妊娠中は「逆子」のことを気にしている人は多いと思います。逆子とはどういう状態のことで具体的にどんなリスクがあるのでしょうか?また、逆子なら必ず帝王切開になるのかも気になりますよね。そこで今回は逆子とはどういうものか、原因やリスクなど知っておきたい基本の情報をご紹介します。
逆子とは?
逆子とは、子宮内で赤ちゃんの頭が下ではなく、上を向いている状態のことをいい、医学的には「骨盤位」と呼ばれます。本来であれば、赤ちゃんは頭から産道を通り抜けるため、頭は子宮口のほうを向いていますが、逆子の場合は足やお尻が子宮口の方を向いています。
妊娠初期・中期の子宮内は赤ちゃんが動き回るゆとりがあるので、頭の位置は上を向いたり下を向いたりと頻繁に入れ替わっています。そのため、妊娠中期までは妊婦さんの30〜50%が逆子と言われています(※1)。
妊娠後期になると赤ちゃんの頭は大きく・重くなるので自然と下を向き、そこで固定されます。
しかし、何らかの理由で赤ちゃんの頭が下を向かないと、子宮内を動き回るスペースがなくなり、頭が上を向いたまま固定されて逆子になってしまいます。出産時まで逆子が続く確率は全体の3〜5%とされています(※1)。
逆子には様々な種類があるの?
一口に逆子といっても、その体勢にはいくつか種類があります。逆子の体勢は、お尻を下に向けた「殿位」と、膝小僧を下に向けた「膝位」、足を下に向けた「足位」の3つに大きく分けられ、さらに足の状態で細かく以下のように分類されます。
殿位

お尻が下を向いている殿位は、足の向きによってさらに「単殿位」、「全複殿位」、「不全複殿位」の3つに分類されます。
逆子のうち殿位になるのは約75%で、他の体勢に比べて出産時のリスクが低い体勢です(※1)。
単殿位
お尻が下になっていて、両足が上を向いている状態。
全複殿位
お尻が下を向いていて、体育座りのように両足の膝を曲げている状態。
不全複殿位
お尻を下に向けているのは全複殿位と同じだが、体育座りで片足だけを上にあげている状態。
膝位

膝小僧が下を向いている膝位は、両膝を曲げている「全膝位」と片方を足を上にあげている「不全膝位」の2つがあります。
膝位になるのは、逆子のうちわずか約1%とされていて、出産時のリスクは中程度の体勢です(※1)。
全膝位
両膝を曲げて、膝小僧を下に向けている状態。
不全膝位
片膝を曲げて膝小僧を下に向け、もう一方の足は上にあげている状態。
足位
足を下に向けた足位は、両足を伸ばしてお腹の中で立っているような状態である「全足位」と、片足を下に伸ばして、もう一方の足を上にあげている「不全足位」の2つに分けられます。
足位は、逆子のうち約24%がなるとされていて、出産時のリスクが最も高い体勢です(※1)。
全足位
両足を伸ばして、お腹の中で立っているような状態。
不全足位
片足を下に伸ばし、もう一方の足は上にあげている状態。
妊娠後期に逆子になる原因は?
逆子は、赤ちゃんが子宮内でうまく動けないことによって生じると考えられています。
逆子の多くは、出産までに動いて頭が上を向きますが、妊娠後期を迎えても逆子のままである原因としては、以下のようなものが挙げられます。
母体側の原因
- 骨盤が小さい(狭骨盤)
- 胎盤の異常(前置胎盤、低置胎盤)
- 子宮の異常(子宮奇形・子宮筋腫)
胎児側の原因
- 早産
- 双子や三つ子などの多胎妊娠
- 羊水過多
- 胎児奇形(水頭症など)
これらの原因があると子宮内で胎児がうまく動けずに逆子になる可能性が高くなると考えられています。しかし、多くの逆子は原因がはっきりしていないため、誰でも逆子になる可能性はあります。
逆子になりやすい時期はあるの?妊娠7~8ヶ月頃?

先述のように、妊娠28週頃までは赤ちゃんは体勢を上下関係なく動かしていますが、徐々に頭が重たくなってきて自然と頭が下がり、そのままの状態になります。
そのため、妊娠7ヶ月頃までに逆子といわれていた人も妊娠28〜31週頃(妊娠8ヶ月)までには正しい体勢に戻っていることがほとんどです。
しかし、妊娠32週を過ぎても逆子の状態が続いていると、その後に正しい位置に戻すのは難しくなってきます。赤ちゃんの体が大きくなって子宮内に動き回る余裕がなくなり、羊水も減ってきて、赤ちゃんは自力で回転できなくなってしまいます。
逆子を治す方法はあるの?

逆子を正しい姿勢に戻す方法としては以下の方法があります。
逆子体操
骨盤を緩めてお腹の中で赤ちゃんが動きやすい状態を作るのが逆子体操です。赤ちゃんが自分で動いて、逆子の状態から自然に姿勢を戻します。
逆子体操は、妊娠30週を過ぎてから就寝前などに行うのが効果的です。
ツボ押しとお灸
逆子に効くツボに、「三陰交(さんいんこう)」と「至陰(しいん)」の2つがあります。三陰交はくるぶしの内側から指4本分離れたふくらはぎの箇所にあり、至陰は足の小指のすぐ外側にあります。
この2つのツボを、指で押すかお灸で刺激します。ツボ押しやお灸は、妊娠28週目以降に行うと効果的とされていますよ。
外回転術
医師が妊婦さんのお腹に手を添えて、外から赤ちゃんをぐるりと回転させる方法を外回転術といいます。子宮収縮を薬で抑え、骨盤を枕などで高く上げて、手で赤ちゃんの頭部を反背中回りに回転させて体勢を戻す方法です。
逆子を治す方法をいくつかご紹介しましたが、逆子を自分で治すのは難しいので、かかりつけの医師に相談しながら進めてくださいね。
逆子にはどんなリスクがあるの?出産は帝王切開が多いの?

お腹の中の赤ちゃんが逆子でも、妊娠経過や赤ちゃんの成長には影響しません。しかし、逆子の場合は分娩に様々なリスクが伴います。
前期破水が起こりやすい
正常な姿勢の場合、赤ちゃんの頭が子宮の出口において卵膜と密着しているため、頭が降りてきてから破水が起こることが一般的です。
しかし逆子の場合、お尻や足は卵膜とうまく密着しないため、子宮口の膜に圧が直接かかり、赤ちゃんがまだ降りてきていない状態でも破水しやすくなります。
へその緒が赤ちゃんより先に子宮外に出やすい
逆子の場合、子宮の出口と赤ちゃんとの間に隙間があるため、破水時に赤ちゃんより先にへその緒が腟内に出てしまう恐れがあります。
この場合、胎盤からへその緒を通して流れてくる血流が滞ってしまい、胎児機能不全を引き起こす可能性があります。
分娩が遅れやすい
逆子の場合、赤ちゃんの頭による子宮口の圧迫刺激がないため、陣痛が誘発されず分娩に時間がかかりやすくなります。
分娩に時間がかかり赤ちゃんにストレスがかかる状態が長引くと、赤ちゃんが低酸素状態になって仮死状態や後遺症を引き起こすリスクもあるため、胎児や母体の状態を考慮して、安全を優先して帝王切開による出産を選択する病院が多いようです。
逆子で帝王切開を判断するタイミングは?

病院の方針にもよりますが、妊娠30〜35週まで逆子を治す方法を試しながら、妊娠36週までに逆子が治らない場合には帝王切開が検討されます。
逆子であっても、殿位など比較的リスクが低い体勢なら、帝王切開ではなく経腟分娩で出産できる可能性もあります。どんな場合でも医師とよく相談し、納得できる出産ができるといいですね。
逆子でもリラックスして過ごそう
逆子は分娩前に治ることもありますが、たとえ戻らなかったとしてもかかりつけの産婦人科医とよく相談し、安全な分娩方法を検討することが大切ですよ。
逆子は出産のときにいくつかリスクがあると思うと、不安かもしれません。しかしの不安ばかりを抱えているとストレスになってしまうので、お腹の中の赤ちゃんと会話しながらリラックスしてマタニティライフを楽しんでくださいね。