妊婦健診のエコー検査で「赤ちゃんに口唇口蓋裂の疑いがある」と告げられる、あるいは生まれたあとに口唇口蓋裂と診断されると、ショックを受けるママもいるかもしれません。赤ちゃんの今後の成長に不安を感じてしまうこともあるでしょう。しかし、口蓋口唇裂は、治療すればほかの子とほとんど変わらない状態まで改善させることもできます。そこで今回は、口唇口蓋裂は妊婦健診のエコーでわかるのか、原因や症状、治療法などについてご説明します。
口唇口蓋裂とは?
口唇口蓋裂とは、唇や上あご(口蓋)に裂け目が入る、先天性奇形の一つです。日本人の場合、約500人に1人の割合で発症し、ほかの人種の人たちに比べて発症率が高いといわれています(※1)。
赤ちゃんの顔や体の器官は、ママのお腹で成長するなかで少しずつ形作られます。唇や口蓋は、最初は何もない状態から、顔の左右にある細胞が少しずつつながって形成されます。しかし、なんらかの原因でうまくつながらないと、唇や口の中に裂け目ができてしまうことがあります。
この結果、唇に裂け目ができた「口唇裂」、口蓋(上あご)が裂けて口腔と鼻腔がつながってしまう「口蓋裂」、顎の骨が裂ける「顎裂」などの奇形が現れます。これらのうち複数が合併することもあります。
口唇口蓋裂の原因は?
口唇口蓋裂の原因は、7割が不明とされています(※1)。
考えられている原因として、胎児の顔や口蓋が作られる妊娠初期に異常な力が加わることや、母体の栄養障害やストレス、胎児奇形のリスクを高める薬の服用、親からの遺伝的な要素があるほか、染色体異常による症状の一つであることも考えられます。
また、口唇口蓋裂の発生率は、高齢出産になるほど高いというデータもあります(※1)。日本産科婦人科学会のガイドラインによると、妊娠中にタバコを吸うと、口唇口蓋裂などの奇形リスクが高まるとされています(※2)。
ただし、あくまでもこれらは口唇口蓋裂の原因になりうる、というだけなので、実際は原因を特定できないことも多くあります。
口蓋口唇裂の症状は?
口蓋口唇裂があると、赤ちゃんは口を完全に閉じることができないので、おっぱいやミルクを上手に飲めなかったり、言葉を上手に発することができなかったりします(※1)。
口蓋裂の場合は特に、口と鼻がつながってしまうので鼻の中が食べ物で汚れやすくなり、乳児期には扁桃炎や中耳炎、気管支炎を発症しやすくなる可能性もあります(※2)。
口唇口蓋裂はエコーでわかるの?
口唇口蓋裂は、妊婦健診の超音波(エコー)検査でわかる場合があります。特に最近のエコーは精度が高く、胎児の顔の細部まで確認できるため、赤ちゃんが生まれる前に判明することも増えています。
ただし、胎児の向きや口の開き具合、口唇口蓋裂の度合いによっては、妊婦健診のエコーでも判別しづらいことがあります。
口唇口蓋裂はいつわかる?
胎児の唇は妊娠7週頃、口蓋は妊娠12週頃に形成されるので、この時期を過ぎるまでは、口唇口蓋裂になるかどうかはエコーでもわかりません(※3)。
妊娠20週を過ぎると、エコー検査で胎児の目や鼻、唇などの顔の作りを確認できるようになってくるので、妊婦健診のときなどに口唇口蓋裂の疑いがあるという指摘を医師から受けることがあるかもしれません。
ただし、前述の通りエコーによる顔の見え方は個人差があるので、妊娠後期に口唇口蓋裂だと判明するケースもあります。
口唇口蓋裂の治療法は?
口唇口蓋裂の治療は、妊娠中には行えません。出産直後から大人になるまで、赤ちゃんの成長に伴い、長期にわたって治療を行わなければならないケースが多くあります。
ただし、治療をしっかり続けることで、見た目にはほとんどわからないくらいに改善します。
なお、口唇口蓋裂の治療は、健康保険の適用対象です(※4)。そのため、各自治体の乳幼児医療費助成制度を受けることができます。
口唇裂の治療
口唇裂の場合は、縫合手術を何度か行い、少しずつ唇をつなげていきます。
まずはテープで唇を固定しておいて、生後3~6ヶ月頃に口唇を形成するための手術を実施します(※1)。その後、成長するにつれて手術跡が目立ってきたら、外見を綺麗に整えるための手術を行うこともあります。
口蓋裂の治療
口蓋裂の場合は、言葉を覚え始める1歳半~2歳頃に口蓋裂形成術を行います(※1)。口と鼻をきちんと隔てることで、誤飲をなくし、発声しやすくします。
手術後も、まだ上手に発音できないことが多いので、言語療法で正しい発音を学んだり、スピーチエイドという補助器具をつけたりするなど、アフターフォローも必要です。
歯の矯正治療
口唇口蓋裂がある赤ちゃんの場合、歯が生えてこなかったり、歯並びや噛み合わせに問題があったりすることも多いため、歯を矯正する治療が必要になるケースもあります。
口唇口蓋裂の赤ちゃんの成長をサポートしましょう
妊婦健診のエコーなどで胎児が口唇口蓋裂と診断されると、「自分が悪かったのでは…」と自分を責めてしまったり、見た目にびっくりしてしまうママ・パパもいるかもしれませんね。
しかし、口唇口蓋裂は出産後に小児歯科や口腔外科、矯正歯科など、様々な分野の医師による治療をしっかりと受けさせることで、日常生活に支障がない状態まで改善できる可能性があります。
妊娠中は治療ができないためもどかしく、不安を感じると思いますが、ストレスはお腹の赤ちゃんにもよくありません。あまり心配しすぎず、赤ちゃんが無事に生まれてきてくれるように、なるべくリラックスして生活するようにしましょう。