妊娠中はお腹に赤ちゃんがいるのですから、ママの体重が増加するのは当然です。しかし、体重が増加しすぎるのは、ママにとっても赤ちゃんにとっても良いことではありません。そこで今回は、妊婦さんの理想的な体重増加の目安や、おすすめの体重管理の方法などについてご説明します。
妊婦さんの体重って、どんな内訳になっているの?

出産を迎えるとき、赤ちゃんの体重は約3.0~4.0kgですが、妊婦さんの体重はそれ以上増加します。
それは、胎盤、羊水、血液、子宮・乳房の重さの増加に加えて、妊娠によるホルモンバランスの変化で脂肪が増え、水分が蓄積するためです。
妊娠中の理想的な体重増加の目安は?

それでは、妊娠中はいったいどれくらいの体重増加が理想的なのでしょうか?
日本産婦人科学会が推奨している、妊娠中の体重増加の範囲は上表のとおりです(※1)。
妊婦さんの理想的な体重増加の目安は、妊婦さんのもともとのBMI値によって異なります。自分の体重増加の目安を出すには、まず妊娠前の体重からBMI値を算出してみましょう。
妊娠前に標準的な体格だった人であれば、13kgくらいまでの体重増加が理想的といえます。
一方、BMI値が肥満レベルに相当する人は、妊娠高血圧症候群などのリスクを抑えるため過度な体重増加に気をつけましょう。
妊娠中、体重をうまくコントロールする方法は?
妊娠中の体重増加は、先ほどご紹介した目安の範囲を超えていなければ問題はありません。
適切な体重増加のためには、以下のことを意識してみましょう。
1. 食事の栄養バランスを見直す

まずは、今の食生活を振り返ってみましょう。
塩分・糖分・脂質を抑え、バランスの良い食事に整えるだけで、だいぶ変わってきます。以下のポイントを意識してみてください。
- 「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと摂る
- 「副菜」で、不足しがちなビタミン・ミネラルを摂る
- 「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に摂る
- 乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを摂る
昨今のダイエット志向から、主食の量を減らしてしまうという妊婦さんもいますが、1日3回主食を中心にしっかり摂りましょう。厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考に、様々な食品や栄養素をまんべんなく摂るように心がけてくださいね。
妊娠初期の妊婦さんが、1日3食で1回の食事に摂るべき栄養バランスの一例は以下の通りです。いろいろな料理を組み合わせて、必要量を摂るように心がけましょう(※2)。
- 主食:ごはん普通盛り1杯or食パン1〜2枚orおにぎり1〜2個・うどんそば1人前
- 副菜:サラダor野菜炒めor煮物
- 主菜:魚or肉料理1皿
牛乳・乳製品は、1日に牛乳コップ1杯またはヨーグルト2パック。果物は1日1〜2個を目処にして、食べ過ぎには注意してくださいね。
妊娠中期は上記に加え、1日の食事のなかで以下の料理を追加しましょう。
- 副菜:ほうれん草や小松菜1品追加
- 主菜:たんぱく質のとれる納豆や卵を1品追加
- 果物:1つ追加
妊娠後期はさらに、おにぎり1個とヨーグルト1個を追加してみましょう。
2. 食事の量と回数を変える
すぐにお腹が空いてしまうという妊婦さんは、少量ずつ、回数を増やして食事を摂るのも一つの手です。
3回食を5回食に変え、一回に食べる量を減らすことで、急激な血糖値の上昇を抑えることもできます。
3. 間食するときは内容に気をつける

どうしても甘いものが食べたくなるときもありますよね。
そんなときは、食物繊維を多く含む寒天ゼリーなど、低カロリーだけれど食べ応えがあるものを選ぶようにしましょう。シリアル入りのクッキーやおからなどを使ったお菓子を手作りするのもいいですね。
お菓子の代わりに季節のフルーツを食べると、ビタミンCも摂取できるのでおすすめですよ。
4. 軽い運動をする
安定期に入っているのであれば、医師から許可をもらったうえでマタニティヨガやスイミングなどの運動を取り入れてみましょう。
近所をお散歩するだけの軽めのウォーキングだけでも、体重管理に効果的です。気分転換にもなるので一石二鳥ですよ。
5. こまめに体重計に乗る

これまであまり体重の記録をしていなかった…という人も、妊娠中は週に1回は体重計に乗り、自分の体重の増え方を把握しておくと良いでしょう。
アプリや手帳に日々記録すると体重の変化への意識を高めてくれて、急激な体重増加にも気付きやすいですよ。
妊娠中に体重増加しすぎると、胎児と母体にどんな影響がある?

妊娠したら全員が同じように体重増加するわけではなく、吐きつわりがひどく体重が減少する人もいれば、食べつわりや食欲増加で急激に増加してしまう人もいます。
妊婦さんの体質や生活環境によって体重の増加・減少の程度は異なるとはいえ、まったく体重を気にしなくても良いというわけではありません。
妊娠中に体重が増えすぎてしまうと、主に以下2つのリスクを伴うため注意が必要です(※1)。
妊娠高血圧症候群(※3)
「妊娠高血圧症候群」は、高血圧や蛋白尿、むくみなどの症状が見られる状態です。妊娠中期以降に症状が出やすく、10%の妊婦さんが発症するという報告があります。
妊娠高血圧症候群になると、胎児に栄養を与える胎盤や子宮に血液が流れにくくなり、胎児が十分に発育できない可能性があります。
重症化すると、子癇(しかん:意識障害を伴うけいれん発作)や常位胎盤早期剥離などの合併症を引き起こし、母体と胎児の両方の命に危険が及ぶリスクがあります。
そのため、赤ちゃんの発育の度合いによっては帝王切開で早めに分娩を行うこともあります。
妊娠糖尿病(※3,4)
妊娠糖尿病は、糖尿病までは至らないものの、妊娠中のホルモンの変化によって、血糖をコントロールするインスリンの働きが弱まってしまい、血糖値が高くなりすぎる病気です。
約12%の妊婦さんが発症し、肥満のほかにも糖尿病にかかっている家族がいる人や、35歳以上の高齢出産の人は、妊娠糖尿病にかかるリスクが高まります。
妊娠糖尿病によって、流産・早産リスクが上がるほか、胎児機能不全や胎児死亡の危険性もあります。また、生まれた赤ちゃんが将来的に肥満や糖尿病、高血圧になりやすくなります。
妊娠糖尿病の疑いがある場合には、妊娠初期から随時検査を行い、医師の指導のもとに食事制限やインスリン注射による治療を行うことがあります。
妊娠しても体重が増加しない…大丈夫なの?

もともと痩せ型の人やつわりがひどかった人は、体重が増加しないと悩んでいるかもしれません。
体重の増加具合が緩やかであっても、妊婦健診で「赤ちゃんは順調に育っていますよ」と医師から言われている限りは、あまり心配する必要はありません。
ただし妊娠中の体重増加が不足していると早産や低出生体重児になる可能性が高くなり、産まれたあとの健康や命に関わる影響が高くなるほか、成人後も循環器疾患や糖尿病発症のリスク因子になりやすいことがわかっています。(※1)。
適切な体重増加は赤ちゃんの成長のためにも必要なので、医師と相談しながら少しずつ体重を増やしていくことを目指しましょう。
妊婦さんの体に合わせた体重管理で、元気な赤ちゃんを産もう!
妊娠中の体重は、増加しすぎてしまっても減少しすぎてしまってもよくありませんが、気にしすぎてストレスを溜めないようにしてくださいね。
体重管理を難しく考えすぎず、まずは健康的な食生活と運動を心がけましょう。
そのうえで、体重の増加量の目安を把握しておくとよいでしょう。日々のこのような小さな積み重ねが、元気な赤ちゃんを安全に産む秘訣ですよ。