妊娠20週前後になると現れる「胎動」。お腹の赤ちゃんの存在を実感できるとうれしくなりますが、「胎動で性別がわかる」や「胎動が激しいとダウン症や障害があるかもしれない」といったウワサを耳にして気になっている人もいるかもしれません。胎動にまつわるジンクスは本当なのでしょうか?今回は胎動でダウン症などの染色体異常や障害、性別などがわかるのか、本当のところをご説明します。
そもそも、胎動はどうして起こる?

胎動の迷信を検証する前に、まず胎動がどういうものなのかをおさらいしましょう。胎動とは、お腹の赤ちゃんが頭や手足を動かしたときに子宮の壁にぶつかるときの動きを指します。
赤ちゃんが大きくなって体の動きがダイナミックになってくると、子宮壁に触れて胎動が現れます。一般的には18~20週頃ですが、早い人では妊娠16週頃から、ほとんどの人は妊娠22週を過ぎる頃には感じられます(※1)。
「胃や腸で、空気がコポコポと動いている感じ」「お腹がピクピクして痙攣したと思った」など、胎動の感じ方は人それぞれ。最初のうちは赤ちゃんの動きも小さく、力も弱いので、胎動に気づけないことも。
ドラマなどで「わぁ!初めて赤ちゃんが蹴ったわ!」というシーンを見かけますが、実際には最初の胎動はほとんど感じられず、何度目かの胎動で気がつく人が多いようです。
はじめのうちは胎動があまり感じられていなくても、赤ちゃんが成長するにつれてはっきりと感じられますよ。
胎動でダウン症がわかる?胎動が多いと障害があるの?

胎動にまつわるウワサで、「胎動が弱いとダウン症の可能性がある」というものを聞いたことがあるかもしれません。
これは、ダウン症のある子供に「筋力が弱い」という特徴があることから、「ママのお腹の中でも子宮壁にぶつかる力が強くないので、胎動も弱くなるだろう」という発想で生まれたと考えられます。
しかし、これは医学的根拠のない迷信です。ダウン症は、染色体異常によって起こる先天的な病気の一つですが、胎動の強さと染色体異常との関連性は医学的に証明されていません。
つまり、胎動が弱ければダウン症の可能性がある、とはいえませんし、逆に胎動が激しければダウン症がない、ともいえません。
また、「胎動が多いと、多動などの発達障害があるかもしれない」というウワサも耳にしたことがあるかもしれませんが、これも根拠はありません。
なお、ダウン症などの染色体異常があるかどうかについて出生前診断である程度調べることはできますが、それでも生まれるまで100%わかるものではない、ということは覚えておいてくださいね。
胎動で性別がわかるって、本当なの?

胎動には様々な迷信がありますが、特に性別や性格に関するものは多くあります。ただし、どれも医学的な根拠はありません。「胎動が●●だったら男の子」と言われても、すべてを真に受けないでくださいね。
赤ちゃんは、お腹の中でぐるぐる回転しながら手足を動かします。そのため、赤ちゃんの姿勢によって胎動を感じる位置も変わりますし、どこがぶつかるかで感じる強さにも違いがあります。また、激しく動く子もいれば控えめな子もいて様々なのです。
胎動の位置や感じ方は個人差が大きいものなので、強弱だけでどんな子なのかを判断することはできません。他のママから聞いた胎動の感じ方と違っても、「普通じゃないのかも?」と不安になる必要はありませんよ。
それを踏まえたうえで、胎動にまつわる迷信をいくつかご紹介します。どれも医学的な根拠はありませんが、あくまでも家族や妊婦さん同士の話のネタとして読んでみてくださいね。
胎動が激しいと男の子、弱いと女の子?

女の子は胎動が控えめで、男の子は激しいなど、胎動の強さで性別がわかるという迷信もあります。
「女の子を妊娠するとママのお腹周りに脂肪がつく」という迷信と関係していて、お腹周りに脂肪が増えると胎動を感じにくくなるので、胎動が控えめなのは女の子…という発想から生まれた説かもしれません。
「男の子は元気で、女の子はおとなしい」というのも、昔ながらのステレオタイプで、おとなしい男の子もいれば、やんちゃな女の子もいます。その性格は性別によるものではなく個性の一つで、一概に言えないのは当たり前ですね。
ちなみに、「胎動が激しい赤ちゃんは、生まれてからも元気な性格になる」と考える人もいますが、胎動と性格が一致するわけではありませんよ。
妊娠週数が早いうちに胎動があれば男の子、遅いと女の子?

胎動を感じる時期で性別を判断できるという迷信もあります。しかし、胎動をいつ感じるかはタイミングや運も関係しているので、これも信憑性はありません。
また、胎動を感じる時期は、赤ちゃんだけではなくママ側の環境も影響します。たとえば、日中働いていて動き回っている人なら胎動があっても感じにくくなりますし、静かに過ごしていれば弱い胎動でも感じることがあります。
胎動を左で感じれば男の子、右で感じれば女の子?

胎動の位置で性別がわかるといわれることもありますが、これも医学的な根拠はありません。
そもそも胎動は、赤ちゃんの頭や手足がぶつかったときに感じるものなので、男の子だから左側、女の子だから右側になるということは考えられません。
左で胎動を感じるという人は、赤ちゃんの手足や頭が左側に向いていることが多いからかもしれませんね。
臨月に胎動を感じなくなるとお産が近いって本当?

昔から、「臨月になって胎動を感じなくなったらお産が近い」といわれてきましたが、これも医学的な根拠はありません。
たしかに、出産のときが近づくにつれて赤ちゃんは下に降りてきて、頭がママの骨盤におさまって動きづらくなるので胎動を感じにくくなります(※1)。
妊娠37週以降のいわゆる「正期産」の時期は、赤ちゃんの胎動がほとんど感じられない時間が20~75分ほど続きます(※2)。しかし、胎動をまったく感じなくなるということはなく、お産直前でも胎動はあります。
安静にしていてもしばらく胎動がないなど何か違和感があれば、念のため産婦人科を受診しましょう。落ち着いて胎動を感じるために、「胎動カウント」をしてみるのもおすすめですよ。
胎動は赤ちゃんの個性と考えましょう

お腹の赤ちゃんの様子を外から見ることができないので、胎動に関するウワサを聞いて「もしかして…」と気になってしまうこともあるかもしれません。しかし、どれも医学的な根拠はないので、「そういうこともあるのかなぁ」と軽い気持ちで楽しむくらいがちょうどいいかもしれません。
胎動の感じ方と同様に、生まれてくる赤ちゃんの個性も千差万別。胎動があるのは赤ちゃんが元気に動いている証拠なので、声をかけたりお腹をなでたりとコミュニケーションを楽しんでくださいね。