子宮内膜症の自覚症状には個人差があります。「生理痛がひどくなった」あるいは「生理ではないときにも下腹部が痛い」という場合は、「子宮内膜症」の可能性があるので要注意です。今回は、子宮内膜症の症状をチェックするためのリストや、診断方法についてまとめました。
子宮内膜症はどんな症状が現れる?
子宮内膜症は、生殖可能な年齢の女性のうち約10人に1人が発症するといわれています(※1)。本来は子宮内にしかないはずの「子宮内膜」の組織が、腸管や膀胱、腟など子宮以外の臓器に形成されてしまう病気です。
通常、妊娠が成立しなかった場合、子宮の内側を覆う子宮内膜は剥がれ落ちます。これが血液と一緒に腟から排出されるのが「月経(生理)」です。
しかし、子宮外で剥がれ落ちた子宮内膜は、月経血としてうまく排出されず、体内に溜まってしまいます。それがほかの臓器や組織と癒着を起こしたり、炎症を起こしたりしてしまいます。
これに伴って、生理痛や腰痛、排便痛といった様々な痛みが現れます。また、ホルモンバランスが乱れて、体の不調を誘発するといわれています。
子宮内膜症になりやすい人はいる?
子宮以外の場所に子宮内膜ができる原因は、はっきりとわかっていません。発症の仕組みが解明されていないので、子宮内膜症になりやすい人の特徴を挙げるのは難しいといえます。
しかし、「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンの働きによって、子宮内膜の増殖が促されることはわかっています。エストロゲンの働きは若いときほど活発なため、子宮内膜症は20~40代の性成熟期によく見られ、閉経後は減少します(※2)。また、妊娠・出産をすると症状が緩和されたり、閉経後に症状がなくなったりすることもあります(※3)。
なお、「性行為のしすぎで子宮内膜症になることがある」と聞いたことがある人もいるかもしれませんが、性行為と子宮内膜症とのあいだに医学的な関連性は見つかっていません。
子宮内膜症のチェック項目は?
子宮内膜症では様々な自覚症状が現れます。そのため、子宮内膜症が疑われるかどうかを、自分でもある程度チェックすることが可能です。
以下に子宮内膜症の主な症状を挙げています。当てはまる項目がないかどうか確認してみてください。
子宮内膜症チェック項目
1. 生理中の主な症状
□ 以前よりも生理痛がひどくなった
□ 生理を迎えるごとに生理痛が強くなる
□ 頭痛や吐き気、のぼせ、むくみが強い
□ 生理を迎えるごとに経血量が多くなる
□ 経血にレバー状のかたまりが混じる
2. 生理中以外の主な症状
□ 生理の前後1週間ずつくらいの期間、お腹が張る
□ 慢性的に腰や下腹部が痛い
□ 生理ではないのに出血がある
3. その他の主な症状
□ 性交時に痛みがある
□ 排便時に肛門が痛む
□ 排尿痛がある
□ 避妊をせず排卵日に合わせて性交しているのに、半年以上妊娠できない
子宮内膜症のチェックに当てはまるときは?
上でご紹介したチェックリストのうち、一つでも当てはまる自覚症状がある場合、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。ただし、チェックの個数が多いほど確率が上がるというわけではありません。
また、必ずしも子宮内膜症にかかっているとはいえませんが、生理痛や月経困難症などがひどい原因がわかる可能性もあるので、症状を放置せず病院にかかることが大切です。
子宮内膜症は悪性の病気ではないため、比較的症状が軽い段階では、「対症療法」で様子を見ることもあります。「ホルモン療法」により排卵を止め、症状をコントロールすることもあります。
対症療法
子宮内膜症によって生じる痛みを軽減するために、病院で鎮痛薬を処方されることがあります。
子宮内膜が体内で増殖すると、「プロスタグランジン」という物質が多く分泌されます。プロスタグランジンは強い子宮収縮を促すため、生理時の腹痛や腰痛につながります(※3)。
非ステロイド系抗炎症鎮痛薬には、このプロスタグランジンの合成を抑えるものが多く、子宮内膜症に伴う痛みの緩和に有効とされています。また、漢方薬を服用して体質改善を図ることもあります。
ホルモン療法
低用量ピル(経口避妊薬)や「ゾラデックス」などのGnRHアゴニスト、「ディナゲスト」などの合成黄体ホルモン剤で症状をコントロールするのが、ホルモン療法です。
ホルモン療法によって脳が「閉経状態」と錯覚すると(偽閉経状態)、排卵が止まります。これにより、子宮内膜の増殖や症状の悪化を抑えられるというわけです。
なお、対症療法やホルモン療法は子宮内膜症を根本から治すものではないため、効果が見られないときや症状が重い場合には、手術が必要になることもあります。
子宮内膜症のチェックで疑いがあれば婦人科へ
ひどい生理痛や性交痛など、今回ご紹介した子宮内膜症のチェックリストで該当する項目が1つでもあれば、一度婦人科を受診しましょう。子宮内膜症は、放っておくと不妊の原因にもなりうるので、妊娠を希望している場合は特に、すみやかに医師に相談してくださいね。