妊娠中に胃もたれや胸焼けが現れるのは、つわりがひどい妊娠初期だとばかり思っていませんか?実は妊娠後期も、胃がもたれやすく、胃液があがってきて胸がムカムカすることがよくあります。お腹が大きくなってきて行動が制限されている中で、胃もたれや胸焼けで食欲もなくなると、毎日ストレスが溜まってしまいますよね。今回は妊娠後期に胃もたれ・胸焼けが起きやすい原因と解消法、薬は飲めるのかなどをご説明します。
妊娠後期に現れる胃もたれ・胸焼けは、どんな症状?
安定期に入るとつわりが治まり、胃もたれ・胸焼けから解放される人は多いと思いますが、妊娠後期(8ヶ月〜)に入る頃から再び胃に不調を感じるようになります。
胃がムカムカする感じがあれば、胃もたれ・胸焼けかもしれませんよ。ムカムカ感は空腹時に現れる人もいれば、食後、食事のタイミングに関係なく現れる人もいて、程度や頻度には個人差があります。妊娠初期のつわりによる胃もたれ・胸焼けと同じように、揚げ物やご飯など、吐き気を催す食べ物も人それぞれです。
吐き気だけでなく実際に吐いてしまう人もいますし、胃液があがってきたり、食道や喉が胃酸で傷んで胸やけが長引いたりするケースも。あまりに症状がひどくなると食事ができなくなって点滴での栄養補給が必要になることがあります。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けの原因は?
つわりがなくなったのに、どうして胃もたれ・胸焼けになるの?と疑問に思うかもしれません。その原因は、主に胎児の成長にあります。
胎児が大きくなって、子宮内の羊水の量も増えると、子宮全体が大きくなります。すると子宮の周りにあった胃や腸が圧迫されて働きが鈍くなり、胃もたれを起こすように。また胃が持ち上げられることで胃液が食道に逆流しやすくなり、強い酸で胃の粘膜が荒らされて胸焼けが起こります。
こうして子宮が大きくなることで現れる消化器系のトラブルを総称して、「後期つわり」と呼ぶこともあります。出産が近づいてきて胎児が子宮の下の方に降りてくると、胃への圧迫がなくなって、胃もたれや胸焼けがなくなります。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けの解消法は?
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けは薬に頼るのではなく、日頃の生活を見直して改善しましょう。妊娠後期に入ってからの胃の不調は、赤ちゃんが成長している証でもあるので、前向きに考えて乗り切れるといいですね。
消化のいいものを食べる
胃もたれがひどいときは、うどん・おかゆなど消化がよくて飲み込みやすいものを食べるようにしましょう。少し甘みや酸味がほしければヨーグルトやゼリー、バナナなどもおすすめです。
胃が荒れているので、揚げ物や脂身の多い肉、香辛料などの刺激物は避け、煮魚などのヘルシーな魚料理を食べるようにしたいですね。野菜を食べるときはサラダなど生の状態ではなく、煮たり蒸したりして消化しやすい状態に調理すると胃の負担が軽くなりますよ。
1回の食事量を減らし、回数を増やす
妊娠後期の胃が圧迫されている状態で一度にたくさんの量の食事をとってしまうと、気持ちが悪くなります。
だからといって食事量を減らしても、空腹中は胃酸がたくさん出るので、胃もたれや胸焼けを起こしやすくなりますし、1日の摂取カロリーを減らすと、母子ともに栄養不足になってしまう可能性があります。
食事のたびに気持ちが悪くなるようであれば、1回の食事の量は減らし、そのぶん回数を増やすようにしましょう。5回くらいに分けるとちょうどよくなりますよ。
体重増加につながるので甘いものは控え、あくまでも「食事を5回にわける」と意識してくださいね。
寝るときの姿勢を工夫する
寝ている間に胃酸が食道に上がってくるのを防ぐために、枕を高めにして寝るようにします。おなかが大きくなってくる妊娠後期は仰向けで寝るのがつらくなるので、横向きになって寝ると眠りにつきやすくなりますよ。
また、食後はすぐに横にならず、上体を軽く起こした姿勢(セミファーラー位)で過ごしましょう。胃もたれや胸焼けによる気持ち悪さを予防することができます。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けは薬を飲んでもいい?
胃薬は胃の粘膜を保護したり、胃酸の過剰分泌を抑えることで妊娠後期の胃もたれ・胸焼けをやわらげてはくれますが、自己判断で市販薬は飲まない方が良いでしょう。
胃薬に含まれている成分は、比較的作用が緩やかなものでも妊娠中の服用に関しては安全性が確立されていないものも多く、製造元が妊娠中の使用を控えることを推奨しているケースも多くあります。胃薬を使いたいときは、使用前には必ずかかりつけの産婦人科医に相談しましょう。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けは病気の可能性もある?
妊娠後期に現れる胃もたれ・胸焼けは、ほとんどが大きくなった子宮のせいで起きています。しかし、人によっては病気が原因で現れている症状かもしれません。以下の病気の症状として胃もたれ・胸焼け、吐き気を催すことがあるので、注意してください。
妊娠高血圧症候群
妊娠をきっかけに高血圧になる病気ですが、血圧が上がるのに伴って頭痛やめまい、倦怠感などが現れます。HELLP症候群と関連して、嘔吐や吐き気が現れることもあります。
妊娠高血圧症候群の場合、自覚症状として「むくみ」が現れやすいので、血圧の変化と同様に注意して見るようにしましょう。
HELLP症候群
妊娠中や分娩時に起こる疾患で、溶血と肝機能障害、血小板減少という3つを合併します。最悪の場合はママや赤ちゃんに命の危険が及ぶ危険な病気です。妊娠高血圧症候群や多胎妊娠の際に起こりやすいとされています。
この兆候として、腹痛や疲労感のほか、胃もたれや胸焼けに似た症状、右上腹部やみぞおちの痛みなどが現れます。むくみや尿蛋白が初期症状として現れることがあるので、胃もたれ・胸焼け以外の症状が見られたときは早めに病院に相談しましょう。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けは赤ちゃんの成長の証
妊娠後期にも見られる胃もたれ・胸焼け。妊娠中は消化器系のトラブルが多く、食事もままならずにつらく感じることもあります。
しかし、妊娠後期の場合は、出産が近づくほどに胎児が子宮の下に降りてきて、ある程度解消される可能性があります。
胃もたれが現れるのは、胎児が成長して子宮が大きくなっている証でもあります。出産まであともう少しなので、日頃の食生活や生活を見直して、胃もたれ・胸焼けと上手に付き合っていけるといいですね。