臨月は妊娠10ヶ月目(妊娠36~39週)のことであり、いつ赤ちゃんが産まれてもいい「正期産」の時期(妊娠37~41週)とほぼ同じです。その臨月に入ってから、お腹の中の赤ちゃんが突然死亡し、残念ながら死産になってしまうことがまれに起こってしまうことがあります。
今回は臨月の死産の原因や確率、そして兆候や予防法についてご紹介します。
死産の定義とは?
死産とは、妊娠4カ月(妊娠12週)以降の死児の出産のことを指します(※1)。詳しくは後述しますが、死産を引き起こす原因は赤ちゃん自身の先天性異常や母体側の要因などさまざまです。
「流産」も意味合いが重なるところがありますが、こちらは妊娠22週未満で妊娠が終わることを指す言葉です(※2)。
死産の確率は?臨月にも起きる?
流産には、妊娠12週未満までに起こる早期流産と、妊娠12週から22週未満までに起こる後期流産があり、後期流産は死産と見なされます。
妊娠12週から22週未満で死産が起きる確率は、1.6%といわれています(※3)。
また、2020年度の妊娠22週以降の死産率は0.48%となっています(※4)。妊娠36〜39週の臨月にあたる時期の死産率は約0.19%で、妊娠週数が正期産に近づくにつれて死産率は下がる傾向にあります(※4)。
死産の原因は?
死産の原因はさまざまで以下のようなものがあります。ただ、2020年度の死産のうち約35%が「その他・原因不明」であり、理由がはっきりとわからないことも多いのが現状です(※4)。
常位胎盤早期剥離
常位胎盤早期剥離とは、お腹に赤ちゃんがいるうちに、胎盤が子宮の壁から剥がれてしまうことです。胎盤が剥がれてしまうと、胎児への酸素と栄養の供給が止まるので、死産に至るリスクが発生します。
常位胎盤早期剥離は全妊娠の0.5%前後で発生し、妊婦さんの命も危険にさらす可能性があります。重症の場合の母体死亡率は1~2%、胎児死亡率は30~50%といわれています(※5, 6)。
臍帯の異常
臍帯(さいたい)とは、へその緒のことで、胎盤と赤ちゃんをつないで、血液を通じて赤ちゃんに栄養を与えています。臍帯はぐるぐるとらせん状にねじれていることが多いのですが、このねじれが強過ぎる状態を「臍帯過捻転」といいます。
臍帯過捻転になると、血流の低下から赤ちゃんに十分な栄養が届かず、発育不全や死産につながってしまう場合があります。
また、赤ちゃんの体の一部にへその緒が絡まった「臍帯巻絡」のうち、稀にへその緒が赤ちゃんの首に絡まってしまうケースもあります。大きな問題にならないことがほとんどですが、場合によっては、帝王切開になったり、死産に至ったりすることがあります(※7)。
血液型不適合妊娠
血液型不適合妊娠とは、ママと胎児の血液型が異なり、母体に胎児の赤血球への抗体ができることをいいます。
なかでもRh不適合型妊娠が起こると、胎児の赤血球が破壊され、死産にいたる可能性があります。
ただ、妊娠28週前後や分娩後など、適切な時期に注射で予防の治療を治療することで、ママや胎児に影響があることはほとんどありません(※3,8)。
胎児水腫
胎児の体内に水分が蓄積され、むくんだ状態になってしまうことを胎児水腫といいます。胎児水腫を引き起こす原因は、胎児の染色体異常や心臓の奇形、感染症、血液型不適合妊娠など様々です(※3)。最悪の場合、死産に至ってしまうこともあります。
妊娠高血圧症候群
妊娠中に高血圧を発症した場合、妊娠高血圧症候群といいます。妊娠高血圧症候群を引き起こす原因ははっきりとしていませんが、妊娠時の年齢や喫煙、肥満、不妊治療などがリスク因子として挙げられています(※3)。
妊娠高血圧症候群になると、常位胎盤早期剥離や胎児発育不全などを起こし、死産に至ってしまうことがあります。
この他にも、臨月にママが重い感染症にかかってしまったり、赤ちゃんの心臓などに病気があることで、死産につながることがあります
臨月の死産に兆候はあるの?
残念ながら、兆候がまったくないまま赤ちゃんが死に至ることもありますが、兆候がある場合は、以下のようなことがみられます。
胎動が少なくなる・弱くなる
赤ちゃんに何かトラブルが起きている場合は、胎動が少なくなる・弱くなると感じることがあります。
臨月に入ると赤ちゃんの頭が骨盤に固定されて動きを取りにくくなるため胎動は減ると言われていますが、胎動を全く感じられなくなることはありません(※8, 9)。
急に胎動が弱くなった・極端に少なくなったと感じる場合は、速やかにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
また、胎動がいつもと違う様子で違和感を感じた場合も、かかりつけの産婦人科へ相談することをおすすめします。
赤ちゃんの心拍数の異常
妊婦健診のときに、超音波検査などで赤ちゃんの心拍を確認したときに異常がみつかることがあります。原因によっては帝王切開ですぐに出産となったり、治療のために入院したりする可能性があります。
ママのお腹の張りや痛み
常位胎盤早期剥離などでは、下腹部の痛みやお腹がカチカチに張って硬くなるといった症状が起こります。その他にもおしるしとは異なる不正出血がみられることもあります。
臨月になるとお腹の張りが多くなりますが、安静にしても治まらない場合はかかりつけの産婦人科に連絡してくださいね。
臨月の死産を予防する方法はあるの?
残念ながら、臨月の死産はほとんどの場合、予防ができません。原因不明のものも多いため、臨月の死産を100%防ぐ方法はないのが現状です。
それでも体調や胎動の変化に気を配っていれば、何か異変に気づくことはできるかもしれません。
特に、赤ちゃんの胎動を数える「胎動カウント」は、おなかの中の赤ちゃんの状態を知る手助けとなります。胎動カウントを行うことで、もし赤ちゃんにトラブルが起きたときに気づけるきっかけになるかもしれません。
また、当たり前のことではありますが、「妊娠後期に入ったから、もう安心!」とは油断せず、妊婦健診も必ず行くようにしましょう。
臨月に死産になったときは?
もし死産にいたってしまった場合、赤ちゃんの死亡届と、火葬のための火葬許可証が必要になります。しかし思いもよらない急なことで、どのように対処すればよいのか困惑してしまうかもしれません。
一人ですべて背負おうとするのではなく、パートナーや家族、病院のスタッフなどに相談しましょう。
大切に育ててきたお腹のなかの赤ちゃんが亡くなってしまう悲しみは計り知れません。パートナーや家族とともに心身を休めることが大切です。
各自治体には、死産を経験した人に向けたグリーフケアなどの支援窓口も設けられているので、専門家に相談するとよいでしょう。
日頃から胎動と体調に気を配ろう
死産という現実がもし訪れてしまったら、一人で抱え込まず、家族や医師、助産師など、周囲の人たちに相談して、素直な気持ちを話すことも大切です。
臨月の死産に確固とした予防法はありませんが、普段から体調や胎動に気を配ることで早めに異変に気づける可能性があります。
体調や胎動が普段と異なり心配な場合は、速やかにかかりつけの産婦人科に相談するようにしてくださいね。
いくら万全を期していても、臨月に死産が起こる可能性はゼロではありません。ほとんどの赤ちゃんは無事に生まれてきますが、こうして考えると実は奇跡的なことかもしれませんね。