妊婦は風邪薬を飲める?妊娠初期は危険?妊娠中は漢方薬ならいい?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

妊娠中に体調に気をつけていても、風邪をひいてしまうこともあるかもしれません。妊娠前なら風邪薬を飲んで対処していたという人も、お腹の赤ちゃんへの影響を考えると慎重になりますよね。

そこで今回は、妊婦さんは風邪薬を飲んでもいいのかや妊娠初期は危険といわれる理由、妊娠中に飲める薬はあるのかなどをご説明します。

妊婦は風邪薬を飲んでもいいの?

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妊娠中でも時期と薬の種類にさえ気をつければ風邪薬を飲むことはできます。

母体の状態や風邪の症状などによっては、できるだけ早く体力を回復させるために、妊娠中でも飲める安全な薬を適切に飲んだほうが良いこともあります。

「妊娠中に風邪薬は絶対飲んではいけない」ということではなく、比較的安全な薬と、飲むときに注意が必要な薬を飲む前にしっかりと把握しておくことが大切です。

妊娠中の風邪薬の影響はいつから?妊娠初期は危険?

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薬の種類にもよるので一概には言えませんが、妊娠時期による胎児の奇形への影響は、一般的に次のように考えられています(※1)。

妊娠4週以降~7週末まで

妊娠4週頃から、心臓や中枢神経、手足など、赤ちゃんの重要な器官の作られはじめます。薬による奇形などの影響(催奇形性)を最も受けやすいので、特に薬の服用は慎重にしたい時期です。

明らかに催奇形性があることがわかっている薬は、一部のてんかんの薬、血液の凝固を防ぐ薬などですが、自己判断で風邪薬を飲むのはやめて必ず医師あるいは薬剤師に確認しましょう。

妊娠8週以降~16週前後まで

重要な器官の形成は完了しているものの、赤ちゃんの生殖器や口蓋が作られている時期なので、催奇形性にまだ注意が必要です。

妊娠13週以降~分娩まで

この時期は薬による奇形の影響よりも、胎児の成長や心臓・腎臓といった臓器への影響が考えられ、引き続き注意が必要です。

特に妊娠後期は、イブプロフェンなどの解熱鎮痛剤による胎児の血管への影響が報告されています。市販の風邪薬にも含まれることがある成分なので、注意が必要です。

妊娠中はどの時期も薬の種類によっては赤ちゃんへの影響が懸念されます。

そもそも風邪に特効薬のようなものはなく、症状を緩和し、回復を早めるためのものなので、まずは手洗い・うがいを徹底して予防に努めましょう。

風邪気味のときはすぐ薬に頼るのではなく、睡眠を十分にとって体調を回復させることが大切です。

ただし、風邪の症状がつらいときは、早めに医師に相談して比較的安全に飲める薬を処方してもらいましょう。

妊娠に気づかずに風邪薬を飲んでしまったら?

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いわゆる「妊娠超初期」の時期は妊娠に気づいていない人も多いので、なかには知らずに風邪薬を飲んでしまったという人もいるかもしれません。

しかし、受精が起きてから2週間(妊娠0~3週末まで)は、薬を服用したとしても胎児奇形などのリスクはないと考えられています(※1)。

薬を飲んだことを気にしてストレスを感じながら妊娠生活を過ごすのは、お腹の赤ちゃんにとっても良くありません。

薬を飲んでしまったことに後から気づいたとしても、赤ちゃんへの影響を心配しすぎないようにしましょう。

不安なときは、飲んだ薬の種類と時期を産婦人科医に伝えて、問題がないかどうかを確認してくださいね。

妊娠していても飲める市販の風邪薬は?

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薬局などで販売されている市販薬は、病院で医師が処方する医療用医薬品と比べておだやかに作用するものが多いですが、妊婦さんは安全性に十分注意して使う必要があります。

まずは、妊娠中でも比較的安全とされる成分と、それを含む市販の風邪薬をいくつかご紹介します(※2,3)。

ただし、いずれの商品も添付文書には「妊娠または妊娠していると思われる人は、服用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談してください」と書かれています(※4~6)。自己判断で飲む前に医師や薬剤師に確認しましょう。

妊娠中も比較的安全とされている成分

⚫︎アセトアミノフェン:解熱・鎮痛作用
⚫︎デキストロメトルファン臭化水素酸塩:咳を抑える作用
⚫︎アンブロキソール塩酸塩、カルボシステイン:痰を切る作用

妊娠中も比較的安全に飲める市販の風邪薬

⚫︎エスタック総合感冒(エスエス製薬)
⚫︎パブロンゴールドA(大正製薬)
⚫︎新ルルAゴールドs(第一三共ヘルスケア)

妊娠していると飲めない市販の風邪薬は?

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市販の風邪薬のうち、特に妊娠後期は服用しない方がいいとされるものがあります。妊娠中でなければ活躍してくれる市販薬ですが、妊婦さんは服用しないようにしてくださいね。

妊娠中は注意が必要な成分

⚫︎イブプロフェン:解熱・鎮痛作用(出産予定日12週以内は禁忌)
⚫︎ロキソプロフェン:解熱・鎮痛作用(出産予定日12週以内は禁忌)
⚫︎アスピリン:解熱・鎮痛作用(出産予定日12週以内は禁忌)

妊娠中は注意が必要な市販の風邪薬

⚫︎エスタックイブファインEX(エスエス製薬)
⚫︎ロキソニンS(第一三共ヘルスケア)
⚫︎バファリンかぜEX(ライオン)

上記の商品の添付文書を読むと、「妊娠中は服用を避けた方が安全」であり、特に「出産予定日12週以内の妊婦は服用しないこと」と書かれています(※7,8,9)。

妊娠初期・中期の人も、念のため服用前に医師や薬剤師に相談しましょう。

なお、知らずにこれらの薬を服用してしまった場合も、実際に母体と胎児に大きな影響が出ることは少ないですが、まずはかかりつけの産婦人科医に落ち着いて相談をするようにしましょう。

妊婦の風邪に効く漢方薬は?

漢方薬

薬の影響が心配な人は、漢方薬を試してみるのもいいかもしれません。

漢方薬はお腹の赤ちゃんに悪影響を与えることは少ないといわれていますが、症状や体質によって適切に使う必要があります。

必ず医師や薬剤師からアドバイスを受けたうえで飲むようにしてくださいね(※1)。

妊娠中の風邪に効くとされる漢方薬

⚫︎風邪のひきはじめ:香蘇散(こうそさん)、桂枝湯(けいしとう)
⚫︎悪寒がするとき:葛根湯(かっこんとう)
⚫︎乾いた咳が出るとき:麦門冬湯(ばくもんどうとう)
⚫︎鼻水が多く出るとき:小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
⚫︎喉がイガイガするとき:桔梗湯(ききょうとう)

妊娠中の風邪がつらいときは病院へ

市販の風邪薬がたくさん販売されていますが、妊婦さんにとっては注意が必要なものもあります。自己判断で使わず、症状がつらいときは病院へ行くようにしましょう。

「どんな薬も飲む前に医師や薬剤師に相談する」ということを徹底して、お腹の赤ちゃんの安全を守ってあげてくださいね。

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