングや、ストレッチ、スクワットといった、手軽にできる運動もおすすめです。

ただし、お腹が大きくなるにつれてバランスが取りづらくなるので、転倒には十分注意してください。

ストレスを溜めない

妊娠中は体も心もデリケートな時期です。ストレスを全く無くすことは難しいですが、慢性的にストレスを溜め込んでしまうと、赤ちゃんにもママの体にも影響が出てくる可能性があります。

好きな音楽を聞きながらゆっくりとお風呂に入る、友人や家族とおしゃべりする、温かい飲み物を飲むなど、自分なりのリフレッシュ方法をみつけられるといいですね。

妊娠したら薬にも注意が必要?

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妊娠中の薬全てがよくないわけではありませんが、赤ちゃんへの影響を考慮して、慎重になる必要があります(※1)。

なかには、子宮の収縮を促すものや、赤ちゃんの成長を妨げるものもあるので、自己判断での服用は避けてください。

薬を飲みたいほどの不調があるときは、妊婦健診を待たずに医師に相談して、緩和するためのアドバイスをもらいましょう。必要に応じて、妊娠中でも服用できる薬を処方してもらえることもありますよ。

妊娠したらするべきこととは?

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妊娠したら、今後の生活のためにするべきことがたくさんあります。慌てることがないように、事前に確認しておいてくださいね。

出産する医療機関を探す

妊娠に気づいたら、できるだけ早く出産する産院を探しましょう。早めの週数でないと予約ができないところもあります。出産経験のある人に話を聞いたり、ネットで調べたり、直接足を運んで医師に相談したりするといいですね。

分娩方法や費用、部屋の設備、出産後の対応などをチェックしておくことも大切です。里帰り出産をする場合は、妊婦健診のために通院する近所の産婦人科と、里帰り先でお産をする産院の2つを決める必要があります。

妊娠届を出す・母子手帳をもらう

妊娠7週目頃に産婦人科で妊娠確定がされ、母子手帳をもらうように言われたら、役所や行政サービスセンターに妊娠届出書を提出し、母子手帳を受け取ります。

自治体によっては、オンラインや郵送で妊娠届出書の申請を受け付けていて、母子手帳は自宅に送付してくれることもあるので、役所のホームページなどで確認してみてくださいね。

妊娠報告

妊娠がわかったら、タイミングをみて、両親や会社の同僚、いつもお世話になっている人に妊娠報告をします。

下記の関連記事を参考にしたりパートナーと相談したりしながら、両親や直属の上司には早めに伝える、同僚には安定期に入ってから報告するなど、順を追って報告していきましょう。

戌の日に安産祈願に行く

日本には古くから、「戌の日」に安産祈願に行く習わしがあります。

ただし最近では、戌の日にとらわれず、妊婦さんの体調や予定の都合がいい日に行くことも多いようです。妊娠5ヶ月を過ぎて安定期に入ったら、体調を優先しながら、神社やお寺にお参りに行ってもいいですね。

立ち会い出産を検討する

出産の際に、パートナーや家族などに立ち会ってもらうのかを検討して、出産する施設に希望を伝えましょう。

立ち会い出産に関しては、するかしないか、誰に立ち会ってもらうかなどに、良い悪いといったことはありません。自分や家族にとって、一番ハッピーなバースプランを考えてくださいね。

地域の助成金・手当の手続きについて調べる

妊娠・出産に際しては、自治体によって、助成金やお得な制度があります。住んでいる地域にどのようなものがあるのか、事前に調べておきましょう。申請期限や手続きに必要な書類なども忘れずにチェックしてくださいね。

仕事の引継ぎ

仕事をしている人は、産休に入る際の仕事の引き継ぎについても早めに考えておきましょう。

妊娠中は、何が起こるかわかりません。突然切迫早産になり、早めに休みに入らざるを得なくなる場合もあります。いつ引き継ぎが生じてもいいように、早め早めに準備しておくのがおすすめです。

妊娠したら気をつけることを考えすぎないことも大切

妊娠すると、「あれもこれも気をつけないと!」といろいろなことを制限してしまいがちです。しかし、あまりに窮屈な生活を送ると、かえってストレスが溜まってしまうこともあります。

ママのストレスは、赤ちゃんにとっていいものとはいえません。最低限気をつけることだけは押さえて、周りのサポートや理解も得ながら、リラックスした状態でマタニティライフを過ごせるといいですね。

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