妊婦は刺身や寿司を食べてもいいの?妊娠中は生魚に注意!

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

妊娠すると、お腹の中の赤ちゃんに影響がある食べ物について知っておきたいですよね。特に、生ものである刺身や寿司は、妊娠中に食べてもいいのか気になるのではないでしょうか。

そこで今回は、妊娠中に刺身や寿司を食べてもいいのか、妊婦が生魚を控えたほうがいい理由、刺身や寿司を食べるときの注意点についてご紹介します。

妊婦は刺身や寿司を食べてもいいの?

刺身 グッズ

妊娠中に刺身や寿司を食べることは禁止されていません。

魚は良質なたんぱく質やカルシウム、DHAなどを豊富に含んでいるので、妊娠中の食事に欠かせない食材のひとつです(※1)。

ただし妊娠中に刺身や寿司を食べるときは、以下のような理由から食べる量や頻度を控えたほうがいいとされています。

食中毒を発症するおそれがある

生の魚介類や魚介類加工品(スモークサーモンなど)には、食中毒を引き起こす腸炎ビブリオやリステリアといった細菌が生息していることがあります(※2,3)。

妊娠中は免疫力が低下していることから、妊娠前に食べても問題のなかった食材でも食中毒にかかるリスクが高くなりやすいです。

妊婦さんが食中毒になった場合、嘔吐や下痢によって脱水症状がひどくなると、母体やお腹の赤ちゃんに影響が出る可能性もあります。

特にリステリア菌は妊娠中に感染しやすく、厚生労働省が流産や生まれた赤ちゃんへの影響のリスクを指摘しています(※4)。

メチル水銀を摂取してしまうおそれがある

刺身や寿司で食べることが多いマグロや金目鯛といった魚には、食物連鎖によって自然界に存在する「メチル水銀」という物質が多く含まれています(※1)。

妊娠中にメチル水銀を含む魚をたくさん食べてしまうと、赤ちゃんの発育に影響を及ぼすおそれがあります(※1)。

次に紹介する魚はメチル水銀を多く含むため、妊娠中は食べる量や頻度に注意してください(※1)。

  • メカジキ
  • 本マグロ(クロマグロ)
  • メバチマグロ
  • インドマグロ
  • 金目鯛
  • キダイ
  • マカジキ
  • クロムツ など

ただし、全ての魚に多量のメチル水銀が含まれるわけではありません。以下のような魚は含有量が少ないことがわかっています(※1)。

  • アジ
  • サケ
  • サバ
  • イワシ
  • サンマ
  • タイ
  • ブリ
  • カツオ
  • キハダ
  • ツナ缶 など

妊娠中は生魚をどれくらい食べていいの?

グッズ 寿司

妊娠中にメチル水銀を多く含む魚の刺身や寿司を食べるときは、厚生労働省が注意喚起している1週間の摂取上限量を守ってください。

メチル水銀を多く含む魚の摂取上限量の例(※1)

  • 本マグロ(クロマグロ)…1週間に約80gまで
  • メバチマグロ…1週間に約80gまで
  • インドマグロ…1週間に約160gまで
  • 金目鯛…1週間に約80gまで

約80gは、刺身1人前または切身1切れ程度の量です。

赤ちゃんに悪影響を及ぼすのは、摂取上限量を超えて食べ続けた場合なので、1週間に1回、1人前のマグロや金目鯛を食べるくらいであれば問題はありません。

メチル水銀の含有量が少ない魚の妊娠中の摂取量については、オーストラリアでは1週間に300〜450g、韓国では1週間に400g以下と推奨されています(※5)。

ただし、どんな種類の魚であっても妊娠中に刺身や寿司など生で食べるときは、食中毒のリスクを考えて、新鮮なものを少量だけ食べるようにしてください。

妊娠初期は刺身や寿司を食べてはいけないの?

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妊娠初期は流産が起こる確率が高いため、食べたものによって流産しやすくなったり、母体や赤ちゃんに影響を及ぼしたりするのではと心配になるかもしれません。

流産の約80%が妊娠12週までに起こりますが、原因のほとんどは赤ちゃんの染色体異常によるものです(※6)。

妊娠初期の食事が影響して流産の確率が上がるわけではありません。

ただし、刺身や寿司を食べてリステリア菌による食中毒にかかってしまうと、流産につながる可能性が高くなります。

リステリア菌に感染するリスクを避けるためには、妊娠初期は刺身や寿司を食べるのを控えた方が安心です。

妊娠中に生魚を食べるときの注意点は?

グッズ 調理器具 料理

妊娠中に飲食店で刺身や寿司を食べるときは、信頼できるお店を選び、食べすぎないことが大切です。

スーパーや魚屋などで刺身や寿司を買うときは保冷剤を添えてもらい、帰宅後はすぐに冷蔵庫で保存して早めに食べ切ってください。

夏場は温度や湿度が高く食中毒が起こりやすいため、妊婦さんは生魚は食べないほうが安心です。

魚による食中毒を確実に防ぐためには、刺身や寿司ではなく焼き魚やムニエル、蒸し焼きなどしっかり火を通す調理法で食べるようにしましょう。

妊娠中は刺身や寿司の食べすぎに気をつけよう

妊婦さんが刺身や寿司を食べることについては、産婦人科の医師によってもさまざまな見解があります。食中毒やメチル水銀の過剰摂取のリスクが伴うことをしっかり理解したうえで、食べる場合は量や種類、鮮度などに十分に気をつけましょう。

赤ちゃんが生まれたら、また刺身や寿司を好きなだけ食べられるようになります。妊娠中は何かと我慢することが多くストレスが溜まるかもしれませんが、自分なりのリフレッシュ法を見つけながら過ごしていけるといいですね。

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