帝王切開での出産を控えたママにとって、手術にかかる費用は気になりますよね。経腟分娩に比べて高額になると心配する人も多いようですが、健康保険による制度を利用して費用を抑えることができます。今回は、帝王切開のママを助ける「高額療養費制度」について、返還される金額や手続き方法などをご紹介します。
帝王切開の費用はどれくらい?

帝王切開にかかる手術の費用は、厚生労働省が策定している診療報酬によって決まっています。
診療報酬は2年おきに改定されていますが、平成28年度の診療報酬点数表によると、緊急帝王切開が22万2,000円、選択帝王切開(予定帝王切開)が20万1,400円となります(※1)。
これに通常の分娩費用もかかるため、経腟分娩よりも高額な医療費となります。
帝王切開は高額療養費制度の対象になる?

保険が適用される診療で、費用が一定額を超えると「高額療養費制度」と呼ばれる制度が適用されます。
経腟分娩は異常や病気ではないため健康保険が適用されないのに対し、手術が必要な帝王切開は健康保険の適用範囲内となり、費用も高額療養費制度の適用に必要な額を超えるのが一般的です(※2,3)。
そのため帝王切開は高額療養費制度の対象となります。
帝王切開で利用できる高額療養費制度とは?

それでは、高額療養費制度について詳しく見ていきましょう。
高額療養費制度とは、帝王切開に関わらず、1ヶ月の間に医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が上限額を超えた場合に、その超えた金額分が払い戻される制度です。上限額は世帯年収によって異なります(※3)。
例えば年収が約370〜770万円の世帯の場合、1ヶ月の自己負担の上限額は次の通りです。
上限額=8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
仮に帝王切開を受けたことでひと月あたりの医療費(保険適用前)が50万円になったとすると、自己負担の上限額は8万2430円となります。
保険が適用された際の自己負担額が3割だとすると、50万円の医療費の場合15万円の自己負担が必要になります。ここで高額療養費制度を申請した場合、自己負担が必要な15万円から8万2430円を引いた、6万7570円が払い戻されます。
帝王切開で高額療養費制度を利用するときの注意点は?

このように帝王切開で出産したママにはありがたい高額療養費制度ですが、いくつか注意点があります(※3)。
出産時の費用で含まれないものがある
すでに述べた通り、高額療養費制度が適用されるのは健康保険対象内の費用になります。そのため、健康保険対象外となる、入院時の食費、差額ベッド代などは含みません。
月をまたいだ場合、医療費を合算できない
高額療養費制度は当月1ヶ月の間の高額医療費が対象になるため、2つの月にまたいで入院した場合、医療費を合算しての計算ができません。
そのため、例えば3月31日に手術をしたとすると、手術日が特に高額なため、3月分は高額療養費制度を申請して支給を受けることができますが、4月1日以降の入院費用はそれほど高くならないため、4月分は通常通りの支払いが必要となる場合があります。
帝王切開での高額療養費制度の手続き方法は?

ここでは、帝王切開で出産する場合の高額療養費制度の申請手続き方法をご紹介します。
なお、前もって帝王切開で出産することが決まっている場合は、出産前に申請して「限度額適用認定証」、あるいは「限度額適用認定・標準負担額減額認定証」をもらっておきましょう(※3)。
退院当日にすでに高額療養費が支給されたものとして請求されるので、大金を用意する必要がなくなります。
高額療養費制度の申請に必要なもの
● 高額療養費支給申請書
● 医療機関の領収書
上記の他にも健康保険証や印鑑などが必要になることもあるので、事前に加入している公的医療保険の問い合わせ先などに確認しておきましょう。
事前に高額療養費制度を申請するときの流れ(※4)
1. 申請先の窓口で申請書をもらい、記入する
2. 申請書を提出する
3. 限度額適用認定証を受け取る
4. 出産後、医療機関での支払い前に、限度額適用認定証と保険証を提出する
産後に高額療養費制度を申請するときの流れ(※5)
1. かかった医療費の総額のうち、3割を医療機関で支払う
2. 申請先に医療機関の領収書を添付した申請書を提出する
3. 高額療養費が口座に振り込まれる
帝王切開は高額療養費制度で負担額を減らそう
帝王切開というだけで気が重いなか、費用のことも気になってストレスを感じてしまう妊婦さんも多いと思います。しかし、高額療養費制度によって医療費だけでも軽くなるのであれば、非常に助かりますよね。
経腟分娩で大丈夫と言われた人も、お産の経過次第では、緊急帝王切開に切り替わることがあるので、覚えておいて損はありません。ほかにも、民間企業の医療保険に加入している場合、帝王切開の手術が保険金払いの適用範囲内になることもあります。
様々な制度を利用して、少しでも医療費の負担を減らしたいですね。