不妊症の原因は様々ですが、全体の3分の1は「原因不明」とされています(※1)。不妊検査を受けても明らかな異常が見つからず、「ピックアップ障害かも」と医師から言われることもあります。ピックアップ障害とは、果たしてどんな疾患なのでしょうか?今回は、ピックアップ障害の原因や症状、改善・治療方法のほか、自然妊娠はできるのかについてご説明します。
ピックアップ障害(キャッチアップ障害)とは?
ピックアップ障害とは、卵管が卵子をうまく取りこめない状態を指し、別名「キャッチアップ障害(卵管采不全)」とも呼ばれます。
本来であれば、卵巣内にある卵胞から排卵された卵子は、卵管の先にある「卵管采」に拾いあげられて、卵管の中へと送り出されます。しかし、この卵管采がなんらかの理由で上手く機能しないと、卵子は卵管に入っていくことができません。
その結果、卵子と精子が出会い、受精できなくなるため、ピックアップ障害があるとなかなか妊娠ができないというわけです。
ピックアップ障害の原因は?
「妊娠を望んでいるのになかなか授からない」という人が不妊検査を受け、妊娠を妨げている何らかの原因が特定できれば、それにあわせた治療を開始します。しかし、不妊の原因が特定できないことも多く、その場合に医師からピックアップ障害の可能性が指摘されることもあります。
性感染症への感染や子宮内膜症などの発症により卵管が詰まってしまったり、卵管采がうまく動かなくなったりすることでピックアップ障害が起こることもありますが、原因がはっきりしない場合も少なくありません。
今のところ、ピックアップ障害があるかどうかを調べる検査方法はなく、腹腔鏡検査をしても明らかにならないこともあります。そのため、「ピックアップ障害が起きている」という確定診断ができず、その可能性を指摘されるにとどまるのが現状です。
ピックアップ障害の改善策・治療法は?
何らかの病気が原因でピックアップ障害が起きていると考えられるときは、その治療を行いますが、原因不明の場合は不妊治療に踏み切る必要があります。
病気による卵管閉塞が見られる場合
性感染症のクラミジアにかかったことで、卵管に炎症が起こって癒着している場合、抗生物質を服用することにより治療します。カップルのどちらかが感染していると、一度治っても再び感染する恐れがあるため、2人一緒に治療する必要があります。
子宮内膜症が原因となっている場合、年齢や症状の程度、発生部位などを考慮したうえで、薬物療法や手術療法を選択します。軽度の子宮内膜症であれば自然妊娠を目指せますが、病状によっては不妊治療を検討することになります。
原因不明の場合
ピックアップ障害の原因が特定されない場合、残念ながら根本的な治療法はまだありません。
改善策の一つとして、排卵誘発剤を使って、排卵する卵子の数を増やしてみて、しばらく様子を見ることもあります。卵管采の機能が低下していても、卵子の数を増やせば拾いあげられる確率が高まるのではないか、と考えられているからです。
しかし、できるだけ早く妊娠を望んでいるのであれば、不妊治療に気持ちを切り替えて妊娠を目指すのも一つの方法です。
ピックアップ障害で妊娠を望む場合は?
ピックアップ障害の原因が卵管閉塞だったとしても、自然妊娠する確率がまったくないわけではありません。卵管は左右で2本あり、もし片方だけが詰まっているのであれば、もう一方の卵管を通って精子と卵子が受精し、着床できる可能性があります。
しかし、両方の卵管に詰まりが見られる場合や、卵管閉塞の手術をしてもなかなか自然妊娠できない場合は、卵管を通さずに受精させることができる「体外受精」を選択することになります。
体外受精とは、卵巣内から取り出した卵子を、体外で精子と受精させる方法です。その受精卵を培養して成長させた後に子宮に戻す「胚移植」を行うことで、着床を待ちます。
また、ピックアップ障害の原因が不明な場合でも、運よく卵管采が卵子を拾いあげてくれることもあり、自然妊娠の可能性もゼロではないといわれています。
ただ、人によっては年齢のことも考えると、自然妊娠を待つのは難しいかもしれません。その場合は、やはり体外受精によって妊娠を目指すことになります。
ピックアップ障害なら不妊治療も視野に入れましょう
ピックアップ障害は、原因不明の不妊の1つであり、残念ながら根本的な治療法はありません。しかし、きちんと排卵されているのであれば、卵子と精子の出会う環境を人工的に用意してあげることで、妊娠できる可能性があります。
ただし、体外受精は人工授精と比べて費用が高いため、不妊治療の進め方についてはパートナーと十分に話し合ってください。