卵胞刺激ホルモン(FSH)とは?基準値や数値が高い・低い原因は?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

「卵胞刺激ホルモン(FSH)」は、男性と女性両方の体内で分泌されているホルモンです。生殖機能に深く関わっているため、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌量が正常ではないと、不妊につながる可能性もあります。今回は、女性の体における卵胞刺激ホルモン(FSH)の役割や基準値、数値が高い・低い原因などについてご説明します。

卵胞刺激ホルモン(FSH)とは?

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女性ホルモンには、「黄体ホルモン(エストロゲン)」と「卵胞ホルモン(プロゲステロン)」の2種類があります。

これらは卵巣内で産生され、分泌されますが、この産生と分泌をコントロールしているのが、脳の下垂体から分泌される「ゴナドトロピン」というホルモンです。

ゴナドトロピンには、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と「黄体形成ホルモン(LH)」の2種類があり、それぞれ重要な役割を担っています。

卵胞刺激ホルモン(FSH)は、卵胞の発育を促し、エストロゲンの産生を助けます。

一方、黄体形成ホルモン(LH)は、発育した卵胞からの排卵を促し、プロゲステロンの産生を助けます。

これら2つのゴナドトロピンが正常に分泌されることによって、女性の体内で卵胞の発育と排卵が起こり、妊娠するための基礎が作られるというわけです。

卵胞刺激ホルモン(FSH)の基準値は?

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卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値は、採血をして、血中ホルモン検査を行うことで測定します(※1)。

卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値は生理周期の中で変動し、日本産科婦人科学会によると時期ごとの正常値は下表のとおりです(※2)。

これを基準として、数値が極端に高い・低い場合、それぞれで考えられる不妊の原因が異なります。

FSH値(MIU/mL)
卵胞期(生理後~排卵前) 5.2~14.4
排卵期 5.6~14.8
黄体期(排卵後~生理前) 2.0~8.4

卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値が低い原因は?

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卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値が低い場合、主な原因として次のようなものが考えられます。

脳の視床下部や下垂体の障害

卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値が低く、かつ黄体形成ホルモン(LH)も低い場合、これらのホルモンを分泌する脳下垂体や、分泌の指令を出している脳の視床下部に何らかの障害がある可能性があります(※1)。

脳の視床下部や下垂体がうまく機能しなくなる原因は様々あり、過度のストレスやダイエットによる急激な体重減少などもそのひとつです(※3)。

卵胞の発育や排卵が妨げられてしまうと、生理が起こらない「無月経」やうまく排卵できない「排卵障害」などにつながる恐れもあります(※2)。

高プロラクチン血症

脳下垂体に、母乳の分泌を促す「プロラクチン」を出す小さな腫瘍ができるなどして、プロラクチンが過剰に分泌される状態が、高プロラクチン血症です。

高プロラクチン血症が起きると、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌が低下し、排卵が起きにくくなります(※3)。

卵胞刺激ホルモン(FSH)が低いときの治療法は?

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卵胞刺激ホルモンの値が低い原因が高プロラクチン血症であれば、プロラクチンの分泌を抑える薬を服用することで、排卵が回復することが多くあります。

ストレスや体重減少による脳の視床下部や下垂体の機能障害が原因と考えられる場合は、適度な運動や仕事量の調整でストレス発散を心がけたり、無理なダイエットをやめて栄養バランスの取れた食事を摂ったりすることで、体の調子を取り戻すよう心がけましょう。

なお、無月経や排卵障害が起きているときは、排卵誘発剤を飲んだり注射で投与したりすることによって、人工的に排卵を促すこともあります(※1)。

卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値が高い原因は?

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卵胞刺激ホルモン(FSH) の値が高い場合、主に次のような原因があると考えられます。

卵巣機能の低下

卵巣機能が下がっていると、卵胞刺激ホルモン(FSH) を多く分泌して卵胞を成熟させようとする信号が体内で出されるため、FSH値が高くなります(※2)。

卵巣が正常に働いていないと、卵胞が十分に発育しなかったり、排卵が起こらなかったりと、排卵障害につながることがあります(※3)。

閉経が近い

一生のうちに排卵される卵子の数はあらかじめ決まっているため、年齢が上がるにつれて卵子は減っていきます。

そうすると、卵胞の発育や排卵によって分泌される女性ホルモンの分泌量が急減し、反対に脳下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH) と黄体形成ホルモン(LH)は増えていきます(※3)。

これは、主に45歳以降の更年期に起こる現象ですが、40歳未満でも「早発閉経」が起こることがあります。まだ更年期ではないのにこのような症状があるときは、完全に閉経を迎えてしまう前に治療することが大切です。

卵胞刺激ホルモン(FSH)が高いときの治療法は?

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卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が高い場合、正常なホルモンバランスに近づけるため、女性ホルモンの「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」をホルモン剤で順番に補う「カウフマン療法」を行うことがあります(※3)。

また、妊娠を希望する場合は、カウフマン療法に加えて、hMG注射やhCG注射などの排卵誘発剤を投与する「ゴナドトロピン療法」も実施することもあります(※3)。

これらのホルモン療法は、薬で卵巣が刺激されることによる「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」などの副作用が起きることもあるため、慎重に経過観察をしながら治療に取り組むことが大切です。

卵胞刺激ホルモン(FSH)が高い・低いときは医師と治療法を検討しよう

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卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値を血液検査で調べることで、妊娠しにくい原因がある程度わかることもあります。

数値が正常値よりも高い・低い理由は様々ですが、いずれにしても対処法や治療法についてかかりつけの産婦人科医と相談しましょう。

適切な治療によってホルモンバランスを整え、妊娠しやすい体の状態を作れるといいですね。

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