妊娠中は眠りが浅くなったり、寝つきが悪くなったりと睡眠トラブルに悩まされる方が多くいます。特に妊娠中期から後期にかけてお腹が大きくなってくると、寝苦しい日が増えてきます。そんな妊婦さんにおすすめの寝方が「シムス体位」。妊娠中の寝苦しさをやわらげてくれますよ。今回はシムス体位とはどんな寝方なのか、楽な体勢の取り方や気をつけるべきポイントなどをご説明します。
妊娠中に寝つきが悪くなるのはなぜ?

妊娠して寝付きが悪くなる妊婦さんはたくさんいます。妊娠初期にホルモンバランスが変化したことで自律神経などが不安定になり、妊娠・出産に対する不安なども重なって寝つきが悪くなる人もいますが、多くは妊娠後期に入る前後から増えます。
これはホルモンバランスの乱れに加えて、大きくなったお腹が眠りの邪魔をしているから。寝返りをうちにくくなったり、お腹に圧迫されたりして寝つけなくなるのです。妊娠後期に大きなお腹が邪魔して眠れないときは、寝方を工夫するだけで改善することもありますよ。
妊婦におすすめの寝方!シムス体位とは?

妊娠中期から後期にかけてお腹が大きくなってきた妊婦さんにおすすめの寝方が「シムス体位」です。19世紀のアメリカで産婦人科医J・マリオン・シムズが提唱した姿勢で、正式には「Sim’s position」と呼ばれ、「シムスの姿勢」と呼ばれることもあります。
シムス体位では、体の左側を下にして、横向きに寝ます。元々は直腸検査をするときや昏睡状態の人の気道を確保するときに用いられたリラックスの姿勢ですが、妊婦さんの体にも有効だとわかり、応用されるようになりました。
妊娠中期以降は胎児や羊水の重みで子宮周辺の血管が圧迫されて血流が滞り、低血圧やめまいを引き起こす危険性がありますが、シムス体位をとることで血液の循環がよくなってリラックスできる効果があります。
妊娠中のシムス体位の取り方は?

シムス体位をとるときは、左側を下にして横になり、以下の姿勢を心がけましょう。
- 下にある左足は真っ直ぐ伸ばす
- 右足は足の付け根から曲げて、膝も曲げた状態にし、曲げた膝はベッドの上に置く
- お腹に負担が掛からない程度に少しうつ伏せ気味に体をかぶせる
これが、シムスの基本の姿勢です。体の下にくる左腕を背中側に回す体勢をとることもあります。この姿勢がつらいときは、布団や枕、クッションなどを使って調整しましょう。抱き枕を抱きかかえるようにすると体勢が安定しやすくなります。掛け布団を下に敷いてみるのもおすすめです。
妊婦は横向きの姿勢が楽なの?仰向けに寝てはダメ?

お腹が大きくなってくると、横向きになっているほうが重みを感じにくくなります。胎児の背中がある方を下にすると楽に感じるので、自分が楽と感じる方向を向いて寝るようにしましょう。
また、妊娠後期になると仰向けはよくないと聞いたことがある人もいるかもしれませんが、自分自身が苦しいと感じなければ、妊娠後期に仰向けで寝ても構いません。
しかし、仰向けで寝た場合は、子宮が背骨の右側にある下大静脈を圧迫し、低血圧を起こすことで、「仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)」になる恐れがあります。動悸や息苦しさで熟睡できないと感じたら、横向きになるなど姿勢を変えてみてください。
妊娠中は自分が楽だと感じる寝方をするのが一番ですが、仰向けで寝ていて寝起きにお腹が張っていたら子宮が内臓を圧迫しているかもしれません。その場合は無理せずにシムス体位をとりましょう。
妊娠中は自分が楽な寝方・姿勢を見つけよう
妊娠中はたくさんの制限がありますが、寝方まで制限されるのは辛いですよね。しかし基本的に、自分が楽に感じられる姿勢が一番いいので、まずはおさまりのいい姿勢を探しましょう。お腹が大きくなるにつれて楽な姿勢も変わってくるので、その都度自分にあった寝方を探すことが大切です。
出産が終われば自由な姿勢で寝られるようになります。妊娠中は赤ちゃんと一つの体で寝ていられる貴重な時間だと前向きにとらえ、自分らしい寝方で快適な睡眠を手に入れましょう。