妊婦は生卵を食べてはいけない?妊娠中に生卵を食べるリスクは?

監修専門家 管理栄養士・フードコーディネーター 中村 美穂
中村 美穂 東京農業大学卒業。保育園栄養士として乳幼児の食事作り、食育活動、地域の子育て支援等に携わった経験を活かし、離乳食教室や子どもから大人まで楽しめる料理教室「おいしい楽しい食時間」を開催。書籍、雑誌等への... 監修記事一覧へ

妊娠中は「注意すべき食べ物や飲み物」がたくさんありますよね。アルコールやカフェインの摂取、喫煙、市販薬の服用といったことはわかりやすいですが、なかには判断が難しいものもあります。その一つとして挙げられるものが「生卵」です。ごはんにかけたり、すき焼きにつけたり、生卵が好きな妊婦さんも多いのではないでしょうか。今回は、妊婦は生卵を食べてもいいのか、胎児への影響や食べるときの注意点などについてご説明します。

妊婦は生卵を食べてもいいの?

生卵

生卵というと、「夏場は控えたほうがい」「食中毒になりやすい」といった話をよく耳にするので、妊娠中に食べてもいいのか心配になりますよね。

結論からいうと、妊娠中に生卵を食べることは禁止されていません。ただし、食中毒にかかる可能性が高い食べ物なので、妊婦はできるだけ控えたほうがいいと考えられています(※1)。

次からは、なぜ妊娠中は生卵を控えたほうがいいのか、妊婦が生卵を食べるときはどのようなことに注意したらいいのかを具体的にみていきましょう。

なぜ妊婦は生卵を控えたほうがいいの?妊娠初期は?

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妊娠中に生卵を控えたほうがいいといわれる一番の理由は、サルモネラ菌によって食中毒を発症する恐れがあるからです。

卵を生む親鶏がサルモネラに感染すると、生まれた卵の殻や中身が菌で汚染されてしまいます。

サルモネラ菌とは?

サルモネラ菌は、自然界に存在する細菌です。サルモネラ菌食中毒の原因は、生の卵や食肉といったものがほとんどで、感染すると8~48時間ほどの潜伏期を経て発病します。吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱といった、いわゆる急性胃腸炎の症状が出るのも特徴です(※2)。

妊婦がサルモネラ菌に感染するとどうなるの?胎児への影響は?

妊娠中は免疫力が低下しており、サルモネラ菌に感染しやすいので注意が必要です。

リステリア菌による食中毒やトキソプラズマ症は厚生労働省や国立感染症研究所が胎児への感染や流産のリスクを指摘していますが、サルモネラ菌が胎児に影響を及ぼすリスクについては触れられていません(※3,4)。

ただし、サルモネラ菌に感染すると激しい下痢を起こすなど、妊婦は重症化しやすいため注意が必要だと厚生労働省も注意喚起をしています(※5)。

食中毒で食事が摂れない、子宮収縮が起きるなど、様々なリスクが考えられるため、特に胎児が重要な器官を形成する妊娠初期は、生卵を控えておくほうが安心です。

鶏卵すべてがサルモネラ菌に汚染されているわけではありません。生卵を食べたら必ず食中毒になるということではないですが、万が一のことを考えて、妊娠中は生卵を控えることがすすめられています。

妊娠中に生卵を食べるときの注意点は?

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妊娠中は、生卵を控えるに越したことはありませんが、どうしても食べたいときは、下記の点に気をつけましょう。

冷蔵庫で保存する

卵の中にサルモネラ菌が潜んでいたとしても、冷蔵庫で保存すれば繁殖を防げると考えられています。市販の卵を買ってきたら、すぐに冷蔵庫で保存するようにしましょう。

賞味期限内の新鮮なものを食べる

卵のパッケージに表示されている賞味期限は、生食が可能な期間です。ただし、妊娠中は、賞味期限ぎりぎりの卵を食べることはおすすめできません。生卵を食べるときは、産卵後すぐの新鮮なものを選ぶようにしましょう。

割ったらすぐに食べる

一度割った卵は、時間が経つにつれて菌が増殖しやすくなります。食べる直前に冷蔵庫から出して割るようにしましょう。また、割る前から殻にヒビが入っている卵は、食べないようにしてください。

調理器具は早めに洗う

卵を割るときに使った調理器具や皿にも注意が必要です。放置しておくと菌が繁殖する原因となるので、できるだけ早く食器用洗剤で洗うようにしましょう。

夏場は食べない

気温や湿度が高い夏場は、特に食中毒が発生しやすいので、生卵を食べるのはやめましょう。新鮮な卵であっても、夏の間は我慢するようにしてくださいね。

外食先では食べない

妊娠中は、自宅以外の場所では生卵を食べないほうが無難です。あまり過敏になるのもストレスが溜まってしまいますが、外食先の管理・保存方法はわからないので、念のため避けた方がよいでしょう。

妊娠中は生卵以外の生ものも控えるべき?

妊婦 お腹 手

妊婦は、生卵だけでなく、ほかの「生もの」にも気をつけなくてはいけません。妊娠中は、免疫力が低下しているため、ふだんは食べても問題がないものも、食中毒の原因になることがあります。

生魚(刺身)

生魚にはリステリアいう細菌が生息していることがあるため、生魚を食べると食中毒を起こす可能性があります。火を通して調理すれば細菌類は無害化されるので、妊娠中は、できるだけ調理した魚を食べるようにしましょう。

また、金目鯛やマグロなどの遠海魚・深海魚はメチル水銀を多く含んでおり、食べ過ぎると胎児に悪影響を与えます。妊娠中は調理した魚でも、水銀の含有量を考えるようにしてくださいね。

生肉

生ハムやレバ刺し、ユッケ、レアステーキといった生肉には、トキソプラズマという寄生虫が含まれている可能性があります。妊娠中または妊娠直前にトキソプラズマに感染すると、胎盤を通じて胎児に感染し、先天性トキソプラズマ症を引き起こす可能性があります(※4)。

妊娠中に肉を食べるときは、中までしっかりと火を通しましょう。

妊娠中はできるだけ生卵を控えよう

新鮮で保存状態の良い生卵であれば、食中毒を引き起こす可能性は低いですが、万が一のことを考えて、妊娠中は生卵を食べるのを控えたほうが安心です。どうしても食べたいときは、鮮度や保存状態を確認して、卵を割ったらすぐに食べるようにしましょう。

卵には、たんぱく質、ミネラル、ビタミンがバランス良く含まれています。しっかりと火を通した卵であれば、妊娠中に食べても問題はないので、卵料理のバリエーションを増やして楽しんでみてはいかがでしょうか。

妊娠中は控えなくてはいけない食べ物や、やってはいけないことが多くて、なにかとストレスが溜まるかもしれませんが、ほどよくストレスを発散しながら、残りのマタニティライフを過ごしてくださいね。

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