妊婦は動悸・息切れしやすくなる!対策と予防法は?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

妊娠中に、多くの妊婦さんが動悸や息切れを経験するといわれています。そのつらさは人それぞれで、少し違和感がある程度で済む人もいれば、横になってしばらくの間じっとしていないと治まらないほどの人もいます。今回は妊婦さんの動悸や息切れについて、原因と対策、予防法をご説明します。

動悸・息切れとは?

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簡単にいうと、自分の心臓の鼓動をドキドキと強く感じたり、速く感じたりするのが「動悸」、ハアハアと息が切れる、苦しくて息がしづらい状態が「息切れ」です。

どちらも激しい運動をしたあとには感じるものですが、特に大きな動きをしていないのに動悸や息切れがする場合は、何らかの原因で心臓に負荷がかかっていると考えられます。

妊婦の動悸・息切れの原因は?妊娠初期・中期・後期で違う?

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妊娠すると、女性の体には大きな変化が生じます。その変化が動悸・息切れを引き起こすことがありますが、妊娠中の時期によっても主な原因は異なります。

妊娠初期

妊娠するとホルモンバランスが変化します。なかでも、「プロゲステロン」という女性ホルモンが増えることによって、呼吸中枢が刺激され、動悸や息切れを引き起こすことがあります(※1)。

妊娠中期

循環血液量だけでなく、妊娠初期の後半~妊娠中期頃からは心拍数も増えます。また、呼吸1回あたりの換気量も増加するため、動悸・息切れが起こりやすくなります(※2,3)。

さらに、妊娠週数が進むにつれて、体内を循環する血液量(循環血液量)は増加していきます。しかし、赤血球数に比べて血漿量の方がはるかに多くなるため、妊娠中期以降の妊婦さんは貧血になりやすく、それに伴って動悸や息切れが起こりやすくなります(※2,3)。

そのうえ、妊娠中期になると子宮がだんだんと大きくなるため、横隔膜が上に押し上げられ、呼吸がしづらくなってきます。これも動悸や息切れが起こる原因の一つです。

妊娠後期

妊娠後期に入ると、妊娠していないときと比べて循環血液量は約40%増加し、心拍数は約30~60%上がります(※3)。赤ちゃんの成長に伴い、胎児に酸素や栄養を運ぶ働きもますます促進されます。

特に臨月は、胎児や胎盤、子宮、羊水などの重さにより妊娠前と比べて体重が大きく増加し、全身に血液を送り出す心臓への負担も大きくなるため、最も動悸・息切れに悩まされやすい時期です(※4)。

このほか、時期を問わず妊娠中は出産・育児などに対する不安やストレスを感じやすいので、精神的な負荷によって動悸や息切れを感じることもあります。

いずれにしても、少し休んで症状が治まるようであれば、大きな心配はいりません。

妊婦の動悸・息切れ対策は?

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動悸や息切れを感じたときは、まず休むことが大切です。ゆっくりできるスペースを見つけて、次のような対策を試してみてくださいね(※5)。

座ってしばらく休む

通勤電車や人ごみのなかで動悸、息切れが激しくなることもあります。まずは人の少ないところに移動して、駅のホームにあるベンチなどに腰かけましょう。

足を高くして横になる

「足を上げて寝る」という姿勢は、むくみ防止だけでなく動悸や息切れの対処法としても有効です。

まくらやクッションなどを足の下に敷き、足を高くするような姿勢で寝てみましょう。心臓に送られてくる血液の流れがスムーズになり、呼吸が楽になります。

体の左側を下にして横になる

体の左側を下にした「シムス体位」で寝ると、子宮周辺の血液への圧迫が減り、血液循環が良くなるので、心臓への負担が軽減されます。

妊娠週数が進み、おなかの重みで仰向けに寝ることができなくなってきた時期にもおすすめの寝方です。

妊婦の動悸や息切れを予防するには?

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多くの場合、妊娠中の動悸・息切れは生理的なものなので、ある程度は仕方ありません。しかし、予防できるに越したことはないですよね。

ここでは、普段の生活の中で心がけたい予防法をいくつかご紹介します。

食生活を改善する

貧血が動悸・息切れの原因になることも多いので、栄養バランスに気をつけて、鉄分が不足しないようにしましょう。貧血対策には、パセリや小松菜、ほうれん草、納豆などがおすすめです。

鉄分は、豆腐やレモン、ブロッコリーなどに含まれる、ビタミンCやタンパク質と一緒に摂取すると吸収率がアップしますよ。

なお、レバーも鉄分が豊富ですが、ビタミンAも多く含んでいるので、妊娠中は摂りすぎないように注意が必要です(※4)。

足湯で温まる

ぬるま湯で血行が良くなると、心臓への負担が減ります。特に冷え性の自覚がある人は、足湯やルームソックスなどで足元を温める習慣をつけましょう。

また、血液の循環が良くなるだけでなく、妊娠中のストレス緩和にも効果が期待できますよ。湯船で全身を温める場合には、長くつかりすぎないように注意してくださいね。

リラックスを心がける

妊娠中は、お腹の赤ちゃんの健康やお産の痛み、産後の育児のことなど、あれこれ考えて不安になってしまうこともあるかもしれません。

そんなときは、深呼吸したり好きな音楽を聴いたりすることで心を落ち着かせましょう。また、妊娠中はできるだけゆったりとした動作を心がけてくださいね。

妊娠中に動悸・息切れ以外の症状も出たら?

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先述のとおり、妊娠中の動悸や息切れはよくあることですが、ごくまれに合併症の兆候であることもあるので、注意が必要です。

たとえば、それまで心臓に異常がなかった女性でも、妊娠によって突然心機能が低下し、心不全を発症する「周産期心筋症」にかかることがあります(※6)。

安静にしても動悸や息切れが治まらないだけでなく、倦怠感(だるさ)、全身のむくみ、咳などほかの症状も見られたときには、できるだけ早く産婦人科を受診してください。

妊婦さんは、動悸や息切れだけなら心配しすぎないで

妊娠中に動悸や息切れが起こると、苦しいうえに不安になってしまいますが、少し休んで症状が治まるようであれば、心配しすぎる必要はありません。対策や予防法をうまく取り入れて、できるだけ落ち着いたマタニティライフを送れるといいですね。

ほかに気になる症状があるときは、かかりつけの産婦人科医に相談してみましょう。

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