体外受精(IVF)とは?費用や確率は?流れやスケジュールは?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

体外受精(IVF)は不妊治療の方法のひとつですが、人工授精や顕微授精という言葉もあり、いまいち違いがわからない人もいますよね。

そこで今回は、体外受精について、流れやスケジュール、費用など、基本的なことをご説明します。

体外受精(IVF)とは?

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体外受精(IVF)とは、女性の卵巣内から取り出した卵子と、男性から採取した精子を、培養液の中で受精させ、受精卵(胚)を子宮に戻す治療法のことです。

正式には「体外受精・胚移植(IVF-ET)」といいます。

卵胞の発育、排卵、受精といった妊娠の多くの過程を経た状態で子宮に戻すため、ほとんどの不妊原因に対して有効な治療法といえます。

体外受精を受けるのはどんな場合?

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体外受精は、女性の卵管に障害があったり、抗精子抗体によって精子が体内に入れなかったりする場合や、男性の精子数が少ない、または運動能力が低いといった場合に、実施が検討されます(※1)。

また不妊の原因がわからず、タイミング法や人工授精を行ったものの妊娠が成立しなかった場合に、産婦人科医から体外受精へのステップアップを勧められることもあります。

なお、体外受精での妊娠が難しいと判断された場合には、顕微授精(ICSI)が適応されることもあります。

体外受精(IVF)で妊娠する確率は?

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体外受精の1周期あたりの妊娠率は、約23%といわれています(※2)。

妊娠するためには、受精卵が子宮内膜に根を張り、着床が完了する必要があるため、体外受精で無事に受精できても、残念ながら妊娠しない可能性もあります。

また体外受精を行った場合でも、自然妊娠と同じように、年齢とともに妊娠率は下がっていきます。

体外受精の流れ・スケジュールは?

精子 卵子 卵子 受精 核分裂

体外受精の流れは、大きく分けて「排卵誘発」「採卵・採精」「受精・培養」「胚移植」「妊娠判定」の5つのステップに分けられます。

それぞれについて、日数の目安もあわせて説明していきます。

1. 排卵誘発

体外受精の成功率を上げるには、良好な卵子をできるだけ多く採ることが大切です。

月経(生理)3日目から毎日、卵巣を刺激するFSH注射やhMG注射を投与して、卵子を発育させます。これを「排卵誘発」といいます。注射の種類や投与量は、人によって異なります。

なお、卵子を採る前に排卵してしまわないように、点鼻薬などで排卵を抑制することもあります。排卵抑制の開始時期によって、ショート法・ロング法・ウルトラロング法などがあります。

2. 採卵・採精

卵子が十分に育ったら採卵します。卵子の発育スピードには個人差があるため、一概にはいえませんが、おおよそ生理開始から10~14日目ごろに採卵を行います。

良質な卵子がいくつか採れた場合でも、35歳以上で妊娠が難しいケースなどを除いて、双子などの多胎妊娠を防ぐために1個だけしか移植しないことになっているため、残った卵子は凍結保存することがあります。

また、採卵したその日に受精を行うため、男性も一緒に病院を受診し、精子を採る(採精する)ことがほとんどです。

3. 受精・培養

採取した卵子と精子を、シャーレなどの容器のなかで受精させます。受精がうまく行ったら、受精卵を培養させ、成長させていきます。

受精卵は細胞分裂を繰り返し、受精から2~3日後には「初期胚」、5~6日後には「胚盤胞」という状態になります。

4. 胚移植

着床に適した状態まで胚が育ったら、女性の子宮内に移植します。初期胚移植の場合は生理開始から12~17日目、胚盤胞移植の場合は15~20日目に行います。

一般的には、初期胚移植よりも胚盤胞移植の方が着床率(妊娠率)が高いとされています。

胚を凍結保存することもある?

胚移植の前に子宮内膜の状態を確認し、着床に適した環境が整っていないと判断された場合には、その周期での胚移植は行わずに見送ることもあります。

その場合、胚を凍結保存して、子宮内の環境を整えたうえで、より妊娠しやすいタイミングで凍結胚を融解し、あらためて胚移植を行うこともあります。これを「凍結胚移植」といいます。

5. 妊娠判定

胚移植後、うまく行けば、初期胚の場合は3~5日後、胚盤胞の場合は1~2日後には着床します。ただし、着床してすぐに妊娠判定ができるわけではありません。

通常、胚移植から14~21日(2~3週間)ほど経ってから産婦人科を受診し、血液検査や尿検査によってhCGホルモンの分泌量を測定したうえで、妊娠判定を行います。

その1週間後に、超音波で胎嚢を確認します。

体外受精(IVF)にかかる費用は?

お金 節約

使用する注射薬や採卵の個数、胚移植の方法、実施する医療機関などによって体外受精の費用は変わります。

体外受精には基本的に保険が適用されるため、1周期あたりの自己負担額の目安は12〜15万円ほどです。

体外受精の費用モデルケース

採卵 90,000円
受精 30,000円
培養 100,000円
胚凍結 60,000円
凍結胚保存(1年) 30,000円
凍結融解 30,000円
胚移植 110,000円
その他(検査・薬など) 30,000円
合計 480,000円(自己負担額は144,000円)

上表は1周期あたりの費用を示したものなので、何周期かチャレンジする場合には、追加で料金がかかります。

また、保険適用の回数や年齢には以下のような制限があるので注意してください(※3)。

保険適用される年齢の上限

● 治療開始時に、女性の年齢が43歳未満であること

なお、男性の年齢制限はありません。

保険適用される回数の上限

● 初めての治療開始時の女性の年齢が40歳未満の場合
→通算6回まで保険適用

● 初めての治療開始時の女性の年齢が40歳以上43歳未満の場合
→通算3回まで保険適用

体外受精にどれくらいの費用をかけるのか、夫婦でよく相談したうえで、医師のアドバイスを受けながら治療計画を立てましょう。

体外受精は費用も含めて夫婦で検討を

体外受精は、妊娠率は高いですが、時間的・経済的・身体的な負担がかかります。もし検討してみたい場合は、具体的な流れや費用について医師に相談してみましょう。どのように不妊治療に取り組んでいくか、夫婦で納得のいく選択ができるといいですね。

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