年々、暑さが厳しくなる日本の夏。35度以上の猛暑日が続くと心配なのが熱中症です。特に小さい子供やお年寄りは注意が必要といわれますが、妊婦さんも注意が必要です。そこで今回は、妊娠中の熱中症について、妊婦はかかりやすいのか、症状や治療法、赤ちゃんへの影響、対策をご紹介します。
妊婦は熱中症にかかりやすいの?
「熱中症」とは、気温や湿度の高さに体が対応できなくなり、体内に熱が溜まった状態のことをいいます。
熱中症を引き起こす要因
熱中症は、下記のような「環境」「体調」「行動」が重なったときに起きやすいとされています(※1)。
- 高温多湿、強い日差し、熱波などの環境
- 体力低下、疲労、寝不足といった体調
- 激しい運動をする、水分補給をしない、屋外で作業するなどの行動
妊娠中はホルモンバランスの変化や心拍数の上昇により疲れやすくなるため、非妊娠時に比べて熱中症にかかる危険性が高いといえます。
また、妊娠初期は基礎体温が高く、妊娠中期以降も体感温度は高い状態が続くため、体内に熱がこもって熱中症にかかりやすくなります。さらに、基礎代謝が高まって汗をかきやすくなることも影響すると考えられます。
妊婦の熱中症の症状は?
気温が高い場所や日差しが強い屋外にいるときに下記のような症状が一つでも現れたら、熱中症の危険性があります。
熱中症の主な症状
- めまい・立ちくらみ
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 筋肉のけいれんやこむら返り
ただし、妊娠中は熱中症にかかっていなくても上記の症状が起こりやすい状態です。
たとえば、多くの妊婦さんが悩まされる貧血の症状には、めまいや立ちくらみ、頭痛があります。また、吐き気や嘔吐は、つわりの代表的な症状です。こむら返りもお腹が大きくなるにつれて起こりやすくなります。
そのため、このような症状が現れても、熱中症なのか妊娠の影響によるものなのか判断が難しい場合もあるでしょう。しかし、暑さが厳しい環境でこのような症状が現れたときは熱中症の可能性が高いので、早めに対処をしたり、受診したりするようにしてください。
妊娠中に熱中症になったらどうする?治療法は?
妊娠中に熱中症の症状が出たら、まずは涼しい室内に移動しましょう。水分補給をして体を冷やし、しっかり休んで回復してくれば、そのまま様子をみます。
しかし、休んでも回復しなかったり症状が悪化したりしたときは、かかりつけの産婦人科や近くの病院を受診してください。
病院での治療法は熱中症の程度によって異なりますが、点滴をして水分・栄養補給をしたり、全身を冷却したりします。しばらく休んで回復すれば帰宅でき、症状によっては入院が必要になることもあります。
自力で水が飲めない、意識障害があるなど、救急車で搬送されるほど重度の熱中症の場合は、胃管や膀胱カテーテルを用いて体の内部から冷却したり、集中治療室で人工呼吸器を用いた呼吸管理を行ったりします(※2)。
妊娠中に熱中症になると赤ちゃんに影響はあるの?
妊娠中に熱中症にかかった場合、すぐに胎児に影響が出ることはありませんが、母体に負担がかかった状態が続くと、お腹の張りや出血が起こりやすくなることがあります。
また、ストレスや疲れによってホルモンバランスが乱れると早産が起こるリスクが高まるので、暑さによる疲れを溜めないように注意しましょう(※3)。
熱中症の症状が顕著に出ていなくても、夏の妊婦さんは体力を消耗しやすい状態です。しっかりと対策をして熱中症を予防するようにしましょう。
妊婦の熱中症対策は?
妊娠中の熱中症を予防するために、下記のような対策をしましょう。
水分と塩分をバランスよく補給する
熱中症対策でまず大切なのは、水分補給です。特に妊娠中は、代謝が上がって汗をかきやすく喉が乾きやすい状態なので、意識的に水分を摂るようにしましょう。
ただし、汗を大量にかいたときに水分だけを摂っていると、体内のナトリウム濃度が薄くなって電解質バランスが崩れてしまうため、水分と塩分をバランスよく補給することがポイントです。
妊娠中に塩分を摂りすぎると、血圧が上がって妊娠高血圧症候群になるリスクが高まるので、くれぐれも過剰摂取には気をつけてください。
外出時は日よけアイテムを使う
外に出るときは、日傘をさしたり帽子をかぶったりして、日差しを避けるようにしましょう。
タオルでくるんだ保冷剤を持ち歩くようにして、適度に首元や手首を冷やすのもおすすめです。
猛暑日は無理に外出しない
注意報が出るほどの猛暑日は、できるだけ外出をしないようにしましょう。近場なら大丈夫だろうと思っても、妊娠中は体調が変化しやすいので注意が必要です。
どうしても外出しなくてはいけないときは、比較的気温の低い朝の時間帯を選ぶ、近距離でもバスやタクシーを利用する、誰かと一緒に出かけるようにする、といったように万全の対策をするようにしてください。
仕事を続けている妊婦さんは、通勤途中に熱中症にならないように注意してくださいね。
しっかり休息をとる
前述の通り、疲れが溜まると熱中症にかかりやすくなります。妊娠中は、ただでさえ疲れやすいので、1日の終わりにはゆっくり入浴をする、睡眠をしっかりとる、といったことを意識して、十分な休息をとるようにしてください。
家事や仕事も、暑い日は体調を優先して、くれぐれも無理をしないようにしましょう。
栄養バランスのとれた食事を心がける
妊娠中は、つわりに悩まされたり、大きくなるお腹で胃が圧迫されたりして思うように食事が摂れないこともありますが、熱中症予防には栄養のあるものをしっかり食べることが大切です。
特に、たんぱく質、ミネラル、ビタミンといった栄養素は熱中症対策に不可欠なので、少量でもいいので、肉や魚、野菜などを食べるように心がけましょう。
つわりや暑さの影響でほとんど何も口にできないという場合は、早めに産婦人科を受診してください。
エアコンや扇風機を適切に使う
「妊娠中は体を冷やさないように」とよくいわれますが、夏場はエアコンの冷房や扇風機を適切に使って、体内に熱を溜めないようにしましょう。
ただし、体を急激に冷やすと、体温調節ができなくなったりお腹が張りやすくなったりするため注意が必要です。公共施設やオフィス、電車などは冷房が強く効いているので、外出時は薄手のカーディガンやストールを持参するといいですね。
妊娠中の熱中症は予防が大切
熱中症というと、小さい子供やお年寄りがかかりやすいイメージが強いかもしれませんが、妊婦さんも熱中症にかかりやすいということを意識して、できるかぎりの予防をするようにしましょう。
妊娠中は、ただでさえ体力の消耗が激しく疲れやすいので、真夏に妊婦生活を送るのは大変なことです。妊娠経過が順調であっても、暑さのせいで体調を崩すこともあります。
水分と栄養、休息をしっかりとることを心がけ、お腹の中の赤ちゃんとママの体を第一にして夏を過ごしてくださいね。