妊婦がりんご病にかかると危険?妊娠後期でも胎児への影響がある?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

「りんご病」と聞くと、子どもがかかるものというイメージを持っている人が多いかもしれませんが、大人が発症することもある病気です。りんご病というかわいい名前とは裏腹に、大人になってからかかると症状が重くなる危険性も。特に妊娠中にりんご病を発症すると、お腹の赤ちゃんにも悪影響を与える恐れがあります。2人目、3人目を妊娠中のママは、上の子が保育園や幼稚園などで感染して、家庭内感染を起こしやすいので特に注意が必要ですよ。

今回はりんご病はどういう病気か、妊娠中に感染したときの胎児への影響、発症した場合の対処法などをご説明します。

りんご病とは?大人も感染するの?

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りんご病は、正式名称は「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といい、「ヒト・パルボウイルスB19」というウイルスが原因で発症する感染症です。ほっぺたに蝶の羽のような紅斑が現れるのが特徴で、その様子がりんごのように見えることから、この名前がつけられました。

りんご病の特徴は潜伏期間が長いことで、感染してから症状が現れるまで10~20日ほどかかります(※1)。症状が現れる前のこの潜伏期間が一番感染力が強いので、りんご病に感染していることに気づかないまま、感染が拡大するケースがよくあります。

また、りんご病は5〜9歳の子どもがもっとも感染しやすい病気ですが、一度も感染したことがない人や、かかってもきちんと免疫が作られなかった人は、大人になってからでも感染することがあります(※1)。

大人のりんご病は症状が重くなる?

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子どものりんご病は、顔や体に紅斑が出るのが特徴で、微熱や倦怠感など風邪のような症状を伴いますが、それほど重い症状は現れません。

大人の場合、紅斑は出ないことが多く、子どもと同じように軽い微熱程度ですむことがほとんどです。しかし、まれに重症化すると、倦怠感や関節痛、頭痛などが現れることがあります。関節痛はひどくなると、数日間歩けなくなるほどの痛みを感じることもあります。

妊婦のりんご病は胎児に影響がある?

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大人のりんご病でもっとも注意したいのが、妊娠中の感染です。妊婦さん自身は紅斑が出たり、風邪の諸症状が現れたりするだけで問題はありませんが、お腹の赤ちゃんに「胎児貧血」や「胎児水腫」と呼ばれる深刻なトラブルを引き起こす恐れがあります(※1)。

ヒト・パルボウイルスB19は、赤血球のもとになる「赤芽球」という細胞に感染します。このウイルスが赤芽球を破壊すると、妊婦さんの体内では一時的に赤血球ができなくなります。

胎盤を経由して妊婦さんから赤ちゃんにもウイルスが感染すると、赤ちゃん自身の赤血球も減少して胎児貧血を起こし、さらに重症化すると体内に水がたまって全身がむくみ、胎児水腫を起こしてしまうのです。

おなかの赤ちゃんが胎児水腫になると、自然に治る場合もありますが、低酸素状態が続くために臓器が成熟できず、最悪の場合には流産や死産を招くこともあります。生まれることができても、呼吸器や循環器系に障害が残り、予後が悪くなることが多いため注意が必要です。

妊婦のりんご病が胎児に感染する確率は?

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妊婦がりんご病に初めて感染した場合、約20%の割合でウイルスが胎盤を通過して胎児感染を起こし、そのうち約20%で胎児の貧血や胎児水腫を引き起こします。これは、りんご病に初めて感染した全妊婦の約4%にあたるとされていました(※2)。

一方、2011年に行われた厚生労働省の調査では、りんご病が胎児に感染した妊婦のうち約70%が、流産や死産に至ったという報告もあります(※2)。

この調査は、妊婦健診を実施する全国2714施設を対象に行われました。回答があった1990施設の結果をまとめると、りんご病のウイルスである「ヒト・パルボウイルスB19」が母体から胎児へと感染した人は69人で、35人が流産、14人が死産、17人が出産しました。

また、このうち49%の妊婦さんはりんご病の症状が見られず、54%は家族にりんご病の症状が出ていました。84%の割合で、上の子どもがいたこともわかっており、小さな子どもがいる家庭では特に注意が必要です。

なお、この調査には、ヒト・パルボウイルスB19が妊婦に感染した際に、胎児が重症化しやすい妊娠20週未満での感染例が多く含まれます。妊娠20週以降は感染しても重症化しにくく、感染した週数によっても結果が異なるため、対応については医師とよく相談しましょう。

妊婦がりんご病を予防する方法はある?

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りんご病のワクチンはまだ開発されておらず、感染を防ぐ方法も確立されていません。そのため、妊娠中にりんご病に感染するのを予防するためには、外出時にマスクをする、家に帰ったら手洗い・うがいを徹底する、子どもが多く集まる場所に近づかないなど、自分でできることを心がける他ありません。

家庭内では、感染した人と接触すると約50%の確率で感染するといわれています(※3)。上の子どもがいる場合は、特に注意が必要です。

りんご病の潜伏期間には、風邪のような症状があらわれることがあります。子どもが風邪っぽいなと感じたら、食器や食事、タオルを別にするなど、できるかぎり感染しないように気をつけてください。お世話をしたあとは、必ず石けんで手を洗いましょう。

妊娠を希望する、あるいは妊娠がわかったら、りんご病に免疫があるかどうかを調べることをおすすめします。病院の抗体検査で簡単に調べることが可能です。抗体があれば安心できますし、抗体がなければ予防をしっかり行うことが大切です。

妊婦がりんご病を発症したときの治療法は?

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妊娠中にりんご病にかかってしまったら、発熱や関節痛、頭痛などの症状をやわらげる薬を飲みながら自然治癒するのを待ちます。治療中は、妊婦さんの体はもちろんですが、お腹の赤ちゃんの状態を細かくチェックすることが大事です。

胎児水腫は、母体がりんご病に感染してから9週間以内に発症し、その多くは2~6週間以内に発症していることがわかっています(※2)。そのため一般的に、感染してから最低10週間は、週に1~2回の超音波検査を実施し、赤ちゃんの様子をみていきます。

母体・胎児の状態などにもよりますが、妊娠34週頃を過ぎ、赤ちゃんの機能が成熟してきている場合は、様子を見ながら早めに出産をして治療を行う選択肢もあります。

妊娠初期・中期・後期を問わず、りんご病の感染予防を心がけて

りんご病は、妊娠初期に感染するほうが胎児の異常による流産を引き起こしやすいといわれていますが、妊娠中期・後期でも胎児感染が起きる可能性があります。妊娠中は、継続的な予防が大切です。

赤ちゃんに感染する可能性があると思うと不安が募るかもしれませんが、まずは妊婦さん自身に免疫があるのかどうかを把握して、その上で予防に努めることが大切です。

イギリスで行われた調査報告によると、妊婦がヒト・パルボウイルスに感染する頻度は約0.25~1.0%とそれほど高いものではありません(※4)。

また、りんご病自体は感染力がそれほど強いものではないので、きちんと予防を心がけていればある程度防ぐことはできます。あまり不安に思いすぎず、健康的な生活を心がけることが、お腹の赤ちゃんを守ることにつながりますよ。

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