妊娠中、何らかの理由で自然分娩が難しいと判断されると、帝王切開での分娩になる場合があります。このときにあらかじめ手術日を決めて計画的に行われる帝王切開を「予定帝王切開」といいます。今回は予定帝王切開について、手術の時期や流れ、実施予定日より前に陣痛が来たときの対処などをご説明します。
予定帝王切開とは?
帝王切開には、予定帝王切開と緊急帝王切開の2種類があります。
自然分娩(経腟分娩)が難しいと判断され、分娩時のリスクを回避するために、最初から予定を立てて帝王切開で出産するのが「予定帝王切開」です。
もう一方の「緊急帝王切開」は、もともと自然分娩を予定していたものの、妊娠中や分娩中に何らかのトラブルが起きた場合に急遽行われる帝王切開のことを指します。
どちらの方法も、ママのお腹を切開して胎児を取り出すことに変わりはありませんが、適応されるケースが異なります。
帝王切開が決まると、出産や産後の流れが気になりますよね。
ninaruオンライン教室では、「出産の流れ&準備講座」をご準備しています。
帝王切開のケースや出産のときにしかとれない臍帯血のトピックも盛り込まれているので、ぜひお時間があれば参加してみてくださいね。
予定帝王切開になるケースとは?
あらかじめ手術日を決めて帝王切開が行われるケースは、赤ちゃんに要因がある場合と、ママに要因がある場合の2つに分けられます(※1)。
赤ちゃん側の要因
1. 胎位異常
正常な状態であれば、赤ちゃんは足を上にして、頭から生まれてきます。
しかし、頭と足の位置がひっくり返ったいわゆる「逆子」の状態(骨盤位)や、子宮に対して赤ちゃんの体が横になった状態(横位)などの場合、経腟分娩では赤ちゃんに危険を伴うため、予定帝王切開になることがあります。
2. 多胎妊娠
双子や三つ子を妊娠した多胎妊娠の場合、それぞれ胎児が小さいために経腟分娩に耐えられない、あるいは第一子の出産後に第二子が逆子になってしまう、などといったリスクがあるため、予定帝王切開になるケースが多くなります。
3. 巨大児
赤ちゃんの推定体重が4,000gを超えた場合、ママの産道が損傷したり、赤ちゃんの肩甲骨が引っかかって難産になったりするリスクがあるため、予定帝王切開を行うことがあります。
4. 前置血管
胎児を包む卵膜の直下に、臍帯血管が走っていることがあります。この臍帯血管がママの内子宮口に面している状態を「前置血管」といいます。
前置血管は、破水すると卵膜と一緒に破裂し、出血してしまうリスクがあるため、あらかじめ前置血管とわかっている場合は予定帝王切開になります。
ママ側の要因
1. 帝王切開・子宮手術の経験がある
帝王切開での出産経験がある場合、手術で切開した子宮壁の箇所が薄くなっているため、次の出産時に自然分娩をすると子宮破裂などのリスクがあります。また、子宮の病気により「子宮筋腫核出術」などの手術を経験した女性も、同様のリスクがあります。
このような場合、子宮破裂のリスクを避けるために、経腟分娩ではなく予定帝王切開を選択することが多くなります。
2. 児頭骨盤不均衡
「胎児の頭(児頭)と、母体の骨盤の大きさが釣り合っておらず、スムーズな分娩が妨げられる状態」を、児頭骨盤不均衡といいます。
赤ちゃんの頭の大きさと比べてママの骨盤が狭いと、なかなか赤ちゃんの頭が産道を降りてこず、難産となることが多いため、X線による骨盤測定と胎児超音波計測の結果次第では、予定帝王切開のスケジュールが組まれます。
3. 前置胎盤・低置胎盤
胎盤の位置が正常よりも低く、子宮口を塞いでしまう「前置胎盤」になっていると、分娩時に大量出血を起こす危険性があります。
ただし、妊娠初期に前置胎盤であっても、妊娠週数が進むにつれて前置胎盤が治ることも多くあります。
前置胎盤の状態が続くと、妊娠中に出血することも多く、ほとんどの場合、妊娠37週頃までに予定帝王切開を行います。
また、胎盤が子宮口を覆っていなくても、胎盤の位置が低く子宮口に近い場合(低置胎盤)も、予定帝王切開になる場合があります。
4. 感染症・合併症
母体にHIVや性器ヘルペスなどの感染症があり、経腟分娩では胎児に感染する恐れがある場合や、糖尿病や心臓の疾患などの合併症があり、過度な負担をかけられないような場合に、予定帝王切開が選択されます。
予定帝王切開の時期は?週数はいつ頃?
予定帝王切開をするかどうか、手術日をいつにするかは、母体の状態と胎児の様子を注意深く観察しながら決められます。
前回の出産で帝王切開を経験している場合、妊娠初期のうちに予定帝王切開が決まることも。それ以外の理由での帝王切開の場合、その理由によって決定する時期が異なりますが、経腟分娩の可能性も視野に入れながら、ギリギリまで検討されることもあります。
帝王切開を行う時期も、帝王切開を必要と判断する理由よって異なります。一般的には、陣痛が起こる前で、なおかつ胎児が十分に発育したと認められるタイミングで帝王切開を行うことになるので、正期産の時期に入る妊娠37~38週頃に手術をするのがことが多くなります。
予定帝王切開の流れは?
病院によって流れは異なりますが、前日から入院をして麻酔によるトラブルを防ぐために絶食絶飲状態にします。そして、赤ちゃんの状態をチェックして、問題がなければ帝王切開を行います。
1. 手術前に浣腸や胎児の心音聴取をする
2. 点滴をする
3. 手術室に入って局部麻酔(もしくは全身麻酔)をする
4. 麻酔が効いたことを確認してから手術を開始する
5. お腹を切開して赤ちゃんや胎盤を取り出す
6. 切開部の縫合などを行う
予定帝王切開の手術は、通常1時間程度で終わります。麻酔をするので手術中に痛みはありませんが、帝王切開を終えてから痛みが現れ、しばらく続くことがあります。
予定帝王切開の費用は?保険は適応される?
厚生労働省が策定している診療報酬点数表(平成28年度)によると、予定帝王切開(点数表では「選択帝王切開」)にかかる手術の費用は20万1,400円です(※2)。
これに加えて、通常の分娩費用もプラスされ、自然分娩よりも入院日数も増える…となると、経済的な不安を覚えるパパやママも多いのではないでしょうか。
しかし、帝王切開の手術費には健康保険が適用されるので、このうちの3割が自己負担です。保険適用範囲内の医療費は、「高額療養費制度」により、所定の金額を超えた分が払い戻されます(※3)。
また、帝王切開にかかる費用の一部がカバーされる民間の医療保険もあるため、一度自分が加入している保険の契約内容を見直してみてください。
予定帝王切開の手術日より前に陣痛が来たら?
予定帝王切開で手術日を決めていても、それより前に陣痛が来る場合があります。経腟分娩にリスクを伴うことには変わりないので、緊急帝王切開で対応することになります。破水があったり陣痛が規則的になったりしたら、すぐ病院に連絡しましょう。
いざという時に慌てなくて済むように、早めに入院に必要な物を揃えておくのがおすすめです。産後に赤ちゃんが使うベビー用品も忘れずに準備してくださいね。
予定帝王切開の日まで落ち着いて過ごしましょう
「自然分娩で産みたい」と思っていても、母体と胎児の命を一番に考えた結果、予定帝王切開が選択されることもあります。経腟分娩でも帝王切開分娩でも、ママがお腹を痛めて新しい命を生み出すことに違いはありません。
手術に不安を感じることもあるかと思いますが、あらかじめ手術日がわかるため、お産に向けて心の準備をすることができるというメリットもあります。
1番大切なことは、赤ちゃんが元気に生まれてくることと、ママが元気に赤ちゃんを迎えることです。赤ちゃんに会える日を楽しみに、落ち着いた気持ちでマタニティライフを過ごせるといいですね。