妊娠1ヶ月目とは、妊娠0~3週までの4週間を指します。「妊娠」と呼んでいますが、この期間は受精卵が子宮内に着床するまでの期間なので、正確に言えば妊娠していない時期です。それでは、着床に向けて体の中ではどのような変化が起きているのでしょうか。今回は妊娠1ヶ月の自覚症状や体の変化、赤ちゃんの状態についてご説明します。
妊娠1ヶ月はどんな時期?

妊娠1ヶ月目は、精子と卵子が出会って受精卵になり、それが着床して妊娠が成立するまでの期間にあたります。妊娠週数でいえば、妊娠0週目~妊娠3週目です。
まだ妊娠していない時期を妊娠期間に含むことに違和感があるかもしれませんが、これはWHO(世界保健機関)が定める妊娠期間の定義によります。
最後の生理が始まった日から起算され、最終生理開始日を妊娠0週0日とし、その280日後(妊娠40週0日)を出産予定日と定めます。医学の世界では精子と卵子が活動をしていた期間を、妊娠の始まりと考えるのです。
妊娠0週目
生理が始まった日を妊娠0週0日とするので、妊娠0週目は生理が続いている状態です。妊娠のもととなる卵子の準備が始まっています。ただし、お腹の中ではまだ何の変化も起きていません。
妊娠1週目
妊娠1週目は、卵巣内にある卵胞が成熟して、卵子を排卵する時期です。排卵日の2~3日前がもっとも妊娠しやすいので、この時期に性行為を行うと妊娠可能性が高まります。
妊娠2週目
妊娠2週目には、卵子と精子が出会い、受精卵ができます。その後、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、子宮へと向かって進みます。
妊娠3週目
受精卵は受精後6~7日後に着床を開始し、12日後頃に着床が完了します(※1)。そのため妊娠3週目は、妊娠2週目でできた受精卵が子宮内膜に着床する時期です。ここでようやく妊娠が成立し、体が変化し始めます。
特に、着床をきっかけにhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)と呼ばれるホルモンが活発に分泌されるようになります。これが次の排卵を止めて、妊娠・出産に向けた体作りを進めます。
このhCGの分泌量が多くなっているかどうかを検知することで、妊娠検査薬による妊娠判定ができるようになります。
妊娠1ヶ月目に症状は現れる?

妊娠3週目にようやく着床が起こるので、妊娠1ヶ月の間では妊娠による自覚症状はほとんどありません。
ただ、妊娠1ヶ月目の終わり頃になれば、「妊娠超初期症状」が現れる可能性があります。妊娠超初期症状が現れるかどうかは個人差があり、風邪や月経前症候群とも間違えやすいので、参考程度に考えてください。
妊娠超初期症状の例
● 高温期が2週間以上続く
● 胸が張る、痛くなる
● 体がだるい、眠い
● おりものが変化する
● 頭痛がする
● 胃がムカムカする
● 頻尿、便秘、下痢になる
● 味覚、嗅覚が変わる
着床したときに「着床出血」や「着床痛」が起こることもありますが、どれも注意していないと見逃してしまうような症状ばかりです。
また、多量の出血やひどい腹痛、腰痛などが現れた場合、異所性妊娠(子宮外妊娠)などの可能性もあるので、早めに病院を受診してください。
妊娠1ヶ月目の体の変化は?お腹は出る?

妊娠1ヶ月目では目立った体の変化はありません。妊娠が成立する前なので、お腹が大きくなるといった変化も当然見られません。
ただ、妊娠3週目の後半で着床が起こると、体の中ではさまざまな変化が起こります。顕著なのが女性ホルモンの分泌量です。着床で活発になるhCGの影響で「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌量が増加します(※1)。
この2つの女性ホルモンの影響で、妊娠を維持しやすくなるように基礎体温の高温期が維持されたり、子宮内膜が厚くなったりするなどの変化が続きます。ただし目に見える変化ではないので、自覚症状としては現れません。
妊娠1ヶ月目に妊娠判定はできるの?

妊娠を希望している人は早く妊娠しているかどうかを知りたい気持ちになりますよね。ただ、妊娠1ヶ月目では自覚症状もほとんどなく、妊娠検査薬も使えないので、妊娠判定はできません。
市販されている一般の妊娠検査薬の場合は、妊娠5週目を迎えるまでは正確な妊娠判定ができないので、もう少し待ってくださいね。
妊娠1ヶ月目の赤ちゃんの状態は?

妊娠1ヶ月目では受精卵が何度か細胞分裂をしただけで、まだ赤ちゃんと呼べるような形にはなっていません。子宮内膜の中にあるので、超音波検査でも確認することはできないのです。
赤ちゃんを包む袋である「胎嚢」は妊娠5週目頃、赤ちゃんの元になる「胎芽」は妊娠6週目頃に、超音波検査で確認できるようになるので、もう少し成長するのを待っていてくださいね(※1,2)。胎嚢や胎芽の他にも、絨毛膜や羊膜、羊水腔、卵黄嚢など妊娠を維持するのに欠かせない付属器官が作られていきます。
妊娠1ヶ月目の過ごし方は?注意することはある?

妊娠1ヶ月目は妊娠しているかどうかを判断できない時期ですが、少しでも妊娠の可能性があるなら少しずつ生活習慣を改めていきましょう。以下に挙げるものは特に控えることをおすすめします。
タバコ
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素といった成分には、血管を収縮させる作用や、酸素を取り込みにくくさせる作用があります。それによって赤ちゃんに栄養や酸素が届きにくくなって、胎児発育不全や、のちに早産などが起きる危険性があります(※1)。
アルコール
妊娠中のアルコール摂取に関して、安全な量ははっきりしていませんが、毎日たくさん飲んでいると、流産や死産の確率が高まり、胎児の脳や体に障害を与えることもあります(※1)。
妊娠1ヶ月は妊娠を意識していない人も多いので、飲酒を完全に控えるのは難しいかもしれませんが、できれば妊活を始めたらアルコールを飲む頻度や量を減らすことをおすすめします。
カフェイン
カフェインを含んだコーヒーを飲んだからといってすぐに悪影響を与えるわけではありませんが、大量に摂取し過ぎると、流産や低出生体重児につながるリスクもあります(※2)。妊娠がわかったら、できるだけ控えるようにしましょう。
薬・サプリメント
妊娠1ヶ月の時点で薬を服用しても胎児に影響を及ぼすことはないとされていますが、赤ちゃんの重要な器官や臓器の形成が始まる妊娠2~4ヶ月頃になると、薬による影響が出やすくなります(※1)。
妊娠の可能性があるとわかったタイミングから、薬やサプリメントの服用は慎重に行いましょう。服用前に、医師や薬剤師に相談すると安心です。
ただし、薬の種類によっては体内に蓄積されるため、薬を服用している人はかかりつけの医師に相談しておきましょう。
妊娠1ヶ月目なら風疹の抗体チェックを忘れずに

妊娠初期に特に気をつけたい病気が、「先天性風疹症候群」です。先天性風疹症候群は、妊婦さんが風疹ウイルスに感染することで、胎児に発症します。生まれた後に、白内障や高度難聴、先天性心疾患などの障害が引き起こされます。
風疹ウイルスは、一度感染して抗体ができていれば、再び感染することは極めて稀です。妊娠が分かったら、同居している家族にも風疹の抗体があるかを確認しましょう。
もし、妊婦さんに抗体がないとわかったときは、手洗い・うがいを徹底し、人混みや子供が多い場所を避けてマスクを着用するなどして、風疹ウイルスの予防策を取ってください。
妊婦さんだけでなく、同居している家族も風疹の抗体を持っていなかった場合は、速やかに予防接種を受けてもらうようにしましょう。
妊娠1ヶ月目は化学流産が起こる可能性も
受精卵ができて子宮内膜に着床したものの、着床が長続きせず妊娠に至らないことを「生化学妊娠」といい、「化学流産」とも呼ばれます。
妊娠1ヶ月目は、この化学流産が起こる可能性があります。まだ妊娠判定ができないので、受精卵が着床したことに気づかないまま流産になっているケースもあります。
「流産」と聞くと気が重くなるかもしれませんが、化学流産の原因は主に胎児側の染色体異常で、気をつけていても防げるものではありません。また、腹痛や出血などの症状もなく、手術などを行う必要ありません。
あまり考えすぎず、普段通りの生活を送ってくださいね。
妊娠1ヶ月目は妊娠可能性を意識した生活を
妊娠1ヶ月は自覚症状もなく、妊娠したかどうかもはっきりしない段階です。妊娠を希望している人なら「妊娠したかな?」とドキドキする時期ですが、妊娠症状が現れるのはもう少し先なので、気にしすぎないで穏やかに過ごしてくださいね。
ただし、妊娠している可能性があることを踏まえて、日々の生活習慣は見直しましょう。
妊娠1ヶ月目ではまだまだ小さな赤ちゃんですが、ここから約9ヶ月間で驚くべきスピードで成長を遂げます。これからのマタニティライフは体調に気遣いながら、赤ちゃんと一緒に毎日を大切に過ごしてくださいね。