赤ちゃんを希望している夫婦にとって、「精液検査」を受けることは妊活の一つ。でも、「精液検査で何をするのかよく分からなくて不安」という男性も多いようです。そこで今回は、精液検査の方法や費用、結果の見方などをご説明します。
精液検査とは?
1回の射精で得られる精液の量と、精液内の精子の状態を調べる検査です。精子濃度や精子の運動率、奇形率などをチェックします。
男性の精液は毎日精巣内でつくられるため、日々のストレスや生活習慣などの影響をすぐに受けて状態が変わりやすいといわれています。そのため、日数をおいて複数回検査を行い、その結果を総合的に判断する必要があります。
精液検査の目的は?男性不妊って多いの?
昔は不妊の原因は女性側にあるというイメージを持たれていましたが、現在は約半分は男性側の原因であることが判明しています。
しかし、どちらに原因があるかを自己判断することは難しく、「いつかできるだろう」と考えているうちに年齢を重ねてさらに妊娠しにくくなるというケースが増えています。
妊娠を望む夫婦はなるべく早く、そして二人一緒に検査を受けたいところです。女性が卵巣や子宮の状態を知るのと同じように、男性も精子の状態を知っておくことは大切です。とてもデリケートな問題でもあるので、夫婦間でしっかりと話し合い、納得した上で検査を受けるようにしましょう。
精液検査の方法は?
マスターベーションによって射精した精液を、病院から渡された規定の容器の中に入れます。このときコンドームを使用すると、内側に塗布してある薬剤が精子に悪影響を与える恐れがあります。正しい結果が出ないのでコンドームは使用しないようにしましょう。
精液の採取は、病院で行う方法と自宅で行う方法があります。自宅で行う場合は、病院に持っていく予定時間から逆算して採取する時間を確認しておきましょう。
また、容器に入れた精液の保管については「人肌で温めて持っていく」「室温で十分」など諸説ありますが、自己判断せず、病院からの指示に従ってください。
精液検査のための採精は、自宅と病院のどちらがいいの?
精液検査には精液の採取が必要ですが、女性の多い産婦人科やクリニックで採精をするのが恥ずかしい、という男性は少なくありません。
自宅でも採取は可能ですが、できるだけ鮮度のいい状態で検査するためには、病院で採取した方が良いと指導を受けることもあります。
病院で精液の採取を行う際には、採精室という個室を利用することが多いようです。中から鍵がかけられる小部屋で、リクライニングシートなどに座って採精が可能です。
産婦人科やクリニックでも採精室をできるだけフロアの端に配置するなど、男性の気持ちもしっかりと配慮している病院も最近では多くなっています。
ただ、トイレで採精する病院もあるので、気になる方は事前に採精の方法も確認しておきましょう。
精液検査でチェックできる内容は?
採取した精液、またその中の精子の状態を観察することによって、不妊につながる原因があるかどうかを判断します。
血液や膿が混ざっていないか、精液の量や濃度、精子の生存率や運動率や奇形率はどれくらいかなどをチェックします。
顕微鏡による目視だけでなく、精液検査専用の機械を用いる施設もあります。
精液検査の費用は?
精液検査の費用は、検査内容によって保険適用されるかどうかが異なります。
数や運動率などの基本的な検査項目であれば保険適用になり、自己負担額としては1回当たり300円~1,000円くらいで受けられます。
一方、保険適用外の場合は5,000円~30,000円とばらつきがあります。検査内容と病院によって異なるため、事前に確認しておくと安心ですね。
精液検査の結果の見方は?正常値はどれくらい?
精液検査の結果の見方は「生殖が可能な基準値としての下限」をクリアしているかどうかで、「どれだけあったらどれくらいの確率で妊娠するのか」という正確なデータがあるわけではありません。
2010年にWHOが精液検査における正常値として以下の数値を発表しています。
- 精液量:1.5ml以上
- 精子数:3900万以上
- 運動率:40パーセント以上
- 奇形率:96パーセント未満
- 精子濃度:1500万/ml以上
- 総運動精子数(総精子数×運動率):1560万以上
精子の数が少ない場合は「乏精子症」、精子がない場合は「無精子症」など、診断によっては即不妊治療が必要になることもあります。
精液検査の注意点は?
男性の精子はちょっとした体調不良やストレスでも動きが悪くなるなど、影響が出やすいものです。数や運動量も人によって異なるため、慎重に検査をする必要があります。
1. 複数回の精液検査で判断
男性の精液は毎日精巣で新しく作られるため、日々の生活習慣やストレスの影響を反映しやすいといわれています。そのため、少し間をおいて複数回検査し、全回の結果を総合的に見て、不妊原因の有無や程度が判断されます。
2. 複数回の検査は同一病院で
また、検査の頻度や検査前の禁欲期間といった検査条件は病院の考えによって異なります。検査条件を一定にしてより正しい結果を得るためにも、複数回の検査は同じ病院で受けましょう。
3. WHOのマニュアルに沿った検査を選ぶ
もう1つ注意点があります。それは、上記のWHOが定めた正常値は、「WHOの精液検査マニュアルに従って行われた検査方法」であり、検査方法が異なる場合は注意が必要です。
具体的には、WHOは精液全量を遠心分離器にかけて試験管の底にたまった細胞成分すべてを顕微鏡で調べるという方法ですが、実際には精液の一部だけを使って顕微鏡で調べて終わりという病院は少なくありません。
その場合でも精子が見つからなければ無精子症と診断しますが、使わなかった精液の中に精子がいる可能性があるのです。
こうした誤った結果を生まないために、WHOのマニュアルに沿った検査方法を採用している病院を選ぶと安心です。
精液検査で体の異常も見つけよう
精液検査を受けることで、精液や精子の状態をチェックするだけでなく静脈瘤などの疾患が発見される場合もあります。自分では気づかない異常を知ることができるというのは大きなメリットですね。
なかなか赤ちゃんを授かることができないと悩んでいる場合は、夫婦どちらかだけではなく、初回から二人で検査を受けて妊娠しにくい原因がないかをしっかりチェックしてもらうことをおすすめします。