そろそろ子供が欲しいと思って妊活をスタートしたものの、なかなか授からずに焦りを感じている人もいるのではないでしょうか。子供ができないカップルは10組に1組とも、5組に1組ともいわれており、とても難しい問題です(※1)。それでは、子供ができないのにはどのような理由があるのでしょうか。今回は、男性・女性それぞれに、どんな原因があるのかをご紹介します。
子供ができるまでの過程は?
子供ができない理由を知るためには、まずどのように妊娠が成立するのかを知ることから始めましょう。以下のような流れで妊娠が成立します。
1. 卵子の成長
女性の卵巣のなかには、卵子の元となる「原始卵胞」と呼ばれる細胞があります。毎月女性ホルモンの影響を受けて、20~30個ほどの原子卵胞が成長し、このうちの1つが成熟して排卵されます。
2. 排卵
成熟した卵胞の膜が破れ、なかから卵子が飛び出します。卵巣の外へ出た卵子は卵管采に吸い上げられ、卵管へと送られます。
3. 精子と卵子の出会い
男性の精巣で作られた精子が、性交によって女性の膣内に射精されます。膣内には約1億個の精子が送られますが、そのうちのほとんどは死滅し、残された数十~数百個の精子だけが卵管に到達して、卵子と出会います。
4. 受精卵の形成
卵管にたどり着いた精子は、卵子を取り囲む「顆粒膜細胞」を溶かして卵子のなかに入り込みます。そして、最終的に残った1個の精子が卵子と結合し、受精が成立します。
5. 受精卵が着床
受精した精子と卵子は受精卵となり、細胞分裂を繰り返しながら、6~7日ほどの時間をかけて卵管を移動し、子宮へとたどり着きます(※2)。そして、子宮内膜に着床して、根を張ります。
着床するとどんどん細胞分裂が起こり、少しずつ赤ちゃんへと成長していきます。
子供ができない理由。女性側の原因は?
排卵から着床まで、ほぼすべての過程が女性の体内で行われるため、女性の不妊の原因はやや複雑です。女性側に見られる子供ができない原因には、以下のようなものが挙げられます。
排卵の問題
卵巣内で卵胞が成長しない、あるいは排卵が起こらないなどといった排卵の問題は、女性側に原因のある不妊の40%を占めるといわれます(※3)。
排卵機能に問題が起こる原因は様々ですが、代表的なものとしては、ストレスや過度なダイエットによるホルモン異常、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣機能不全などが挙げられます。
卵管の問題
卵管が細い、あるいは詰まっているなどの問題があると、卵子や精子が卵巣を通れないため受精ができず、妊娠できません。
卵管の問題で代表的なものには、卵管閉塞、卵管周囲の癒着、卵管炎や腹膜炎などが挙げられます。
着床の問題
精子と卵子が出会えても、様々な原因で受精卵が着床できない、あるいは着床しても成長できないことがあります。着床の問題は、子宮口に着床を妨げるなんらかの器質的な要因があるものと、ホルモンに問題があるものの2つに分けられます。
器質的な要因としては、子宮筋腫が突き出している、あるいは子宮内膜にポリープができているなどです。
ホルモンの影響によるものは、「黄体機能不全」が一般的です。黄体ホルモンがうまく分泌されず、子宮内膜が着床に適した状態になれないため、妊娠が難しくなります。
子宮頸管の問題
精子が入ってくる子宮頸管になんらかの問題が生じることもあります。子宮頸管炎や頸管粘液の異常、精子に対する抗体(抗精子抗体)を持っている、などです。
頸管粘液は、精子にとって快適な環境を作るために欠かせない粘液です。この粘液が何らかの原因で異常をきたすと、精子が活動できず、子宮口に入っていくことができなくなります。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、本来子宮にしか発生しないはずの子宮内膜が、子宮以外の場所にできてしまう病気です。子宮内膜症になると、その周りの組織と癒着を起こし、不妊の原因になります。
子供ができない理由。男性側の原因は?
赤ちゃんがなかなかできないと、女性側に問題があると考えられがちです。
しかしWHOの発表によると、不妊症について、女性のみに原因があることは41%、男性のみが24%、男女ともに原因があるのが24%、原因不明は11%と、不妊の原因の約半数は男性側にあるということがわかっています(※4)。
男性側の子供ができない原因には、以下のものが挙げられます。
精巣の問題
精巣の働きが悪くなることで、精子の数が少なくなってしまったり、精子の質が低下して、動きが悪くなったりしてしまうことがあり、男性側の不妊の原因の80%以上を占めるといわれています(※4)。「乏精子症」や「無精子症」などがあります。
精管の問題
精巣で精子がきちんと作られていても、精子の通り道である「精管」が詰まっていると、精子が外にでてくることができません。精管炎や精巣上体炎などの病気の可能性があります。
性機能の問題
性交に十分な勃起ができない、または勃起が続かないといった状態である「勃起障害」、または射精ができない「射精障害」などがあります。
高血圧や糖尿病などの病気が関係していることもありますが、ストレスや緊張など、心理的なことが原因となることもあります。
子供ができない原因がわからないこともある?
子供ができない原因は、男性と女性のどちらにもある可能性がありますが、なかには、不妊検査を行っても不妊の原因がわからないこともあります。先にも説明したとおり、WHOによると不妊の原因の11%は不明ということです(※4)。
原因不明の不妊といっても、本当に原因がないというわけではなく、検査では見つけられない何かしらの原因があることが考えられます(※1)。原因不明だからといって妊娠できないということではないので、心配しすぎないようにしましょう。
また、精神的なものが原因で、子供がなかなかできないということも考えられます。不妊治療がうまくいかなかった夫婦が、生活環境を変えたり、なんらかの精神的なプレッシャーから開放されたりしたことをきっかけに、自然妊娠できたというケースも少なくありません。
「原因がわからない」といわれたら、まずは、大きな病気がなかったことを前向きに捉えましょう。そして、夫婦でよく相談しながら、治療の環境を整えていけるといいですね。
子供ができない原因を知るために不妊検査を受けよう
子供ができない理由は、検査を受けてみるまでわかりません。男性、女性、どちらにも不妊の原因がある可能性があります。なかなか子供ができないときは、妊活を始めて1年ほどを目安に、夫婦2人で不妊検査を受けるようにしましょう。
また、女性は年齢を重ねるほどに不妊の頻度が上がります。具体的には、25歳~29歳では8.9%だったものが、30~34歳では14.6%、35~39歳21.9%、40~44歳では28.9%という報告もあります(※1)。特に30代を超えている人は、1年を待たずに婦人科に相談してもいいかもしれません。
パートナーと話し合い、早めに受診することをおすすめします。