妊娠するためには「排卵」していることが不可欠ですが、「無排卵月経」といって、生理がきていても排卵していないことがあります。「あまり気にしてこなかったけど、実は生理が不規則」という女性は、無排卵の可能性もあるので注意が必要です。今回は、無排卵月経の原因や症状、治療法、妊娠への影響などについてご説明します。
無排卵月経とは?
生理のような出血はあるけれど排卵していない状態を「無排卵月経(無排卵周期症)」といいます。これは、排卵障害の一つで不妊の原因となります。
無排卵月経は、初潮を迎えたあとの思春期や、閉経が近づいた更年期に見られますが、これは生理的な現象なので、大きな心配はいりません。
しかし、30代の女性に病的な無排卵月経が起こることも比較的多くあります。生理のような出血があるため、排卵が起こっていないことに気づかず、不妊で婦人科を受診して無排卵であることが明らかになるケースも少なくありません。
無排卵月経の症状とは?生理はくるの?
無排卵月経の症状として、生理周期がバラバラであることが多く、生理が続く日数が安定しなかったり、経血の量が多すぎたり少なかったりすることもあります(※1)。
まれに、生理周期はおおよそ安定しているものの、排卵していないというケースもあります。
ストレスなどが原因で生理周期が乱れることはよくあることなので、一時的なものであれば心配しすぎる必要はありません。
ただし、1~2ヶ月様子を見てみても生理周期が安定しないようであれば、無排卵月経の可能性もありうるので、婦人科を受診してくださいね。
無排卵月経の特徴は?生理でわかる?
無排卵月経が起きると、生理周期や生理が続く日数、経血の量が次のようになることがあります(※1)。
これらの症状に当てはまる場合は、早めに婦人科で相談しましょう。
生理周期の異常
頻発月経
生理周期が短く、24日以内で次の生理がくるものを「頻発月経」といいます。
特に、19日以内の頻発月経だと約60%の確率で無排卵だといわれます(※2)。
稀発月経
生理周期が長く、39日以上生理がこないものを「稀発月経」といいます。
特に、51日以上の稀発月経のうち約30%が無排卵だといわれます(※2)。
生理日数の異常
過短月経
出血日数が短く、2日以内で生理が終わるものを「過短月経」といいます。
過長月経
出血日数が長く、8日以上生理が続くものを「過長月経」といいます。
経血量の異常
過少月経
日中ずっとナプキンを替えなくても経血があふれないなど、出血量が極端に少ないものを「過少月経」といいます。
過多月経
日中、1時間もナプキンがもたないなど、出血量が極端に多いものを「過多月経」といいます。
無排卵月経になる原因は?
無排卵月経の主な原因は、脳の視床下部や下垂体の機能異常と考えられています(※1)。
正常な状態であれば、脳から卵巣へ「女性ホルモンを出しなさい」という指令が出て、それを受けた卵巣が女性ホルモンを分泌することで、卵胞が発育し、排卵に至ります。
しかし、何らかの原因で脳の視床下部や下垂体に障害をきたして、卵巣へうまく指令が出せなかったりすると、卵胞の発育や排卵がうまく行かず、生理不順や無排卵を引き起こしてしまうことがあるのです。
脳の視床下部や下垂体が障害を起こす原因は、いくつか考えられます。無理なダイエットによる体重減少や過度なストレスなど、日常生活に密接に関わるものもあれば、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」などの病気が潜んでいることもあります(※1)。
無排卵月経は基礎体温表からわかる?
無排卵月経かどうかは、生理の状態だけでなく基礎体温をつけることで確認できることもあります。
きちんと排卵が起きている場合、上図のように、基礎体温のグラフは排卵前後で「低温期」と「高温期」の二相に分かれます。
これは、排卵を終えた卵胞が黄体という組織に変わり、黄体から分泌される「プロゲステロン」という女性ホルモンの作用によって、排卵後の基礎体温が高くなるためです。
一方、排卵が起こらない無排卵月経の場合は、プロゲステロンの分泌量が少なく、基礎体温が高くなりにくいため、上の2つ目のグラフのように、ずっと低温の状態が続きます。
基礎体温を2~3ヶ月記録してみても、なかなか低温期と高温期の二相に分かれないという場合は、自分の基礎体温表を持って婦人科を受診してみてくださいね。
無排卵月経でも排卵検査薬は陽性が出る?
「排卵検査薬を使って陽性反応が出れば、きちんと排卵している」と思う人も多いかもしれませんが、実は無排卵であっても排卵検査薬が陽性を示すこともあります。
排卵検査薬は、卵胞が発育して「もうすぐ排卵が起きそう」というときに分泌量が急増する「黄体形成ホルモン(LH)」を感知するものです。
そのため、卵子が成長しても最終的に排卵できない場合や、水分量の違いでたまたま尿中のLH濃度が高い場合など、無排卵でも陽性を示してしまうこともあります。
生理不順の場合は、排卵検査薬だけに頼らず、基礎体温表や婦人科でのホルモン検査などによって、詳しく調べることが必要となります。
無排卵月経の検査方法は?
無排卵月経かどうかを病院で検査する方法としては、主に次の2つがあります。
ホルモン検査
採血して、女性ホルモンの分泌に関わる「黄体形成ホルモン(LH)」や「卵胞刺激ホルモン(FSH)」などの血中ホルモン値を調べます。
超音波検査
超音波を使って、卵巣の中にある卵胞の大きさを調べます。
卵胞が20mmほどの大きさまで発育していれば、排卵が起こる可能性が高く、逆にそれより小さい場合は、無排卵と診断される可能性が高くなります。
無排卵月経の治療法は?
無排卵月経があり、妊娠を希望している場合は、クロミッドなどの排卵誘発剤を使用して人工的に排卵を促します(※1,2)。
排卵誘発剤の種類によって効果は異なりますが、排卵率は70〜80%程度といわれています(※1)。
排卵誘発剤は、排卵を促す効果がある一方で、副作用もあるため、産婦人科の医師の指示に従って適切に使用しましょう。
無排卵月経でも妊娠できるの?
排卵が起こっていない場合、卵子が精子と受精することができないということなので、そのままだと妊娠は難しいといえます。
しかし、前述のとおり排卵誘発剤を使うことで排卵が起きる可能性もあり、年齢にもよりますが最終的に25~40%の妊娠率を得ることができます(※1)。
タイミングを取って夫婦生活をしてもなかなか妊娠しない場合、無排卵月経が原因の可能性もあるので、婦人科で詳しい検査を受けるのも一つの方法です。
無排卵月経は早めの治療が大切
無排卵月経がある女性の場合、卵巣機能はある程度保たれていることが多いため、できるだけ早く治療を始め、排卵を誘発すれば妊娠できる可能性は高まります(※1)。
生理周期が短い、生理の経血量が多いといった症状が続く場合、無排卵月経の可能性もあるので、妊娠を希望する場合は特に、早めに婦人科で相談してくださいね。