早産で生まれた赤ちゃんは体の機能が未熟なので、様々な病気を発症する恐れがあります。呼吸器系の障害による「新生児呼吸窮迫症候群」もその一つなのですが、知名度が高くないため、その治療法や予防法についてはあまり知られていません。今回は新生児呼吸窮迫症候群について、原因や症状、治療法、予防法などをご紹介します。
新生児呼吸窮迫症候群とは?
新生児呼吸窮迫症候群とは、「肺サーファクタント(肺表面活性物質)」と呼ばれる物質が、量的にも機能的にも不足しているために起こる新生児の呼吸障害です。
肺サーファクタントは、肺の中の肺胞を膨らませる作用を持っているのですが、新生児呼吸窮迫症候群では、肺サーファクタントが不足しているために肺胞が膨らまなくなり、うまく呼吸ができなくなってしまいます。
新生児呼吸窮迫症候群は未熟児、特に在胎32週未満で出生体重が1,500g未満の赤ちゃんに多く見られます(※1)。
新生児呼吸窮迫症候群の原因は?
新生児呼吸窮迫症候群の主な原因は、赤ちゃんの未熟性です。肺サーファクタントは妊娠34週頃にならないと十分な量が分泌されないため、それ以前の出産では発症するリスクが高まります(※2)。
早産以外にも、以下のような場合は新生児呼吸窮迫症候群が起きやすいため、該当する項目がある場合には注意が必要です(※2)。
新生児呼吸窮迫症候群のリスク要因
・子宮収縮抑制
・帝王切開による出生
・母体の糖尿病
新生児呼吸窮迫症候群の症状は?
新生児呼吸窮迫症候群では、呼吸困難による特徴的な症状が現れます。主な症状は、以下の通りです。
・ 呼吸が浅くて速い(多呼吸)
・ 青紫色の顔色になる(チアノーゼ)
・ 息を吸うときに胸の一部がへこむ(陥没呼吸)
・ 息を吐くときににうなり声が出る(呻吟)
新生児呼吸窮迫症候群の診断方法は?
新生児呼吸窮迫症候群が疑われる場合は、胸部X線検査を行って診断するのが一般的です。新生児呼吸窮迫症候群になっていると、X線写真の胸の部分に、新生児呼吸窮迫症候群特有の白い影が写ります。
場合によっては、血液中の酸素や二酸化炭素の量を調べる血液ガス分析を行うこともあります。
新生児呼吸窮迫症候群の治療法は?
新生児呼吸窮迫症候群を発症して生まれてきた赤ちゃんには、人工呼吸器や酸素投与などを行います。
また、新生児呼吸窮迫症候群の治療では、肺を膨らませて呼吸状態を良くするために、人工肺サーファクタントを気管から肺に注入する「人工肺サーファクタント補充療法」が行われます。
重大な合併症を起こしていなければ、生後数日たつと肺サーファクタントの産生が始まり、症状は自然と治まることがあります。
新生児呼吸窮迫症候群の予防法は?
新生児呼吸窮迫症候群を予防するには、できるだけ妊娠期間を長くし、早産を防ぐことが大切です。早産になりそうな状態である「切迫早産」と診断されれば、自宅で安静にするなどして、出産をできるだけ遅らせるための処置をとります。
また、早産が予想される場合は、分娩前に母体にステロイド剤を投与して、胎児の肺サーファクタントの産生を促すことも新生児呼吸窮迫症候群の予防につながります(※2)。
絨毛膜羊膜炎や子宮頸管無力症、子宮奇形は、切迫早産を引き起こすことがあるので、慎重に対処する必要があります。
新生児呼吸窮迫症候群の予防のためにも切迫早産に注意
妊娠中に下腹部痛や背部痛、不正出血が現れたときは、切迫早産の可能性があるので、すぐに産婦人科に連絡しましょう。病院で切迫早産と診断されたら、医師の指示にきちんと従って、治療にあたってください。
早産を予防することは、新生児呼吸窮迫症候群を予防することにもなります。妊娠中は日々の体調の変化に注意し、異変があれば、できるだけ迅速に対処するようにしましょう。