常位胎盤早期剥離とは?症状や徴候、原因は?痛みはあるの?

記事監修 産婦人科医 中村 絵里
中村 絵里 産婦人科専門医。2001年、東海大学医学部卒業。神奈川県内の病院で産婦人科医としての経験を積み、現在は厚木市の塩塚産婦人科勤務。3児の母。「なんでも気軽に相談できる地元の医師」を目指して日々診療を行っ... 続きを読む

安定期に入ってから順調に妊娠週数が進むと、お腹の大きい状態にも慣れて、「あと少しで念願の赤ちゃんに会える!」と安心する人も多いかもしれません。しかし、無事に分娩が終わるまでは何が起きるかわからないもの。たとえば「常位胎盤早期剥離」は、発症頻度は少ないですが、胎児と母体に命の危険もある疾患です。今回は、常位胎盤早期剥離の原因や症状、治療法などをご説明します。

常位胎盤早期剥離とは?

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赤ちゃんが栄養や酸素をもらっている胎盤は、通常出産してから15~30分程度で自然に子宮から剥がれて外に出てきます。ところが、何らかの原因で、赤ちゃんがまだお腹の中にいるうちに、胎盤が子宮の壁から剥がれてしまうことを「常位胎盤早期剥離」といいます。

胎盤が剥がれると子宮壁から出血し、血腫が胎盤を圧迫します。そのため、母体のみならず栄養や酸素を必要とする赤ちゃんにまで影響を及ぼす怖い疾患です。

常位胎盤早期剥離の原因は?確率はどのくらい?

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常位胎盤早期剥離が起こる直接の原因はまだはっきりとわかっていませんが、以下に当てはまる人は発症リスクが高いとされています(※1,2)。

特に注意が必要なケース

● 過去に常位胎盤早期剥離になった
● 妊娠高血圧症候群
● 絨毛膜羊膜炎
● 前期破水
● お腹に外傷を負った(※)
● 外回転術を受けた

※ここで原因となるお腹の外傷は、主に交通事故によるもので、妊娠28週以降、特に常位胎盤早期剥離の発症頻度が高くなる32週以降は注意する必要があります(※3)。

その他のケース

● 羊水過多症
● 喫煙
● コカイン
● 子宮筋腫
● 多胎妊娠(双子など)
● 血栓関連の障害

常位胎盤早期剥離は、妊婦約100人に1人の確率(0.5~1.3%)で起きます。この数字だけ見ると極めて珍しいように感じますが、切迫早産と診断される妊婦のうち10人に1人は常位胎盤早期剥離が含まれるので、決して稀な疾患とはいえません(※1)。

日本においては常位胎盤早期剥離の約半分が妊娠30~36週に発症し、その週数で起きる早産の原因の5%を占めます(※1)。

常位胎盤早期剥離の症状とは?痛みはある?

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常位胎盤早期剥離の症状は、重症度により以下のように異なります(※1)。

軽症の場合

軽度の発症初期では、お腹が何となく張っている感じや腰痛があり、少量の不正出血が見られますが、下腹部痛は伴わないこともあります。

お腹の軽い張りなど、常位胎盤早期剥離の疑いがある症状が現れた場合、胎児の心拍数をモニターで確認し、場合によっては超音波検査や血液検査も行います。

重症の場合

重度の場合は、動けないほどの急激な下腹部痛が起こり、お腹は板のように硬くなり、少量の不正出血が見られることもあります。また、出血性ショックによる顔面蒼白、貧血、血圧低下も見られることがあります。

お腹の赤ちゃんに胎盤から酸素が行かなくなると、胎動は弱くなる、または最悪の場合、心音が確認できなくなることもあります。

最初は軽症であっても、急性早剥に陥る恐れもあります。妊娠中、お腹が張っているような気がする、少しでも出血があるといった場合は、すぐに産婦人科を受診するようにしましょう。定期的に自分で胎動の確認を行うことも大切です。

常位胎盤早期剥離のリスクは?死亡率は?

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常位胎盤早期剥離は母体と胎児、両方にリスクのある病気ですが、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

胎児へのリスク

胎盤が子宮から剥がれると、胎児への酸素と栄養の供給が止まってしまい、胎児死亡に至ってしまうことがあります(※1)。

激しい下腹部痛により、妊婦が救急車で病院に運ばれた時点で、赤ちゃんが弱りきっていると、緊急帝王切開後、蘇生処置をしても赤ちゃんに脳性麻痺などの障害が残る場合もあります。

重症例だと、胎児死亡率(周産期死亡率)は30~50%です(※2)。

母体へのリスク

常位胎盤早期剥離により、子宮内で大量出血が起こります。出血で生じた血腫がさらに周囲の胎盤を剥がし、全身の血管内に小さな血栓ができる「播種性(はしゅせい)血管内血液凝固(DIC)」を引き起こす恐れがあります(※1)。

DICを発症すると、出血性ショックが起こり、血液を凝固させる因子が消費されてDICが悪化し、さらに出血が止まらなくなる、という悪循環に陥ります。その結果、子宮摘出や母体死亡につながることもあります。

DICは、様々な疾患に合併して起こりますが、常位胎盤早期剥離は産科DICの原因の半分を占めます(※1)。重症の場合、母体死亡率は1~2%です(※2)。

常位胎盤早期剥離の早期診断は難しいの?

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母子ともに命に危険が及ぶ恐れがある常位胎盤早期剥離ですが、自覚症状のないときに超音波検査を行っても、4人に1人しか異常を見つけることができません(※1)。

妊婦健診のときに、胎児モニターの所見や超音波検査で胎盤が分厚くなっていることなどから判断し、常位胎盤早期剥離の疑いがあるときは緊急帝王切開などを検討します。

常位胎盤早期剥離の治療方法は?

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先ほどもご説明したとおり、常位胎盤早期剥離はDICを併発するリスクが高いため、一刻も早く診断と治療をする必要があります。

お腹の赤ちゃんが生きていれば、基本的には帝王切開で取り出します。しかし、妊婦の子宮口が全開で、帝王切開よりも早く取り出せそうな場合は、経腟分娩を選択することもあります(※1)。

なお、血腫が大きくなると、子宮筋層内に血液が入りこみ、分娩を終えたあとも出血が止まらず、「弛緩出血」が起こることもあります。

もし止血が難しい場合は、母体の命を救うために動脈塞栓術や子宮摘出術といった手術をしなければならない場合もあります。

常位胎盤早期剥離を予防する方法は?

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常位胎盤早期剥離の原因が明確でないため、確実な予防方法はありません。ただ、早期発見をするためにも、次のようなことには注意しておいてください。

● 妊婦健診をきちんと受けること
● 血圧が高くなりすぎないよう管理をする
● お腹を強くぶつけるなど、外傷があったらすぐ受診する
● 喫煙をしない

常位胎盤早期剥離は、迅速な対応が大切

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常位胎盤早期剥離の疑いがあった場合、迅速な診断と治療をしなければ、母体と胎児の両方にリスクが生じます。「少しお腹が張っているかも」と感じたら、我慢せずすぐに産婦人科を受診しましょう。

過去に常位胎盤早期剥離になった人、前期破水があったり妊娠高血圧症候群と診断されたりした人は、特に体調管理に注意して過ごしてください。

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