不妊治療とは?流れや内容は?検査に行くタイミングは?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

「不妊治療」と聞いたことはあっても、どのような状態を「不妊」というのか、どのような検査や治療を行うかまでは知らない方も少なくありません。

そこで今回は、不妊治療の前に行う検査の内容をはじめ、考えられる原因、主な治療方法についてご説明します。

不妊治療を受けるまでの流れは?

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日本産科婦人科学会は、妊娠を望む健康な男女が、避妊をせずに性交渉を一定期間続けても妊娠に至らない状態を、「不妊」と定義しています(※1)。この場合の「一定期間」は、1年とするのが一般的です。

妊娠を望んでから1年を過ぎた段階で妊娠しない場合は、病院で不妊検査を受けることが推奨されています。検査の結果によって治療を必要とする場合は、薬や高度な生殖医療技術により、原因にあわせた「不妊治療」を行います。

ただし、35歳以上の夫婦が毎月排卵日付近に性行為をしても妊娠しないときは、1年を待たず、できるだけ早めに婦人科を受診するのがよいでしょう。

不妊検査の方法は?

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不妊の原因は、男性側、女性側でほぼ半々といわれているため、パートナーと二人で検査を受けることが大切です(※1)。

また、不妊検査は女性の生理周期に合わせて計画を組み立てる必要があるため、1~2ヶ月かかることもあります。病院によっては予約が取りにくいこともあるので、相談だけでも早めに行うことをおすすめします。

検査方法は男性と女性で異なり、主に以下のことを行います。

女性側の検査方法

基礎体温や血液中のホルモン値の測定、超音波検査、子宮卵管造影などの検査を行います。

男性側の検査方法

精液を採取して、精子濃度や運動率、奇形率などをチェックする精液検査を行います。

不妊治療を必要とする主な原因は?

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不妊検査によってわかる原因には、男女別に以下のようなことが挙げられます。

男性側

男性側の不妊には、大きく分けて「精子」「射精」に何らかの原因があると考えられます。

精子に考えられる原因

  • 精液の中に精子がない「無精子症」
  • 精子の数が少ない「乏精子症」
  • 精子の運動率が低い「精子無力症」
  • 精子を運ぶ道に異常がみられる「精路通過障害」
  • 精子を作る機能が低下している「造精機能障害」

上記に該当しない場合でも、精子の運動率や状態が少し悪くなっていることによって、妊娠しにくくなっている場合もあります。

射精に考えられる原因

  • 精液が逆行してしまう「逆行性射精」

精子には原因がみられなくても、射精することが困難な場合は不妊の原因となることもあります。

女性側

女性側の不妊には、主に「排卵」「卵管」「子宮」「子宮頸管」「着床」「免疫機能」に何らかの原因があると考えられます。

排卵に考えられる原因

排卵が正常に起きない、または排卵が遅い「排卵障害」。

卵管に考えられる原因

卵子と精子の通り道である卵管が詰まり、受精卵が通りにくい「卵管障害」。

子宮に考えられる原因

子宮に、子宮筋腫や子宮内膜ポリープといった疾患がみられる。

着床に考えられる原因

受精には至るものの、受精卵が子宮内膜に着床しにくい「着床障害」。

子宮頸管に考えられる原因

子宮頸管から分泌される「頚管粘液」が少ない等で、精子が卵管を通りにくい。

免疫機能に考えられる原因

免疫機能の一つである「抗精子抗体」により精子を異物として排除する。

身体的・精神的に考えられる原因

何らかの身体的・精神的要因により性行為が困難な「性機能障害」。

原因が特定できない

検査を受けても原因が見つからず「原因不明の不妊」と診断されることも多くあります。

不妊治療の内容は?

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検査で不妊の原因を調べたら、原因や状況にあわせて治療がはじまります。

不妊の原因が子宮筋腫などの病気にある場合は、その病気の治療を優先したあとに不妊治療に入ることもあります。

不妊治療の方法は大きく2つにわけられ、自然に近い形の妊娠を目指す「一般不妊治療」と、原因が特定できない場合や疾患が見られる場合に選択される「生殖補助医療」があります。

主な内容は以下の通りです。

一般不妊治療

自然に近い形で妊娠する可能性があると判断された際に行われるのが、「一般不妊治療」です。

タイミング法

妊娠しやすいタイミングを医師がアドバイスし、その時期にあわせて性行為を行うことで、妊娠の確率を上げるのが「タイミング法」です。

基礎体温や尿中の黄体化ホルモンの測定、超音波検査などで排卵日を予測して、排卵日の少し前に性行為を行います。通院して排卵日の予測の精度を高めることで、妊娠率も高まります。

排卵誘発法

排卵が起こりにくい女性に、排卵を誘発する「排卵誘発剤」という薬を使って卵巣を刺激し、排卵を起こさせる方法です。排卵のタイミングにあわせて性行為を行い、妊娠率を高めます。

人工授精(AIH、AID)

タイミング法などで妊娠できなかったときには、「人工授精」を行うことが多くあります。

人工授精とは、精液から元気な精子を採取し、排卵に近いタイミングで直接子宮内に注入する方法です。勃起不全や射精障害などの男性側に不妊の原因がある場合や、女性側の頸管粘液に異常がある場合などに行われます。

痛みも少なく、数分間安静にしたら普段通りの生活が可能です。

生殖補助医療(特定不妊治療)

一般不妊治療で妊娠に至らなかった場合や、病気が原因で不妊の状態である場合などに行われるのが、「生殖補助医療(特定不妊治療)」です。

体外受精

体外受精は、女性から卵子を、男性から精子を取り出して体外で受精させ、培養した受精卵を子宮に戻すことで妊娠率を高める方法です。ほとんどの不妊原因に対して有効といわれています。

顕微受精

顕微授精は、体外受精のように精子と卵子の自然受精を見守るのではなく、1つの精子を体外で直接卵子に注入して授精させ、その後、受精卵を培養して子宮へ戻す方法です。

主に精子の状態が悪いときに行われ、射出精液中に精子が見られない無精子症の人なども、精巣から精子を取り出して顕微授精を行うことで、妊娠できる可能性があります。

不妊治療の費用は?保険は適用される?

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不妊治療に必要な費用は、医療機関によって異なります。一般不妊治療、生殖補助医療には保険が適用されるため、自己負担額は3割となります。事実婚のカップルも、保険適用の対象となりますよ。

1回あたりの治療費は、以下を目安にしてくださいね。

【一般不妊治療】

  • タイミング法:2,000円〜1万円(自己負担額は数百〜数千円)
  • 排卵誘発法:内服薬であれば数百円ほど、注射などを行う場合は数千円ほど
  • 人工授精:約2~3万円(自己負担額は数千〜1万円)

【生殖補助医療】

  • 体外受精:約10~30万円(自己負担額は3〜10万円)
  • 顕微授精:約30~50万円(自己負担額は10〜17万円)

保険適用の年齢・回数制限に注意

ただし、生殖補助医療である体外受精や顕微授精は、保険が適用される回数や年齢に上限があるので注意が必要です(※2)。

年齢制限

● 治療開始時に、女性の年齢が43歳未満であること
なお、男性の年齢制限はありません。

回数制限

● 初めての治療開始時の女性の年齢が40歳未満の場合
→通算6回まで保険適用

● 初めての治療開始時の女性の年齢が40歳以上43歳未満の場合
→通算3回まで保険適用

不妊治療はパートナーと一緒に取り組もう

自分たちが不妊治療の対象かどうかはわかりにくいものです。

まずはパートナーとよく話し合い、妊娠への第一歩として、二人で検査に臨んでみてはいかがでしょう。夫婦で協力して、納得のいく方法が見つかるといいですね。

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