妊婦が鉄剤を飲む効果と副作用は?貧血薬に頼らない方法は?

監修医師 産婦人科医 浅川 恭行
浅川 恭行 1993年東邦大学医学部卒業。2001年同大学院医学研究科卒業後、東邦大学医学部助手、東邦大学医療センター大橋病院講師を経て、2010年より医療法人晧慈会浅川産婦人科へ。東邦大学医療センター大橋病院客... 監修記事一覧へ

多くの妊婦さんを悩ませる貧血。妊婦健診で貧血と診断されると、症状によっては鉄剤という薬が処方されることがあります。貧血は悪化してしまうと、妊婦さんだけでなく赤ちゃんにも影響が出ることがあるので、早めに治したいと思う一方で、妊娠中の薬の服用に抵抗を感じる人もいるのではないでしょうか。今回は妊娠中に服用する鉄剤の効果や副作用、鉄剤以外での鉄分補給方法などをご紹介します。

妊婦は貧血になりやすいの?

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妊娠すると、摂取した栄養素はお腹の中の赤ちゃんに送られ、発育のために使われます。鉄分も赤ちゃんに送られる栄養素のひとつであり、意識的に摂取しないと鉄分が不足し、貧血になってしまいます(※1)。

妊娠初期はつわりで食べ物が食べられなくなることが多く、栄養が不足して貧血になりやすい時期なので注意が必要です。

妊婦の貧血に使われる鉄剤の効果は?副作用は?

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厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1日に推奨されている鉄の摂取量は18〜49歳の女性で6.5mgです。

この量に対して、妊娠初期は+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mgの摂取が推奨されています。中期以降は非妊娠時2倍以上の鉄が必要とされているのです(※2)。

普段の食事では必要な分の鉄分が不足していると医師が判断した場合、鉄剤が処方されることがあります。鉄剤は、貧血などに用いられる鉄分を補給するための薬です。

妊娠中に処方される鉄剤の代表的なもには、「フェロミア」や「フェロ・グラデュメット」などがあります(※3)。どちらも妊娠中に服用しても安全とされていますが、主な副作用として、便秘や嘔吐、下痢などが挙げられます(※4,5)。

鉄剤を服用すると、体で吸収しきれなかった鉄分が便として排出されるため、便が黒く固くなり、便秘になることがあるのです。鉄剤の服用により便秘が起こった場合は、しっかり水分補給を行うか、医師に下剤を処方してもらい対処します。

嘔吐は、鉄剤の種類を変えると治まることがあるので、医師に相談してみましょう。

副作用が非常に強い場合や、内服薬では十分に吸収できないと判断された場合は、鉄分補給のために注射が使用されます(※6)。その場合、定期的に病院に通って注射を打ってもらう必要があります。

妊婦が鉄剤を服用すると問題があるの?

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赤ちゃんへの影響を心配して、妊娠中に薬を飲むことに抵抗を感じる人もいるかもしれません。

しかし、産婦人科の医師が鉄剤を処方したということは、「鉄剤を使用した方がリスクを減らせる」と判断したということなので、自己判断で鉄剤の服用を中止するのは控えるようにしましょう。

処方された鉄剤の服用を勝手にやめて、貧血がひどくなってしまうと、赤ちゃんに十分な酸素や鉄分を届けられず、早産や胎児発育不全になる恐れがあります。

妊娠中に薬を服用することに不安や疑問を感じるときは、遠慮せず医師に相談してみましょう。自分が納得できる形で妊娠中の貧血対策法を見つけることが大切です。

妊婦が鉄剤の使用以外でできる貧血対策は?

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妊娠中の貧血対策法として、鉄剤の使用以外にも、食べ物を通しての鉄分補給があります。鉄分が不足しがちな妊娠中は、鉄分を豊富に含んだ食べ物を積極的に摂取していきましょう。

鉄分を豊富に含んだ食べ物(※7)

● 魚介・海藻類…ひじき、さんま、あさり
● 豆類…大豆、いんげん豆、納豆
● 緑黄色野菜…小松菜、菜の花

鉄分と共に、ビタミンCやたんぱく質も摂取すると、鉄分の吸収がよくなります(※6)。ビタミンCを豊富に含んだレモンやピーマン、たんぱく質を豊富に含んだ乳製品や卵、銅を豊富に含んだしゃこや桜エビを意識的に食べるようにするのもいいですね。

豚レバーや鶏レバーも鉄分を多く含む代表的な食品ですが、妊娠中は控えるようにしましょう。レバーには、レチノールと呼ばれるビタミンAが含まれていて、妊娠中に過剰摂取すると、胎児が奇形・先天異常などの障害を持って生まれてくる可能性が高まるといわれています(※8)。

胎児の成長をサポートする葉酸も貧血対策に効果的です。また、睡眠をしっかりとって、規則正しい生活を送ることも貧血予防につながるので、生活習慣を見直すことも大切ですよ。

鉄剤と上手に付き合って妊娠中の貧血を乗り越えよう

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妊娠中の貧血を防ぐためには、しっかりと鉄分を摂ることが大切ですが、食べ物だけで推奨量を摂取するのは難しいかもしれません。また、偏った食事になってしまっても、体重が増えてしまったり、栄養が偏ったりする恐れもあります。

医師から鉄剤を処方されたときは、用法・用量を守って正しく飲むようにしてください。

胎児への鉄剤の影響が心配なときは、医師や薬剤師に相談し、薬の効果やリスクについてきちんと説明してもらいましょう。また、副作用が強いときも医師にきちんと伝え、対処してもらうことが大切です。

妊娠中の貧血対策のために、赤ちゃんと自分のためにできることを実践して、健康的なマタニティライフを送れるといいですね。

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