稽留流産とは?原因・症状・兆候などまとめ

監修医師 産婦人科医 浅川 恭行
浅川 恭行 1993年東邦大学医学部卒業。2001年同大学院医学研究科卒業後、東邦大学医学部助手、東邦大学医療センター大橋病院講師を経て、2010年より医療法人晧慈会浅川産婦人科へ。東邦大学医療センター大橋病院客... 監修記事一覧へ

妊娠がわかり、赤ちゃんの誕生を楽しみにしている妊婦さんにとって、突然の流産はつらいことです。全妊娠のうち約15%が流産となるため、流産を経験した人は多くいます。今回は、流産のうちでも発生率の高い初期流産のうち、「稽留流産」について、原因や手術方法、術後の様子、出血はあるのか、基礎体温でわかるのかなどについてまとめました。

そもそも流産とは?

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流産とは、妊娠22週目よりも前にお腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまうことを指します。なかでも妊娠12週未満の早い時期で起こることが多く、流産全体の約80%を占めています(※1)。

流産の原因は胎児の染色体異常など、胎児側にあることがほとんどです。

稽留流産(けいりゅうりゅうざん)とは?

自然流産の種類の一つに、「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」があります。稽留流産とは、胎内で胎児が死亡して、妊娠が継続できない状態になっても、出血や腹痛などの症状がなく、胎児が子宮内にとどまっている状態のことです。

その後、自然と出血が始まり胎児が外に出てくると、「進行流産」となります。

繋留流産とも書くの?

「けいりゅうりゅうざん」は、「繋留流産」と書いてしまいがちですが、本来は「稽留流産」と書きます。「繋留=つなぎとめる」という意味で「繋留」自体も正しい熟語のため、「稽留=とどまる」という熟語と混同することが多いようです。

稽留流産の原因は?

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稽留流産の原因も、ほかの初期流産と同じように先天的なものがほとんどで、受精卵の染色体などの異常により着床や細胞分裂の過程で成長が止まり、赤ちゃんがうまく育たないことがあげられます。

その他に、母体の子宮組織の代謝異常により、良い胎盤ができず赤ちゃんが育ちにくい環境だったことなどもあげられますが、普段の生活や仕事、運動などが原因で育ちにくい環境になって稽留流産を引き起こすことは、ほとんどありません。

稽留流産の兆候や症状は?出血や腹痛があるの?基礎体温は下がる?

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稽留流産の一番の特徴は、兆候や症状がないことです。

出血や腹痛などの自覚症状があれば気づくことができますが、稽留流産にはそういった兆候や症状がありません。超音波検査で心拍が止まっていると診断されて初めて稽留流産だとわかります。

出血や強い腹痛を伴う進行流産の場合、それまであったつわりがなくなることがほとんどですが、赤ちゃんは心臓が止まっていてもまだ子宮のなかにいるため、つわりが続くケースもあります。

また、流産の自覚症状の一つに「基礎体温が下がる」というものがありますが、稽留流産の場合は必ずしも基礎体温が下がりません。胎児が死亡していても、体内のホルモン分泌が妊娠しているときと変わらず、基礎体温が高温期を維持したままということもあります。

稽留流産はいつ起こるの?

カレンダー

稽留流産が起こる時期については、妊娠22週未満であればいつでもその可能性があります(※2)。

妊娠8週で稽留流産と診断される人もいれば、妊娠16週で診断される人もいて、一概に妊娠◯◯週に稽留流産が起こりやすいとはいえません。

前述のように、稽留流産は兆候や自覚症状がないため、妊婦健診までの時間があくと発見が遅れることもあり、いつ稽留流産が起こったのか確定できないことも多くあります。

稽留流産はどうやって診断するの?

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前述の通り、稽留流産は兆候や症状がないため、流産していることに気づかず、妊婦健診で超音波検査(エコー検査)をして初めて確認されることがほとんどです。

一度心拍が確認されていれば、超音波検査で心拍が停止しているのがわかった時点で、すぐに稽留流産と診断されます。

しかし、心拍確認前で稽留流産が疑われる場合は、基礎体温などにより排卵(受精)時期を明確にしたうえで、経腟超音波や経腹超音波にて、妊娠6週~7週頃になっても胎児が確認できない、胎児は確認できたが心拍が確認できないなどで判断します(※3)。

稽留流産には手術が必要?方法や費用、時間は?

病院

稽留流産が起きてしまうと、赤ちゃんはすでに亡くなった状態になります。そのため妊娠を継続することはできず、残念ながら子宮内の赤ちゃんや組織を取り出す「子宮内容除去術」という手術が必要です。

場合によっては自然に外に出てくるのを待つこともありますが、放置すると進行流産に移行し、強い腹痛と大量の出血をともない危険な状態に陥ることもあるため、一般的には、稽留流産と診断されて1週間後くらいに、医師が手術を行うかを判断します。

一般的に、手術は局部麻酔または全身麻酔で行い、時間は10分程度で終わります。費用は約2~10万円で保険適用内ですが、症状によって金額に差が出ることもあります。

稽留流産の手術後はどれくらいで妊娠できるの?妊活の時期は?

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稽留流産の手術後、体が回復して自分でトイレに行けるくらいになったら帰宅できます。流産した週数や施設によって異なりますが、数日入院することもあれば、日帰りで手術を行うこともあります。自宅に帰ったあとも1~2週間くらいは安静に過ごします。

術後に出血することもありますが、1週間ほどで治まってきます。ただし、だらだらと出血が続く場合や、大量の出血があった場合はすぐ治療を行った産婦人科を受診してください。

稽留流産後の妊娠については、体が整うまでに時間がかかるため、最低でも1~2ヶ月ほど待つのが望ましいといわれています。できれば、産婦人科で子宮の回復状態をみてもらってから妊活を再開するようにしましょう。

稽留流産は予防できるの?

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前述の通り、稽留流産をはじめ妊娠初期の流産は胎児側の問題であることが多く、原因も分からないことがほとんどなので、予防のためにできることはごく限られています。

ただし、喫煙、カフェインやアルコールの摂取、肥満は、流産のリスクを高めるという報告があります(※2)。妊娠がわかったら、喫煙やアルコールの摂取をやめ、カフェインも取りすぎないようにしましょう。

稽留流産はどんなに気をつけていても起こり得るもの

妊娠初期にはいろいろと心配になることがありますが、その中でも流産の不安は特に大きいものです。しかし、稽留流産のような初期流産は決して珍しいことではなく、完全に予防することは難しいものです。

どんなに気をつけていても稽留流産が起こる場合もあることを知り、できるかぎりの予防のために、適度な運動や睡眠、バランスのよい食事、ストレスの発散など、積極的に赤ちゃんの育ちやすい体作りを心がけていけるといいですね。

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