HELLP(ヘルプ)症候群とは?原因や症状、赤ちゃんへの影響は?

監修医師 産婦人科医 渡邉 京子
渡邉 京子 産婦人科専門医。長門クリニック勤務。女性特有の月経や更年期にまつわる悩みの助けとなること、また、妊娠出産期を安心安全に過ごすお手伝いすること、を念頭に置いて日々診療しています。 監修記事一覧へ

妊娠中には特有の病気があり、つわりと思っていたら深刻な状態だった、というケースもあります。そのなかでも、妊娠後期などに発症することがある「HELLP(ヘルプ)症候群」は、ママと赤ちゃんの両方に影響が出る可能性があるので注意が必要です。今回は、このHELLP(ヘルプ)症候群が起こる原因や症状、治療法のほか、赤ちゃんへの影響などをご説明します。

HELLP(ヘルプ)症候群とは?いつ起こるの?

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HELLP(ヘルプ)症候群とは、「溶血(Hemolysis)」「肝酵素の上昇(Elevated Liver enzyme)」「血小板の減少(Low Platelet)」の3つの特徴を持つ病気です。

約70%が妊娠中、特に妊娠27~37週に発症し、約30%は出産を終えた直後に起こります(※1,2)。

HELLP(ヘルプ)症候群の発症頻度は全妊婦の約0.2〜0.6%で、それほど多くありませんが、妊娠高血圧症候群全体で約4~12%、重症の妊娠高血圧症候群では約10~20%、子癇(しかん)発作になると約50%の確率で併発します(※1)。

母体と胎児に様々な合併症が起こるリスクがあり、100人に1人の確率で母体死亡のリスクがあるため、早期発見と対応が必要です(※1,2)。

HELLP(ヘルプ)症候群の原因は?診断基準は?

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HELLP(ヘルプ)症候群を発症する原因として、肝動脈に起きる痙攣(けいれん)性の収縮や、血管細胞の障害などが考えられていますが、まだはっきりとわかっていません(※2)。

国際的に統一された診断基準は確立されておらず、一般的には血小板数および血液凝固検査や肝機能検査、血糖値測定などの結果と、患者の症状から総合的に診断されます(※3)。

場合によっては、溶血・肝酵素の上昇・血小板の減少という3つの特徴が揃わないこともありますが、時間が経つにつれて異常が現れることもあるので、HELLP(ヘルプ)症候群に進行する疑いがある場合は、何度か検査を行う必要があります(※3)。

HELLP(ヘルプ)症候群の特徴的な症状のうち1~2つを満たす場合、「partial HELLP症候群」として、慎重に経過を観察していくことになります。

HELLP(ヘルプ)症候群の症状は?

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HELLP(ヘルプ)症候群の初期症状として、お腹の上の方の痛みや疲労感、吐き気・嘔吐などが現れます。体のむくみや発熱が見られることもありますが、これらの症状を単なる風邪や体調不良と判断してしまい、受診が遅れると、重症化してしまう恐れがあるので注意が必要です(※2)。

また、頭痛や視覚障害など、子癇発作の前兆と見られる症状のほか、肝機能障害による黄疸や、血小板減少に伴う出血が現れることもあります(※4)。

これらの症状がひどい、あるいは悪化をしている場合は、1人で我慢せず早めにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。

HELLP(ヘルプ)症候群の治療法は?

手術

原則として、妊娠34週以降で胎児の肺機能が十分成熟していると判断されれば、帝王切開などで分娩を行います(※1)。

妊娠34週未満であっても、基本的には分娩が必要となります。その際は早産児の予後を改善するため、ステロイドを投与して胎児の肺成熟を促すことがあります。

またステロイドには、母体の血小板の減少を一時的に抑えられる効果が見込める可能性があるともいわれています。

ステロイドを投与した後、母体と胎児の状態を慎重に見て、48時間以上が経ってから、分娩を行うかどうか検討します(※1)。

ステロイドの投与によって、HELLP(ヘルプ)症候群が根本的に治るわけではありませんが、母体の症状を一時的に安定させ、赤ちゃんが生まれた際の重い合併症を予防できる可能性があるので、分娩の準備を整えるために行われることがあります(※3)。

HELLP(ヘルプ)症候群の産後は?赤ちゃんへの影響は?

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一般的に、HELLP(ヘルプ)症候群は、分娩を終えると改善していくことが多いですが、産後すぐに肝機能や血小板の数値が正常に戻るとは限りません(※5)。

HELLP(ヘルプ)症候群の予後は、比較的良好とはいえ、母体にさまざまな合併症を引き起こすことがあるので、慎重に管理する必要があります。

たとえば、分娩後に母体が急性腎不全や肺水腫、DIC(播種性血管内凝固)を起こすリスクがあるため、肝・腎機能や血小板数、血液凝固の状態、血圧、尿量、蛋白尿量などを定期的に観察します(※1)。

HELLP症候群が赤ちゃんに直接なんらかの影響を及ぼすかどうかについては、明らかになっていません。しかし、HELLP症候群が起こった時期によっては、赤ちゃんは早産で生まれてくることもあります。

早産児や低出生体重児の場合、新生児呼吸窮迫症候群などさまざまな合併症を引き起こす可能性もあり、生まれてきた赤ちゃんへの対応も大切です(※2,5)。

HELLP(ヘルプ)症候群は早期発見・対処が肝心

診察

HELLP(ヘルプ)症候群は母体や胎児にとって深刻な病気です。しかし、腹痛やだるさ、吐き気などが単なる体調不良だろうと見過ごされてしまうこともあります。

これから出産を控える妊婦さんは、「少しでも異変を感じたら産婦人科医に相談する」ということを忘れないでくださいね。

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