子癇前症とは?原因や症状、治療法は?予防するには?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

妊娠中に現れることがある特有の症状の一つに、「子癇前症(しかんぜんしょう)」があります。重症化すると、母体・胎児ともに危険を及ぼす恐れがあるので、適切な対処と治療を行うことが必要です。今回は、子癇前症の原因や症状、治療法のほか、予防のために心がけたいことをご説明します。

子癇前症とは?

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まず「子癇(しかん)」とは、妊娠20週以降にはじめて発症するけいれん発作のことです(※1)。頭痛や目のかすみ、みぞおちの痛みなどに続いて痙攣が起き、重症の場合は呼吸困難や昏睡状態に陥ることもある病気です。

この子癇になる一歩手前の症状を、「子癇前症」と呼ぶことがあります。日本産科婦人科学会の定義によると、いわゆる子癇前症は「妊娠高血圧症候群」の合併症の一つに含められています(※1)。

妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に見られる高血圧や蛋白尿などの症状の総称で、約7〜10%の妊婦さんに発症し、重症化すると母子ともに危険にさらされる恐れがあります(※2)。

子癇前症の原因は?なりやすい人は?

なぜ why 原因

子癇前症や子癇が発症する原因はまだはっきりしていませんが、次の条件にあてはまる人は発症リスクが高いと考えられています(※3)。

● 妊娠高血圧症候群
● 10代の妊娠
● はじめての出産(初産婦)
● 多胎妊娠(双子など)
● 子癇を発症したことがある
● HELLP(ヘルプ)症候群

なお、「40歳以上である」「肥満傾向にある」「糖尿病や高血圧である」という人は、妊娠高血圧症候群を発症するリスクが高いので、あわせて注意する必要があります(※3)。

子癇前症の症状は?

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子癇前症、つまり子癇が現れる前の症状として、次のようなものが挙げられます(※3)。妊娠中、少しでも違和感があれば、早めにかかりつけの産婦人科を受診するようにしましょう。

● 妊娠高血圧腎症(高血圧、蛋白尿)
● 頭痛(特に後頭部の痛み)
● 吐き気、嘔吐
● 目のかすみ、チカチカ
● お腹の上の方の痛み

これらの症状が現れたあと、子癇発作を起こすと、顔面蒼白となり、口元からけいれんが始まります。

子癇前症の治療法は?

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先述のような子癇前症の症状が見られた場合、妊婦さんの臓器障害や子癇発作を防止し、妊娠を継続させるための対症療法がとられます。

子癇前症になったら、基本的にすぐに入院が必要です。まずは、子癇の引き金となりうる強い光や大きな音などの刺激を遮断し、穏やかに過ごします。

また、高血圧性脳症や脳出血を予防するための降圧薬や、子癇発作を防ぐための硫酸マグネシウム(MgSO4)を投与することもあります。

根本的な治療法は妊娠を終了することであり、胎児の成熟の程度と母体の重症度を十分に考えて、出産のタイミングを決めていきます。

子癇前症にならないための予防法は?

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子癇前症は妊娠高血圧症候群の合併症の一つです。妊娠高血圧症候群の原因ははっきりとわかっていないので、確実に予防することはできませんが、肥満や高血圧がリスク因子と考えられているので、普段から健康的な生活を心がけましょう。

過労に注意する

妊娠中とはいえ、仕事や家事を休めない人もいると思います。しかし、妊婦さんは免疫力が下がっていて、いつもより疲れやすくなっていることもあり、いつもの調子で頑張っていると、知らないうちにオーバーワークになっていることもあります。疲れを感じたらゆっくり休んでくださいね。

バランスのよい食生活を心がける

塩分や油分、糖分の摂り過ぎは、過度な体重増加や高血圧を招きます。炭水化物、タンパク質、ビタミン類などをバランスよく摂りましょう。特に、レトルト食品やスナック菓子の食べ過ぎなどには注意が必要ですね。

適度に運動する

妊娠中は体を動かしづらいですが、ウォーキングやストレッチなどで適度に体を動かし、運動不足を解消しましょう。

ただし、お腹の張りなど気になる症状があれば、妊婦健診などで産婦人科の医師や助産師に相談してくださいね。

子癇前症に限らず、異変を感じたら早めに産婦人科へ

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子癇は、母子ともに命に危険が及ぶ恐れがあり、場合によっては緊急帝王切開などを行う必要があります。その手前にある子癇前症の段階で適切な対処をするために、妊婦健診で妊娠高血圧症候群と診断されている人は特に、体調管理に気をつけましょう。異変を感じたら無理に我慢しようとせず、かかりつけの産婦人科をすぐ受診するようにしてくださいね。

ただし、子癇発作を起こす妊婦さんの約10%は、発症前に高血圧を指摘されていないことがわかっています(※3)。つまり、誰でも子癇を発症する可能性はあるので、子癇前症の症状が見られた段階で病院に連れていってもらえるよう、家族にも話しておきましょう。

また、子癇発作の1/3は産後に起きているというデータもあります(※4)。無事に出産したあとも子癇前症には十分な注意が必要です。頭痛など気になる症状があれば、育児疲れと簡単に片づけず、かかりつけの医師に相談するようにしましょう。

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