帝王切開の術後の痛みはいつまで続く?骨盤ベルトはいつから使える?

監修医師 産婦人科医 渡邉 京子
渡邉 京子 産婦人科専門医。長門クリニック勤務。女性特有の月経や更年期にまつわる悩みの助けとなること、また、妊娠出産期を安心安全に過ごすお手伝いすること、を念頭に置いて日々診療しています。 監修記事一覧へ

日本における帝王切開での出産件数は年々増加しており、厚生労働省のデータによると、今では赤ちゃんの約5人に1人が帝王切開で生まれています(※1)。しかし、帝王切開の術後の様子について話を聞ける機会があまりなく、気になっている人も多いかもしれませんね。そこで今回は、帝王切開後の過ごし方について、術後の痛みはいつまで続くのか、骨盤ベルトを使ってもいいのかなどをご説明します。

帝王切開の術後の過ごし方は?

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帝王切開をした当日は、ママは酸素供給のマスクや水分補給用の点滴、尿道カテーテルなどを付けた状態で、できるだけ横になったまま安静に過ごします。

術後の痛みがある場合は、医師が鎮痛剤を処方してくれることもあります。また、術後の感染予防の目的で抗菌薬が処方されることもあります(※2)。

経腟分娩(自然分娩)なら産後5日前後で退院となりますが、帝王切開の場合は傷口や痛みが落ち着くまで様子を見る必要があるため、退院までに7日前後かかります(※2)。

帝王切開の術後、痛みはいつまで続く?

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帝王切開後にママが感じる主な痛みは、「後陣痛」と「傷口の痛み」です。どちらも感じ方には個人差がありますが、術後3日目頃には落ち着くことが多いものです。

後陣痛とは?

後陣痛は、妊娠で大きくなった子宮が、産後に収縮し、元の大きさに戻っていくときに起こる痛みです。これは、帝王切開と自然分娩、どちらで出産したママにも共通する痛みで、産後2~3日は続きます(※2)。

母乳を出す作用があるオキシトシンというホルモンには、後陣痛を促進する作用もあります。そのため、オキシトシンが多く分泌される授乳の最中には、さらに後陣痛が強くなります。

傷口の痛みとは?

帝王切開の手術中は麻酔が効いているため、ほとんど痛みを感じませんが、術後に麻酔が切れると傷口の痛みを感じるママが多くなります。

傷口の痛みは、術後直後の1日目がピークで、医師に相談すれば痛み止めの薬を処方してもらうこともできます。その後、徐々に痛みは落ち着き、4~5日目になると体を動かしてもほとんど痛みを感じなくなります。

ただし、寝返りをうったり咳をしたりと、お腹に刺激が加わる場面では傷跡が痛むこともあるので、あまり無理しないようにしましょう。

帝王切開の術後、傷跡はいつまで残るの?

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帝王切開の術後は、痛みのほかにお腹の傷跡がいつまで残るのかも気になるママが多いかもしれません。

個人の体質にもよりますが、切開したところの皮膚がミミズ腫れのように赤く盛りあがることがあります。また、術後しばらく経つとかゆみを感じることもあります。

傷跡の変化には個人差がありますが、術後3ヶ月もすれば赤みが引いて、1年もするとほとんどの傷跡は白っぽくなります。年月が過ぎるごとに傷跡は目立たなくなっていきますよ。

ただし、体質や年齢によっては、傷跡がケロイドになってしまうこともあります。ケロイドを予防するテープやクリームもあるので、傷跡が気になるママは産婦人科や皮膚科で早めに相談してみましょう。

帝王切開後は骨盤ベルトをしてもいいの?

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帝王切開の場合、赤ちゃんが完全に産道を通り抜けていないため、術後の骨盤はひらいていないのではないか、と思う人も多いようですが、そんなことはありません。

妊娠3ヶ月頃から、骨盤まわりの関節や靭帯がゆるんでいきます。これに子宮の重みも加わって、骨盤の真下にある「恥骨結合」という軟骨のつなぎ目もひらいていきます。

そのため、帝王切開で出産したママであっても、術後は妊娠の影響で、骨盤がひらいた状態になっています。

ひらいた骨盤を引き締め、体型を戻すために骨盤ベルトを使いたいという人もいるかもしれませんが、帝王切開後は傷口を締めつけてしまう恐れがあるので、焦りは禁物です。

傷の回復を待つため、少なくとも術後1ヶ月ほどは骨盤ベルトの使用を控え、医師に相談したうえで代わりに柔らかい腹帯などを巻く方が安心です。骨盤ベルトを着けてもいい時期については、かかりつけの産婦人科医に確認してくださいね。

帝王切開の術後、母乳は出る?

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帝王切開で出産したことが原因で、母乳が出づらくなるということはありません。どんな出産方法であっても、産後はホルモンの作用によって母乳が作られます。

妊娠中、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンが増えることで乳腺が発達します。出産を終えて、ママのお腹から胎盤が取り出されると、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が急激に減り、今度は「プロラクチン」というホルモンの分泌が活発になり、母乳が作られるようになります(※2)。

ただし、母乳の出やすさや量については個人差が大きく、産後思うように母乳が出ないこともあります。授乳について悩んだときは、助産師に相談してみてくださいね。

また、帝王切開の術後に痛み止めの薬を飲んでいる場合、母乳をあげてもいいか不安に思う人もいるかもしれません。病院では、授乳中に飲んでも母乳や赤ちゃんへの影響がほとんどない薬を処方してもらえるので、飲み方や量を守って適切に飲めば心配ありませんよ。

退院後などに、病院で処方された以外の薬を自己判断で飲むのは避けましょう。

帝王切開の術後、夫婦生活はいつから?

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一般的に、産後に夫婦生活を再開できるのは、1ヶ月健診で医師の許可が出てからとされています。

ただし、帝王切開の場合、手術の傷口が回復するまで待つ必要があり、術後2ヶ月以上空けてから夫婦生活を始めるよう、医師から指示されることもあります。

傷口が回復するスピードは人それぞれです。術後は体をいたわることを最優先に考え、医師の許可をもらってから夫婦生活を再開するようにしましょう。

なお、帝王切開の手術では子宮を切り開いているため、回復するまで子宮に大きな負担をかけないために、次の帝王切開で分娩するまでは1年ほど空けるよう医師からアドバイスされることが一般的です。

術後に夫婦生活を再開したあとも、避妊が必要な期間には個人差があるので、かかりつけの医師に確認するようにしましょう。パートナーにも状況を理解してもらえるよう、夫婦でよく話し合っておきたいですね。

帝王切開後の妊娠・出産は注意が必要?

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一般的に、帝王切開を経験したあとは、次の出産も帝王切開を勧められます。帝王切開のあとに自然分娩を行うと、帝王切開したときの傷口部分から裂けて、子宮破裂を起こすリスクが大きいためです(※2)。

場合によっては、帝王切開の次の出産で自然分娩にトライする「TOLAC(トーラック)」という方法をとることもできます。

ただし、最終的に自然分娩で出産できるかどうかは、妊娠中の経過や分娩時の状況によっても異なり、母体と胎児の安全を最優先に考える必要があります。起こりうるリスクなどについて医師の話をよく聞き、パートナーともよく話し合ったうえで決めましょう。

また、帝王切開を経験したことのある女性の場合、次の出産のときに胎盤が子宮壁と強く癒着し、赤ちゃんが生まれたあとに胎盤が自然に剥がれにくい「癒着胎盤」が起こりやすくなり、大量出血が起きる可能性もあります(※2)。

次の妊娠を希望する場合、こういったリスクについても、あらかじめ産婦人科医に確認しておきましょう。

帝王切開後の術後は、体の回復を最優先に

退院したあとは子供のお世話で忙しい毎日が始まります。しかし、帝王切開の傷口が回復して体力が戻るまで、無理は禁物。家族にも協力してもらって、休めるときはしっかりと体を休めましょう。

術後しばらくは「体の回復が最優先」と割り切って、買い物はインターネットで済ませたり、移動にはタクシーを利用するなど工夫しながら、体になるべく負担をかけない生活を心がけてくださいね。

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