産婦人科での検診で「双角子宮」と診断され、不安に感じている人もいるかもしれません。妊娠や出産に必要な子宮の形状が通常と異なるため、不妊や流産のリスクはないのか気になるところです。そこで今回は、双角子宮とは一体どういうものなのか、日常生活で現れる症状や、妊娠・出産への影響、手術での治療法についてご説明します。
双角子宮とは?
双角子宮とは、子宮奇形の一種です。正常な子宮の形とどのように違うのか、比較して見てみましょう。
正常な子宮
正常な形の子宮は、上図のように、洋梨が逆さまになったような形をしていて、子宮の内側は特に仕切られていません。
双角子宮
一方、双角子宮は、内側が二手に分かれており、子宮底部の上面が内側に向かってへこんでいるのが特徴で、ハートのような形をしています。
これは、胎児のときに融合されるはずの「ミューラー管」というものがうまく融合されず、子宮の真ん中に残ってしまったことによるものです。
同じ理由で起こる子宮奇形に「重複子宮(双頸双角子宮)」というタイプもあり、これは下図のように、子宮の内側が2つに隔てられているのが特徴です。
双角子宮になる原因は?
先ほど少し触れましたが、双角子宮をはじめ子宮奇形は、胎児のときに起こる、先天的(生まれつき)なものです。
通常、胎児のときに左右一対の「ミューラー管」が発育し、左右からくっついて子宮と腟が形成されるのですが、なんらかの原因でミューラー管の融合が不完全なまま終わってしまうと、「双角子宮」の状態になります(※1)。
ただし、子宮が作られるメカニズムについては完全に明らかになっているわけではなく、実際にはほかにも様々な要因が合わさって双角子宮が起こると考えられています。
双角子宮だと生理痛が重くなる?
子宮の形は自分ではわからないうえに、双角子宮には目立った自覚症状がありませんが、生理のときに経血がスムーズに排出されないため、重い生理痛を引き起こすことがあります(※3)。
「生理痛は仕方がない」と我慢している女性も多いと思いますが、ひどい痛みがある場合、子宮の形に原因があるケースもあるので、早めに婦人科で診てもらうことが大切といえます。
そのほかには、無月経や性交障害、不妊、流産の繰り返しなどによって産婦人科を受診したときに、双角子宮であることが検査で偶然発見されることがほとんどです(※2)。
なお、奇形ではありませんが、通常はお腹側に向かって少し傾いているはずの子宮が、背中側に傾いている「子宮後屈」の女性も、生理痛が重くなる傾向にあるようです。
普段は意識しない子宮の形や位置ですが、毎月やってくる生理や生理痛と深い関係があるのですね。
双角子宮の検査方法は?
日本産婦人科学会によると、子宮奇形が見られる割合としては、一般女性の3.8~6.7%です(※2)。
子宮奇形には、双角子宮のほかにも様々なタイプがあり、子宮卵管造影検査や超音波検査、子宮鏡検査、MRI検査などを行うことで診断されます。
特に双角子宮は、適切に治療方針を決めるために、形がよく似ている「中隔子宮」と区別することが大切なので、くわしく検査することになります(※1)。
双角子宮は妊娠に影響する?不妊や流産、早産につながる?
産婦人科の検査で双角子宮が見つかった場合、妊娠への影響が気になるところ。実際のところ、不妊や流産、早産になりやすいということはあるのでしょうか?
不妊になりやすい?
子宮奇形が不妊の原因になることもありますが、強い関連性はないとされ、なかなか妊娠しない場合にはほかの原因も探ることになります。
流産・早産になりやすい?
次表のとおり、双角子宮の場合、妊娠が成立したあとの流産・早産率が高いということを示す研究データもあります(※3,4)。
すべての妊娠 | 双角子宮 | |
流産率 | 約15% | 約45% |
早産率 | 約5% | 約18% |
また、双角子宮の場合、何度も流産を繰り返す「不育症」との関連性が強いということも指摘されています(※1)。
ただし、別の調査研究では、双角子宮の妊婦さんのうち62.5%は問題なく妊娠を継続できている、という報告もあります。
双角子宮と診断された場合は、医師とともに慎重に妊娠経過を見ていくことが大切です。
双角子宮での出産は帝王切開になるの?
双角子宮で自然分娩できるかどうかについては、双角子宮の形状や状態によって異なります。
場合によっては、子宮内腔がせまく、胎児が自由に動き回りにくいことで逆子が戻らなかったり、分娩時にうまく回旋できなかったりするため、帝王切開となることもあります(※1)。
また、重複子宮(双頸双角子宮)の場合、子宮口が2つに分かれているため、赤ちゃんが出てくる側の子宮口が十分に開かず、自然分娩から緊急帝王切開に切り替えることもあります。
双角子宮は手術が必要?
双角子宮をはじめ、子宮奇形であっても正常に妊娠・出産できることも多いので、必ず手術しなければならないわけではありません。
ただし、もし子宮奇形が不妊症・不育症や、生理のときの強い下腹部痛の原因であると考えられる場合には、開腹手術や腹腔鏡手術などの「子宮形成術」を行います(※1)。
双角子宮の場合、最もよく行われるのは「シュトラスマン手術」です(※1)。これは、子宮底部(ハート型の上の部分)を横に切り開き、縦方向に縫い合わせることで正常に近い子宮の形にするものです。
子宮形成術を行うと、術後に癒着が起きたり、子宮筋層が通常よりも弱くなったり、子宮破裂を発症することがあるため、次の出産では基本的に帝王切開を行うことになるなど、リスクも少なからずあります。そのため、医師とともに慎重に検討する必要があります(※1)。
双角子宮と診断されても心配しすぎないで
双角子宮と診断されると、無事に妊娠や出産ができるのかどうか、不安になってしまう人もいるかもしれません。しかし、双角子宮が不妊の原因にはなるとはいえず、たしかに流産・早産の頻度は多いものの、問題なく出産を迎えられた女性も多くいます。
妊娠後に双角子宮とわかった場合でも、あまり悪い方向に考えすぎず、妊娠経過をしっかり医師に診てもらいながら、無理のない生活を送れるといいですね。