妊娠初期に下痢になりやすいのはなぜ?流産の可能性はある?【助産師監修】

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

妊娠1~4ヶ月にあたる妊娠初期は体内のホルモンバランスが急激に変わるので、体調も変化しやすくなります。つわりに悩まされる妊娠さんが多いですが、実は下痢も妊娠初期症状の一つとして現れることがあります。今回は、妊娠初期の下痢について、原因や対策、流産を引き起こす可能性があるのかどうかをご説明します。

妊娠初期の下痢の原因は?

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妊娠初期に下痢が起こりやすいのには、いくつかの理由があります。下記に、妊娠初期の下痢の主な原因をご紹介します。

ホルモンバランスの変化

妊娠が成立すると、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」と呼ばれる女性ホルモンの分泌量がどんどん増えていきます。

プロゲステロンの作用により、胃腸の筋肉がゆるんで動きが鈍くなり、さらに食べたものを直腸へ運ぶために消化管の筋肉が収縮する「蠕動(ぜんどう)運動」も低下します(※1)。

そのため、消化機能が弱って下痢が引き起こされることがあります。

子宮の増大

お腹の赤ちゃんの発育とともに子宮が大きくなってくると、胃腸が圧迫されるので消化がなかなか進まなくなります(※1)。

消化不良によって便秘が起こることもありますが、妊婦さんによっては下痢がひどくなったり、便秘と下痢を繰り返したりするようになります。

つわり

妊娠初期につわりの症状が現れると、味の好みの変化や食欲不振などから、食べられるものや飲めるものが偏ることがあります。

「脂っこいものばかりを食べすぎて胃腸に負担がかかる」「冷たい飲み物ばかりでお腹が冷える」といったことが原因で下痢が起こりやすくなります。

「フェロミア」などの鉄剤

一般的に、妊娠中の貧血は中期に起きやすいものですが、妊娠初期から貧血に悩まされる妊婦さんもいます。

貧血の症状によっては、病院で「フェロミア」などの鉄剤が処方され、その副作用によって下痢や便秘がを引き起こされることもあります(※3)。

鉄剤を服用しているときに下痢が続いた場合は、すぐに担当医師や薬剤師に伝え、1回に飲む量を減らしてもらうなどの対処を検討してもらいましょう。

ただし、自己判断で薬の服用量を減らしたり、飲むのを中断したりしないでくださいね。

妊娠初期の下痢はストレスや冷えも原因?

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妊娠初期は、急激な体の変化やつわりに対するストレス、また妊娠・出産に対する様々な不安を感じやすいものです。

ストレスや不安によって交感神経と副交感神経のバランスが崩れると自律神経が乱れ、胃腸がうまく機能せず、下痢になることもあります(※2)。

また、妊娠初期は、つわりの症状が出たり体調を崩したりして、アクティブに動きにくくなるので、運動不足が原因で血行不良になりがちです。そのため、体が冷えやすくなって下痢をしてしまうこともあります。

妊娠中はもちろんのこと、妊娠全期を通して、冷えやストレスを防ぐ生活を心がけましょう。

妊娠初期の下痢で流産する可能性はあるの?

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妊娠初期に下痢が続くと、腹圧がかかって流産をしてしまうのではと心配になる妊婦さんは多いのではないでしょうか。また、流産の兆候として下痢が起きているのではないかと不安になることもありますよね。

妊娠初期に起こる流産は、染色体異常など、胎児側に原因があることがほとんどです。妊娠初期の下痢が直接的に流産を引き起こすとは考えられていないので、心配しすぎないようにしましょう。

また、前述の通り、妊娠中の下痢はホルモンバランスの変化やつわりが原因で起こるものなので、流産の兆候として下痢が起こることはないと考えられます。

妊娠初期の下痢で激しい腹痛を伴うときは注意!

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妊娠初期に激しい腹痛を伴う下痢が続くときは、ホルモンバランスやつわりによる下痢ではなく食中毒や感染症、その他の病気が疑われます。

また、下痢とともに不正出血や腹痛があるときは、切迫流産や流産の可能性もあります。

このような症状がある場合は、すぐに産婦人科を受診してください。

妊娠初期の下痢の対処法は?

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ここでは、妊娠初期の下痢の対処法や予防法をご紹介するので、できることから実践してみてくださいね。

胃腸に負担をかけない

妊娠中の便秘対策には食物繊維を含む食べ物がおすすめですが、下痢のときは胃腸への負担を軽くするため、食物繊維は避けましょう。

また、香辛料を多く含む食べ物や飲み物は刺激が強いので、おすすめできません。

冷え対策をする

お腹を冷やすと下痢になりやすいだけでなく、風邪などの体調不良を引き起こす原因になります。

妊娠初期のうちから体を冷やさないように、腹巻でお腹を温めたり、防寒着やひざ掛けを常備したりしましょう。

つわりでお風呂に入るのがつらいときは無理する必要はありませんが、湯船に浸かって体の芯から温めてから寝床につくのもいいですね。

妊娠初期に下痢が続くときの注意点は?

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妊娠初期に下痢が起きたときは、下記の点に気をつけてください。

脱水症状に注意

妊娠初期の下痢で注意したいのが、脱水症状です。下痢が続くと、どうしても体内の水分が不足してしまいます。さらに、妊娠初期のつわりがひどいと十分に水分を摂れないこともあるため、ますます脱水症状が進んでしまいます。

つわりや体調不良で食べ物を口にできないときでも、氷を舐めたりストローで水を飲んだりと、水分補給だけは欠かさないようにしましょう。

なお、つわりの症状が悪化し、脱水症状や栄養失調になって「妊娠悪阻(おそ)」と診断されると、入院治療が必要となることもあります。

市販薬は飲まない

軽い下痢だと思っても、妊娠中は自己判断で下痢止めや整腸剤といった市販薬を飲むのはやめましょう。妊娠中に口にしたものは、お腹の中の赤ちゃんに移行することがあるので、薬の服用には注意が必要があります。

妊娠初期に下痢が続いたときは、かかりつけの産婦人科を受診して妊娠中でも服用できる薬を処方してもらってください。

妊娠初期の下痢が心配なときは病院へ

妊娠初期に下痢になるのはよくあることなので、あまり心配しすぎないようにしましょう。

ただし、ノロウイルスのような食中毒や風邪の症状が見られるときは、感染症の恐れもあるので早めにかかりつけの産婦人科医に相談してください。場合によっては、内科の受診を勧められることもあります。

また、激しい腹痛が続いたり出血があったりした場合は、切迫流産や流産の兆候の可能性もあるため、すぐに産婦人科を受診してください。

下痢が長く続くと体力が落ちてしまったり、肛門に負担がかかって痔になってしまったりすることもあるので、早めに対処してストレスの少ない妊婦生活を送れるといいですね。

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