「排卵日に性交をしているのになかなか妊娠しない」と悩んでいる夫婦にとって、「何が原因か」ということはとても気になりますよね。理由がわかれば、それを改善できるかもしれません。しかし、実際には妊娠しない理由は1つだけではなく、多くの原因が絡み合っていることもあります。今回は、妊娠しない理由として考えられる主なものをいくつかご説明します。
妊娠するために必要な条件とは?
そもそも妊娠とは、卵子と精子が受精し、そこで生まれた受精卵が子宮内膜に着床することを指します。
妊娠に至るまでには、「女性の卵巣から排卵が起こるか」「タイミング良く卵子と精子が出会えるか」「精子に女性の体内を移動する力があるか」「受精卵が着床できるほどに子宮内膜が厚く成長しているか」など、満たすべき条件がたくさんあります。
このどれかに問題がある場合、治療が必要になることもあるので、不妊に悩んだら早めに婦人科で検査を受けることをおすすめします。
なお、上記のような問題のない一般的な夫婦であれば、3ヶ月以内で約50%、6ヶ月以内で約70%、1年以内には90%近くが妊娠に至るとされています(※1)。
避妊をせずに夫婦生活を1年間続けても妊娠に至らないときは、排卵日のチェックや産婦人科での相談を検討しましょう。
妊娠しない理由は排卵日予測のズレ?
いつでも性交すれば妊娠できるというわけではなく、排卵のタイミングに合わせる必要があります。
不妊治療のファーストステップとして「タイミング法」が取られることが多いのですが、これは「排卵日を正確に把握して性交をする」という治療方法です。
生理不順だと正確に排卵日を予測しづらいため、産婦人科医の指導や治療を必要とすることもあります。
排卵日を予測する方法は?
排卵日を予測するには、基礎体温を測ったり、おりものの状態を見たり、排卵検査薬を使ったりと、様々な方法があります。
基礎体温が不安定で、自分で排卵日を推測するのが難しい場合などは、婦人科で超音波検査や尿中LH検査などを受ける方がより正確です(※2)。
妊娠しやすい日は排卵日?
また、「排卵日=最も妊娠しやすい日」というわけではないので、性交する日も注意が必要です。
卵子の寿命は約24時間で、さらに受精できる時間は約6~8時間といわれています。一方、精子の寿命は2〜3日あるので、排卵が起こる前に精子が女性の体内に入り、受精のタイミングを待っておくことが理想です。
つまり、妊娠の可能性を高めるには、「予測した排卵日の1~2日前」のタイミングで性交を行うようにしましょう。
排卵日に性交しても妊娠しない…女性側に理由があるの?
排卵から妊娠に至るまですべて女性の体内で行われるため、次の原因が女性側にある場合、妊娠できない可能性が高くなります。
- 卵胞が発育せず、排卵されない
- 精子が女性の体内に入れない
- 卵子・精子・受精卵が卵管を通れない
- 受精卵が子宮内膜に着床できない
これらの主な原因を一つひとつ見ていきましょう(※3)。
卵胞が発育せず、排卵されない
卵巣内で卵胞が十分に成長しなかったり、排卵が起こらなかったりする「排卵障害」があると、女性の体内に精子が入ってきたとしても受精が起こらないため、妊娠することができません。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
卵巣内で卵胞が成長するものの、排卵までは成熟せず、卵巣の表面に途中まで大きくなった卵胞がいくつもできてしまい、卵子が飛び出せなくなってしまう病気です。
排卵誘発剤や、卵巣に小さな穴を開けて排卵を促す手術などで治療します。
適切な治療をしないまま放置してしまうと、生理はあるのに排卵が起こらない「無排卵月経(無排卵周期症)」になる恐れもあるので、注意が必要です。
高プロラクチン血症
「プロラクチン」は出産後に母乳の分泌を促す働きがあるホルモンです。しかし、妊娠・出産とは無関係にプロラクチンが過剰に分泌されると、生理や排卵が止まってしまいます。
高プロラクチン血症の治療では、プロラクチンを抑える薬を服用したりします。
卵巣機能不全
ストレスやダイエットによる過度な体重減少や肥満などが引き金になってホルモンバランスが崩れ、卵巣の機能が低下し、無排卵月経などの排卵障害を引き起こすことがあります。
生活習慣を改善したり、ホルモン療法などを取り入れたりして治療を行います。
精子が女性の体内に入れない
子宮頸管炎や頸管粘液の異常、精子に対する抗体(抗精子抗体)があったりすると、精子が子宮頸管を通過して女性の体内に入ることができず、不妊の原因となります。
ホルモン異常やポリープ、炎症など、その原因に応じた治療を行います。
卵子・精子・受精卵が卵管を通れない
卵管に何らかの問題があることで起こる不妊は、女性側の原因の中で最も多く、全体の30~40%を占めます(※3)。
卵管狭窄・閉塞
クラミジアなどに感染すると卵管に炎症が起き、卵管が狭くなったり塞がったりする恐れがあります。
その結果、卵子や精子、受精卵が通りにくくなるため、妊娠できる確率もぐっと下がってしまうのです。
卵管癒着
子宮や卵巣などを覆っている「骨盤腹膜」が細菌などに感染すると、骨盤腹膜炎を起こし、卵管と周辺の臓器が癒着してしまい、卵管采が卵子をうまく取りこみづらくなります。
骨盤腹膜炎のほかに、子宮内膜症や過去の手術などによる子宮内膜の異常も、卵管癒着の原因となります。場合によっては、手術で癒着部分を引き剥がす治療が必要になります。
なお、特に癒着などの原因がないにも関わらず、卵管采による卵子の取りこみがうまく行かない「ピックアップ障害」というケースもあります。
受精卵が子宮内膜に着床できない
排卵と受精まではうまく行くものの、次のような原因で受精卵が子宮内膜に着床できず、妊娠できないこともあります。
子宮筋腫
子宮筋層に良性の腫瘍ができてしまう病気です。30~40代の女性によく見られ、症状として生理痛の悪化や経血の増加が見られたり、不正出血が出たりします。
子宮筋腫があっても妊娠できることも多いですが、筋腫の大きさや場所によっては早期治療が必要です。
受精卵が着床できる場所が狭くなったり、子宮の内壁が硬くなったり、凸凹に変形したりなど、受精卵が着床しづらくなることもあります。
子宮奇形
子宮奇形とは、生まれつき子宮が正常な形とは異なっていることを示します。子宮の形は外からは見えないため、不妊検査ではじめて明らかになることもあります。
子宮奇形にも様々な形があり、必ず不妊になるわけではなく、治療が必要かどうか医師と検討する必要があります。
妊娠しないのは男性側にも理由がある?
不妊の原因は、半分は男性側にあることがわかっていて、昨今では男性不妊も大きな問題となっています。
男性不妊の原因は、主に次の3つに分けられます(※4)。
- 精巣の働きが悪く、質の良い精子が少ない、もしくはない
- 精管に問題があり、精子が外に出てこられない
- 性交のときに十分な勃起や射精ができない
なかなか妊娠しない場合、夫婦ともに検査を受けることをおすすめします。男性は、婦人科や泌尿器科などで精液検査を受けてみましょう。
妊娠しないのは生活習慣が理由のことも?
冷えやストレスは、妊娠を望む女性にとってできるだけ避けたいものです。心当たりがある人は、少しずつ生活習慣の改善や対策をしてくださいね。
冷え
体が冷えて血行が悪くなると、子宮や卵巣など妊娠・出産に不可欠な器官の機能が弱まってしまうといわれています。
根菜など体を温める食材を積極的に摂る、冷房の効いた室内では1枚多めに服を羽織る、ぬるめの湯船に浸かる、定期的に運動するなど、できることから始めてみましょう。
また、漢方療法により冷えを改善することで妊娠に結びついた、との報告もあります(※5)。漢方について詳しくは、産婦人科医や薬剤師に相談してみてください。
ストレス
女性の体はデリケートなので、過度なストレスがかかるとホルモンバランスが乱れ、生理不順や排卵障害につながることがあります。
日常生活を送るなかで、ストレスを完全にゼロにすることは難しいですが、自分の趣味の時間を作ったり、スケジュールに余裕を持たせたりと、うまくストレスを解消しましょう。
妊娠しないのは加齢が理由のこともある?
加齢も、妊娠しにくい理由の一つ。年を取るにつれて生殖機能が低下していき、作られる精子や卵子の質も下がっていきます。
最近の研究報告の一つによると、上のグラフを見てもわかるとおり、30代後半から自然妊娠できる確率は大きく下がっていくことがわかっています(※6)。
また、高齢での妊娠は合併症や染色体異常などのリスクが高く、出産までに母子ともに負担がかかる可能性があることも覚えておく必要があります。
30代半ば以降で妊娠したいと思ったら、早めに妊活に取り組むことが大切です。避妊せずに性交渉をして半年~1年が経っても妊娠しない場合、不妊治療を行っている産婦人科やレディースクリニックでの相談も検討しましょう。
排卵日に性交しても妊娠しないときは、医師に相談を
妊娠しない理由は様々あり、女性一人の問題ではありません。半年〜1年以上、排卵日に性行為をしても妊娠しないときは、パートナーと一緒に産婦人科医に相談してみましょう。タイミング法によって妊娠できる可能性もありますし、妊娠できない理由が不妊検査によってわかるかもしれません。
また、冷えやストレスを取り除くなど、妊娠しやすい体づくりに取り組むことも大切です。詳しくは、関連記事を参考にしてくださいね。