個人差はありますが、妊娠中期~後期になると「お腹の張り」を感じることが増えます。安静にしていて治まれば、生理的な現象としてのお腹の張りなので基本的に心配はいりません。しかし稀に、トラブルにつながるお腹の張りであるケースも。
そこで今回は、妊娠中期〜後期のお腹の張りの原因や対処法、注意したいケースの見分け方を紹介します。
妊娠中のお腹の張りとは?
子宮は筋肉でできていて普段は柔らかい状態です。しかし、何らかの刺激を受けたり、お産に向けて子宮が準備を始めたりすると、子宮の筋肉がキュッと収縮して硬くなります。これが、いわゆる「お腹の張り」です。
お腹が張る感覚は、個人差が大きいといわれています。指の腹でお腹を触ると子宮が硬くなっているのがわかり、「スイカのように硬い」と感じる人もいれば、胎動が激しくなるとお腹が張ったように感じる人もいるようです。
一方で、自分では気がつかず、妊婦健診で医師から「張っている」と指摘されてわかる人もいます。
妊娠中期〜後期にお腹が張る原因は?
お腹が張る原因は、妊娠中期(5〜7ヶ月)、妊娠後期(8・9ヶ月)、臨月でそれぞれ異なります。
妊娠中期(5〜7ヶ月)のお腹の張りの原因
お腹が張ることは少ない時期ですが、動きまわったり疲労が溜まったりすると、張りやすくなります。また、「切迫早産」の症状としてお腹が張ることがあります。
切迫早産によるお腹の張りについては注意が必要なため、後ほど詳しく説明します。
妊娠後期(8・9ヶ月)
妊娠8ヶ月に入ると、お腹のなかの赤ちゃんはどんどん成長し、羊水の量がピークを迎えます(※1)。その影響で子宮はますます大きくなり、お腹の張りを感じやすくなります。
臨月(妊娠10ヶ月)
臨月になると、体が出産に向けて準備を始めて子宮収縮が頻繁に起きるため、お腹の張りをより感じるようになります。さらに出産が迫ってくると、不規則なお腹の張りに軽度の痛みが伴う「前駆陣痛」が起こりやすくなります。
なお、規則的に痛みを伴うお腹の張りが起こり、張りを感じる間隔が10分以内と短くなってくる場合は、お産につながる「本陣痛」の可能性もあります。
「本陣痛かな?」と思ったら、かかりつけの産婦人科に連絡しましょう。
妊娠中期〜後期のお腹の張りの対処法は?
お腹の張りは、安静にして休めば落ち着くことがほとんどです。自宅や実家などにいる場合は、横になりましょう。体の左側を下にした「シムスの体位」を取るとリラックスできるのでおすすめですよ。
外出先や職場でお腹が張ったときは、座って安静にしてくださいね。
ただし、しばらく休んでも張りがずっと続く、張りと一緒に他の症状も出ているといった場合は、次に説明するような注意が必要なケースの可能性もあります。
妊娠中期〜後期のお腹の張りで注意が必要なケースとは?
お腹の張りとともに痛みや出血が現れた場合は、以下のような状態になっている可能性が考えられます。
切迫早産
切迫早産とは、妊娠22週0日~36週6日の間に早産となるリスクが高くなっている、早産の一歩手前の状態をいいます。規則的な子宮収縮が起こることによってお腹の張りを感じます(※2)。
安静にしていてもお腹の張りが規則的に続いたり、不正出血が起きたりした場合は、産婦人科に連絡しましょう。
その際、「お腹が張り始めた時期」「痛みの有無と強さ」「張りの頻度や間隔」「出血・胎動の有無」などを伝えると、切迫早産かどうかの診断がスムーズです。
常位胎盤早期剥離
赤ちゃんに酸素や栄養を送っている胎盤が、何らかの理由で剥がれてしまう疾患で、全妊婦さんの1%前後に起こります(※1)。
発症初期の段階では、軽いお腹の張り、腰痛、少量の不正出血などが見られます。重症になると、お腹は板のように硬く張り、動けないほどの急激な下腹部痛が起こります。出血は、ある場合とない場合があります。
常位胎盤早期剥離が起こってるとわかった場合、基本的には緊急帝王切開が必要になります。放置しておくとお腹の赤ちゃんの命にかかわるため、異変を感じたらすぐに産婦人科に連絡し受診しましょう。
お腹の張りが心配なときは病院に連絡を
妊娠中期から後期にかけてのお腹の張りは、お腹が大きくなるにつれて起きやすいことなのであまり心配はいりませんが、お腹の張りを感じたらできるだけ安静にして、張りが治るのを待ちましょう。
お腹の張りとともに痛みや出血の症状が現れた場合や、いつもと違う張りを感じた場合は、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡をしてくださいね。