精巣上体炎とは?原因や症状、治療法は?不妊につながる?

監修医師 泌尿器科 小堀 善友
小堀 善友 プライベートケアクリニック東京 東京院院長。2001年、金沢大学医学部卒業。金沢大学泌尿器科、米・イリノイ大学シカゴ校泌尿器科、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授を経て、2021年より現職。日... 監修記事一覧へ

近年、なかなか子供を授からないことで悩むカップルは増えていますが、不妊の原因のおよそ半分は男性側にあります。「精巣上体炎」という病気は耳慣れないかもしれませんが、男性不妊の原因にもなる病気の一つです。今回は、男性自身にも女性パートナーにも知っておいてもらいたい、精巣上体炎の原因や症状、検査方法、治療法についてご説明します。

精巣上体炎とは?

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精巣上体とは、精巣(睾丸)の横についている、少しふくらんだ器官のことをいいます。「副睾丸」とも呼ばれ、精巣で作られた精子が精管へと運ばれる途中にあります。

この精巣上体に細菌が入り込み、炎症を起こしてしまった状態が「精巣上体炎(副睾丸炎)」です。早期に発見できれば抗生物質で治療することができますが、悪化して精管を塞いでしまうと不妊の原因になりうるので、注意が必要な病気です。

精巣上体炎の原因は?

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精巣上体炎は、尿道炎や前立腺炎、膀胱炎などの尿路感染症、もしくは性感染症によって体内に入った病原体が精巣上体まで逆流することで起こります。感染症の原因はそれぞれ異なります(※1)。

尿道炎は、性交渉を通じて淋菌やクラミジアに感染することで起こります。男性の場合、前立腺炎を合併しやすいので注意が必要です。

前立腺炎は、細菌性のほか、細菌の感染がない非細菌性のものがあります。はっきりとした原因がわからない場合もありますが、ストレスや免疫力の低下なども影響しているのではないか、と考えられています。

精巣上体炎の症状は?

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精巣上体炎を発症すると、急性期は精巣上体のあたりに激しい痛みが現れます。そして、痛みが少しずつ広がり、精巣を覆っている陰嚢全体が硬く、赤く腫れあがり、しこりができます。

見た目にもわかりやすく腫れて、触ると強い痛みを感じるようになります。症状がひどくなると、歩いただけで痛みを感じ、日常生活にも支障をきたす場合があるので注意が必要です。炎症の影響で発熱を伴うこともあります。

なお、陰嚢の中に痛みを伴わないしこりがある場合、精巣腫瘍(精巣がん)の可能性もゼロではありません。手で触れてみて違和感があれば、泌尿器科を受診してください。

精巣上体炎は不妊につながるの?

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精巣上体炎は、病原体によって炎症を起こしている状態です。適切な処置をしないまま放っておくと、精巣上体だけでなく精巣そのものにも炎症が広がり、精子の元になる精細胞までを死滅させてしまい、結果的に精子が作られない可能性があります。

また、精巣上体炎によってできたしこりが、精子の通り道である「精管」を塞いでしまう恐れもあります。この場合、たとえ精巣で精子が作られていたとしても、尿道まで正常に運ばれないため、射精された精液の中に精子がまったく見当たらない「無精子症」になってしまうことも(※2,3)。

精巣上体炎のすべてのケースが不妊につながるというわけではありませんが、上に挙げたとおり精子の産生や運搬に影響が出るリスクもあります。少しでも体に違和感を覚えたら、なるべく早く泌尿器科を受診しましょう。

精巣上体炎の検査方法は?

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陰嚢の腫れや痛みで泌尿器科を受診すると、まず問診・視診で症状を確認されます。次に、尿検査や血液検査、超音波検査(エコー検査)で、尿・血液内に細菌やウイルス、膿などが発生していないかを確認します。このとき細菌を詳しく調べることで、治療に必要な抗生物質の種類を特定できます。(※4)。

検査の重要なポイントは、「精巣捻転」という病気と区別し、適切な処置を行うことです。精巣捻転は精巣につながる精索(せいさく)という軸がねじれて、血管から精巣に栄養が運ばれなくなる病気です。精巣が壊死する前に手術によって治療する必要があります。

また、精巣上体炎の原因が尿道炎である場合、淋菌やクラミジアといった性感染症のウイルスに感染している場合があります。性交渉を通じて女性パートナーに感染している可能性もありますが、女性は無症状のことが多いため、気づかずに放置してしまいがちです。

男女ともに不妊につながるリスクがあるので、2人とも性病に感染していないか検査を受けることが大切です。

精巣上体炎の治療法・治療期間は?

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精巣上体炎は主に細菌の感染によって起こる病気なので、検査によって原因を突き止め、その菌に対して効果を発揮する抗生剤を投与することで治療します。

発熱や陰嚢の痛みに対しては、痛み止めの薬を投与したり、冷やしたりする対症療法を行います。状況によっては、入院が必要なことも。適切な治療を受ければ、痛みは数日、腫れは数週間~数ヶ月でひいていきます(※4)。

ただし、先ほどもご説明したように、腫れや痛みがひいたとしても、精巣上体に硬いしこりが残ってしまう場合もあります。

精巣上体炎が不妊につながる前に早期治療を

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精巣上体炎は、局部の痛みや腫れ、発熱がある、男性にとってはつらい病気ですが、不妊の原因になってしまうこともあるので、軽視できません。もし精巣上体炎が疑われる症状が現れたら、早めに泌尿器科を受診して検査を受けてください。

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