「風疹」は子どものときに感染しているか、予防接種を受けていれば、大人になってからかかることはほとんどありません。しかし風疹は、妊娠中に感染すると胎児に障害をもたらす可能性がある病気のため、抗体がない妊婦さんは注意が必要です。
今回は、妊娠中の風疹感染リスクや、抗体がないときの対処法、風疹の予防法についてご説明します。
風疹とはどんな病気?
風疹とは、風疹ウイルスに感染することで発症する感染症です。春から夏にかけて多く見られ、咳やくしゃみなどの飛沫感染で人から人へうつります。
感染すると、2〜3週間の潜伏期間を経て、発熱やリンパ節の腫れ、発疹が現れます。発疹は首や顔から始まり、やがて全身に広がります。ただし、30%程度の人は風疹ウイルスに感染しても無症状と言われています(※1)。
一度感染すれば風疹ウイルスに対する抗体ができるので、その後、抗体があるうちは風疹にかかりにくくなります(※1)。
妊婦の風疹はなぜ危険?赤ちゃんにどんな影響がある?
妊娠中に風疹に感染した場合、風疹ウイルスが胎盤を通じてお腹の赤ちゃんに感染し、「先天性風疹症候群(CRS)」を引き起こす恐れがあります。
先天性風疹症候群は主に、次のような症状があります(※1)。
- 先天性心疾患
- 白内障
- 難聴
全ての症状が出るということではなく、いずれかの症状のみ現れることもあります。
先天性風疹症候群を発症する可能性は、妊婦さんが風疹にかかった時期により異なります。
妊娠12週未満で感染すると、80%以上が先天性風疹症候群を発症します(※2)。妊娠12〜20週の間に感染すると、先天性風疹症候群のなかでも主に難聴のみの症状が現れると言われています。
妊娠20週を過ぎると胎児への感染率は減少し、先天性風疹症候群を起こす危険性はほぼなくなります(※2)。
大人なら抗体はある?抗体がない場合、妊娠中に風疹の予防接種を受けられる?
風疹は子どもの時に感染している、あるいは予防接種を受けていれば、抗体をもっている可能性が高いといえます。
現在風疹の予防接種は法律に基づいて行われていますが、過去には女性のみ学校で風疹の集団接種を受ける機会がありました。
ただし、下記の条件に当てはまる人は学校での集団接種をする機会がなかったためワクチン接種ができていない可能性があります(※3)。
- 1962年4月2日~1979年4月1日の間に生まれた男性
- 1979年4月2日~1987年10月1日の間に生まれた男性・女性
また、ワクチンを打っていたとしても抗体が十分にできておらず、大人になってから風疹に初めて感染をする人もいます。
自分に風疹の抗体があるかどうかは妊娠初期の妊婦健診でチェックをしてもらえるので、妊婦健診時に抗体をチェックしてもらった覚えがない場合は、かかりつけの産婦人科医に確認しましょう。
もしも風疹の抗体がない、抗体が少ないとわかった場合でも、妊娠中はワクチン接種をすることができません。
風疹のワクチンは「生ワクチン」で、少量の風疹ウイルスを直接注射することになるため、ワクチン接種が原因で風疹を発症する可能性もあるからです。
妊娠中に風疹を予防するには?
先述のように、妊娠中は風疹ワクチンの予防接種が受けられないため、風疹の抗体がない、少ないと判明した場合は、妊娠20週を過ぎるまでは以下のことを心がけて風疹の感染を予防しましょう。
人ごみを避け、手洗いとうがいを徹底する
風疹は飛沫感染によって広がるため、外出時はマスクを着用し、出来るだけ人混みを避けるようにしてください。
また外出後や食事の前には手洗いとうがいを行いましょう。
家族に風疹の予防接種を受けてもらう
家族が風疹にかかることで妊婦さんも感染してしまう可能性があるため、同居する家族にも風疹の抗体があるかチェックしてもらいましょう。
パートナーはいま妊婦さんが健診を受けているかかりつけの産婦人科で、ほか同居中の家族はかかりつけの内科で、風疹の抗体があるかどうか採血で簡単に検査することができますよ。
もしも同居する家族に風疹の抗体がなかったら、風疹ワクチンの接種を受けてもらうと良いでしょう。
また現在、1962年(昭和37年)4月2日~1979(昭和54)年4月1日生まれの男性を対象に、お住まいの自治体から原則無料で風疹の抗体検査と予防接種が受けられるクーポン券が届きます。
上記にパートナーやおじいちゃんが該当している場合は、無料で検査できるこの機会を活用してみてはいかがでしょうか。期間限定なので、クーポン券の確認は忘れないようにしてくださいね(※4)。
風疹感染を予防して、赤ちゃんを守ろう
妊娠20週まで風疹に感染せずに過ごせることで、赤ちゃんの先天性風疹症候群にかかるリスクの回避につながり、赤ちゃんを守ることができます。
風疹に対する抗体が少ないと感染する恐れはあるので、妊娠20週までは、人ごみをなるべく避ける、手洗いうがいをしっかりと行う、一緒に住む家族に予防接種を受けてもらうなど風疹に感染しないように予防していくことが重要です。
もしも風疹のような症状が見られた場合には、病院へ行く前に、まずは電話でかかりつけの産婦人科へ相談し指示を受けるようにしましょう。