妊婦がおたふく風邪にかかると危険?妊娠中の胎児への影響は?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

「おたふく風邪」にかかったことはありますか?一度感染していれば免疫ができるので再発することはありませんが、なかには大人になってから初めて感染する人もいます。妊娠中におたふく風邪の免疫がないと、「もし感染してしまったらお腹の赤ちゃんは大丈夫なのかな…」と心配になりますよね。そこで今回は、妊婦さんがおたふく風邪に感染したときの危険性と胎児への影響についてご説明します。

おたふく風邪とは?

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おたふく風邪とは、麻疹ウイルスの仲間である「ムンプスウイルス」が原因の感染症です。正式名称を「流行性耳下腺炎」といい、その名の通り、耳の下にある耳下腺が炎症を起こして腫れ、悪寒や頭痛、発熱、倦怠感など風邪に似た症状が現れます。

耳の下の頬からあごの辺りがパンパンに腫れて、「おたふくのお面」のような輪郭になるのが特徴です。

妊婦がおたふく風邪にかかると危険?

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おたふく風邪は、子供のときによくかかる病気なので、大人の正確な発症状況は明らかになっていないのが現状です(※1)。妊婦さんがおたふく風邪にかかる頻度は、1万人中0.8〜10人と推測されています(※2)。

一般的に、おたふく風邪の重症例として、合併症で髄膜炎を起こし、激しい頭痛や吐き気、意識混濁、痙攣などの症状が現れることもあります。

妊婦さんは、つわりがある時期は特に体調がすぐれないことが多くあります。そのうえおたふく風邪にかかってしまうと、顔の腫れや吐き気のために十分に食べ物や飲み物を摂ることができず、ママも赤ちゃんも栄養不足に陥ってしまう可能性があります。

また、お腹が大きく、体の動きが制限されているので、もしおたふく風邪が重症化して意識が朦朧としてしまうと、1人で家にいるときに急に倒れてしまったりする恐れもあります。そういったリスクを防ぐために、感染しないよう注意する必要があります。

妊娠中のおたふく風邪で胎児に影響はある?障害は?

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これまで、妊娠初期におたふく風邪にかかると流産のリスクが高まる、と考えられてきましたが、最近ではそれを否定する研究報告も出てきています(※3)。

また、胎盤を通じてママから赤ちゃんにウイルスがうつることはあるものの、胎児奇形などを引き起こす危険性も今のところ指摘されていません(※3)。

ただし、周産期(妊娠22週~生後7日未満)にママから感染した場合、赤ちゃんが肺炎や脳炎を起こす重症例もあるので、妊娠中も産後も十分気をつけることが大切です。

妊娠中のおたふく風邪を予防するには?

おたふく風邪は病院で抗体検査が受けられるので、まずは免疫があるかどうかを確認しましょう。免疫がない場合、妊娠中はおたふく風邪の予防接種を受けることができないので、感染しないように以下のことに気をつけましょう。

手洗い・うがい・マスク着用を徹底する

おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスは、感染者のくしゃみや咳で飛沫感染します。感染力が強いウイルスなので、通常の風邪予防と同じように人混みは避け、家に帰ったら手洗い・うがいを徹底しましょう。

通勤など、どうしても人混みに行かなければいけないときには、マスクをするのがおすすめです。

家族に予防接種を受けてもらう

おたふく風邪は子供がかかりやすいので、上の子がいる人は特に注意しましょう。

家族内に感染者がいると感染率は一気に高まるので、家族の中で免疫がない人がいれば、パートナーも含めて予防接種を受けてもらってください。

妊娠中におたふく風邪にかかったら?薬は飲めるの?

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おたふく風邪には特効薬がないので、対症療法が基本です。発熱や頭痛などの症状に合わせて、妊娠中でも飲める解熱剤や鎮痛剤などを処方してもらったり、耳の下や頬の腫れを冷やして痛みをやわらげたりといった処置を行います。

顔の腫れや痛みがひどくなると食事が満足にできず、栄養不足や脱水症状になる恐れがあります。ゼリーやプリン、豆腐などのやわらかくて喉越しがいいもので栄養を補給しながら、しっかり水分補給を心がけてください。

頭痛や吐き気があまりにもつらく、食べても吐いてしまうときには病院を受診しましょう。点滴をしてもらうなど、少しでも体力を回復できるような対策を相談してください。

おたふく風邪で妊娠しにくくなることも?

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大人になってからおたふく風邪を発症した場合、男女ともに不妊の可能性を高める恐れがあります。

これは、思春期以降におたふく風邪にかかると、女性の場合は卵巣炎を起こす例が約7%あるからです(※4)。卵巣炎を起こしたからといって、すぐ不妊につながるわけではありませんが、排卵に影響が出る恐れもあるので注意が必要です。

また、男性が大人になってからおたふく風邪にかかると、約20~30%の確率で精巣炎を起こし、もし両方の睾丸がダメージを受けると、無精子症になる可能性があります(※4)。

もし妊娠中におたふく風邪にかかってしまい、次の妊娠も検討している人は、卵巣に異常がないかどうかも病院で診てもらうと安心です。

妊婦はおたふく風邪予防を徹底しよう

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おたふく風邪は流行のピークというものがなく、季節を問わず、いつでもかかる可能性があります。妊娠中に免疫がないことがわかったら、普通の風邪と同じように一年中予防を心がけなければなりません。

予防接種ができない以上、感染を防ぐことが一番大切なので、妊婦さんは人混みを避けるようにしましょう。また、体力が低下しているとウイルスへの抵抗力も下がってしまいます。元気な赤ちゃんを出産するためにも、普段から健康的な生活を心がけ、適度に体を動かして体力をつけておいてください。

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