近年、高齢出産をした芸能人・有名人が増えてきました。こうしたニュースを見ていると、30代後半~40代という年齢での妊娠・出産を簡単に感じる人もいるかもしれません。しかし実際は、35歳を過ぎたあたりから自然妊娠できる確率も不妊治療による妊娠率も低くなることがわかっています。そこで今回は、自然妊娠が可能な年齢や、高齢妊娠の注意点などをご説明します。
自然妊娠とは?高齢妊娠は増えているの?
「自然妊娠」とは、医学的治療を受けずに夫婦生活を営んで妊娠することを指します。自分で排卵日のタイミングを調べたり、運動や食事で妊娠しやすくなる体作りをして妊娠した場合は、自然妊娠にあたります。
自然妊娠は、婦人科などで性交のタイミングの指導を受けたり、人工授精や体外受精をしたりといった「不妊治療」を受けて妊娠する場合と区別されます。
厚生労働省のデータによると、年齢が40歳以上の母親から生まれる赤ちゃんの数は年々増加しています(※1)。しかし、自然妊娠であっても不妊治療を受けるにしても、年齢が上がるごとに妊娠する確率は下がり、妊娠によるリスクは高くなるため、注意が必要です。
高齢妊娠の限界は?自然妊娠できる年齢は何歳まで?
生物学的に見ると、健康な女性が自然妊娠できる年齢は、最初に排卵が起こる12歳前後から閉経を迎える50歳前後まで。閉経が遅い女性であれば、50歳以降に妊娠・出産ができる可能性もありますが、一般的には閉経の約10年前、つまり40歳頃から自然妊娠の可能性はかなり低くなります。
極めて稀ですが、50代を過ぎての出産も世界で数例の報告があります。ギネスブックに記録されている自然妊娠による最高齢出産は、59歳という年齢で出産したイギリス人女性のドーン・ブルックスさんです(※2)。
年齢別の自然妊娠できる確率は?高齢妊娠ほど低い?
キャリアプランやライフプランは人それぞれなので、一概に妊娠・出産のベストな年齢があるわけではありません。しかし、「健康な子供を授かる」という視点で、生物学的に見るのであれば、自然妊娠に最適な年齢は20代、遅くとも35歳までと考えられます(※3)。
昔に比べると女性の平均寿命は伸びているものの、年齢を重ねるごとに自然妊娠できる確率が減少していくことには変わりありません。不妊の割合を年齢別に比較してみると、次のとおり加齢とともに妊娠しづらくなっていることがわかります(※4)。
女性の年齢と不妊の割合
● 25~29歳:8.9%
● 30~34歳:14.6%
● 35~39歳:21.9%
● 40~44歳:28.9%
いくら健康で外見が若く、妊娠しやすい体質でも、年齢を重ねれば卵子が老化してしまい、妊娠率は落ちてしまいます。なお、男性も年齢を重ねることによって精子の質が落ちていくので、20代同士のカップルと比べると、40代同士のカップルの方が自然妊娠できる確率は低くなります。
高齢で自然妊娠を目指す場合の注意点は?
年齢が40代の女性でも、自然妊娠が全くできないというわけではありません。しかし、高齢になればなるほど、妊娠できたとしても母体と胎児の両方に様々なリスクを伴います。
次に挙げる3つの注意点を理解したうえで、妊娠・出産のプランについてパートナーと話し合ってみましょう。
1. 妊娠中に病気にかかりやすい
高齢妊娠の場合、妊娠中の母体に大きな負担がかかり、体調不良や病気になりやすくなります。特に、高血圧による頭痛やたんぱく尿、むくみなどの症状が現れる「妊娠高血圧症候群」を引き起こすことがあります。
妊娠高血圧症候群は、年齢や出産経験の有無で発症の可能性が変わると考えられており、「40歳以上」の「初産婦」は特にリスクが高いとされています(※5)。
2. 染色体異常・流産の確率が高まる
高齢妊娠は流産率が高くなることがわかっており、その主な原因は、胚または受精卵の染色体異常です。男女ともに高齢になるほど精子・卵子が老化し、特に高齢女性の場合は、卵子に染色体異常が現れる確率が高くなります。
染色体異常の1つに「ダウン症候群」があります。女性の出産年齢を25歳と40歳で比較すると、40歳の女性の方が約10倍、赤ちゃんにダウン症候群が現れるリスクが高くなります(※5)。
3. 赤ちゃんの死亡率が上昇する
女性の出産年齢が上がるほど、周産期死亡率(妊娠22週以降の胎児や生後1ヶ月以内の新生児の死亡率)が高くなります。なお、25~29歳の女性が最も周産期死亡率が低いというデータがあります(※5)。
高齢出産を目指すなら自然妊娠にこだわりすぎないで
不妊治療と比べると、自然妊娠は金銭的にも身体的にも負担が少なくて済みます。しかし、35歳を過ぎてから初めての妊娠を目指すのであれば、なるべく早い年齢での妊娠が理想的です。
避妊せずに夫婦生活を営んでも、半年~1年間自然妊娠しない場合は、婦人科で不妊検査を受けてみてはいかがでしょうか。高齢妊娠の可能性とリスクをしっかりと認識した上で、自分たちにあった妊活に取り組んでくださいね。