妊娠中の症状として「喉が渇きやすくなる」というものがあります。しかし、好きな飲み物を飲めばいいというわけではなく、水分補給の方法にも注意が必要です。妊娠中にどうして喉が渇きやすくなってしまうのか、なぜ妊婦は水分を取ったほうがいいのか、気をつけたい飲み物など、妊娠中の水分補給についてご紹介します。
妊娠中に喉が渇く理由は?妊娠初期と後期は特に渇きやすいの?
妊娠中に喉が渇きやすいのは何が原因なのでしょうか?
原因は主に3つあります。
プロゲステロンの分泌量が増える
妊娠するとプロゲステロンという女性ホルモンの分泌量が増えます。プロゲステロンには子宮内膜を厚くするという、妊娠の維持に必要不可欠な役割がありますが、他にも水分を蓄える作用と体温を上げる作用があり、いくら水分摂取をしても喉が渇きやすく感じるとされています。
代謝系が変化する
お腹にいる赤ちゃんは、糖をエネルギーとして取り込みます。その分、母体は糖の利用を節約し、脂肪組織を分解することでエネルギーを作り出すといわれています。
また、妊娠中は基礎代謝が上がるだけでなく、胎児の成長にともない、糖代謝、脂質代謝、タンパク代謝、水代謝などが変化するため、妊婦は汗をかきやすくなるとも考えられています。
つわりなどで水分不足になる
また、妊娠初期はつわりで吐き気をもよおして、うまく水分補給ができないことが多いので、いつも喉が渇いたような感覚になる妊婦さんもいます。
さらに、妊娠後期になって子宮が大きくなると、胃腸が圧迫されて吐き気や嘔吐を起すこともあり、その場合も体の水分は失われてしまいます。こういった面でも、妊婦さんは喉が渇きやすく、水分が必要なのです。
そもそも、お腹にいる赤ちゃんの分まで水分が必要だと考えたら、喉が渇くのも当たり前かもしれませんね。
妊婦は喉が渇いたときに水分補給するべき?
妊娠中にしっかり水分補給をすることで、妊婦さん自身が脱水症状になるリスクが低くなります。人間は、たった5%の水分が体から失われただけで脱水症状が出てしまい、体がうまく機能しなくなる恐れがあるので注意が必要です(※1)。
また、水分を摂ると自然とトイレに行きたくなり、体の老廃物を出すことができるため、便秘予防や肌の乾燥予防にもつながります。適度な水分補給が妊婦の体を守っているといっても過言ではありませんよ。
特に妊娠初期につわりがひどいと、水分をうまく取れずに妊娠悪阻になってしまうリスクもあるので、意識的に水分補給をしましょう。
ただし、つわり等で水分が全く取れない、夏場でひどく汗をかいている、ということでなければ、無理してたくさん水を飲む必要はありません。あくまでも適度な水分補給を心がけましょう。
妊娠初期・中期・後期別!喉が渇くときの対策は?
個人差はありますが、妊娠初期・中期・後期と、どのタイミングでも喉の渇きは感じるようです。特に妊娠初期では急な体の変化から喉の渇きを敏感に感じる時期で、普段の生活の中で飲み物を飲む機会が増えて、「あれ?妊娠かな?」と気づく人も多くいます。
妊娠週数で体の状態も変わってくるため、タイミングにあった喉の渇き対策をご紹介します。
妊娠初期の喉の渇き対策
つわりがひどくてなにも飲めないという妊婦さんは、氷をなめるのがおすすめです。口の中でゆっくり溶かす程度でも水分補給の効果はあります。また、炭酸水は喉当たりが良くて飲みやすいという人もいますよ。
水分補給は大切なので、氷も口に入れられないほどのつわりのときは、遠慮なく産婦人科医に相談してみてくださいね。
妊娠中期の喉の渇き対策
妊娠中期になるとつわりも落ち着いてきて、飲み物を飲むのも楽になりますよね。この時期に注意したいのは、水や飲み物だけでなく野菜や果物などでも水分補給を意識することです。
つわりの時期には食べられなかった、という妊婦さんも、妊娠中期になったらできるだけバランスのよい食事を心がけましょう。
妊娠後期の喉の渇き対策
妊娠期間も長くなって妊婦生活に慣れてきた頃ですが、妊娠後期にもなると赤ちゃんが大きく成長して、基礎代謝が妊娠前よりも20~30%上がることもあります。たくさん汗をかくと、それだけ喉が渇くため、麦茶や小豆茶、ミネラルウォーターなどを、1日1〜1.5リットルを目安に飲むようにしましょう。
喉が渇くからといって、飲み過ぎるとむくまないの?
「飲み物を飲む=むくんでしまう」というわけではありません。腎臓の機能が落ち、水分が外に出ていかなくなってしまうことが「むくみ」であって、妊娠中でも腎臓がしっかり機能していればむくみません。
妊婦さんは、目安として1日に1~1.5リットル、便秘がある場合は1.5~2リットルの水が必要とされています。一度にたくさんの量を摂るのではなく、こまめに、ゆっくり摂ることを心がけましょう。
また、特に夏は冷たい飲み物が欲しくなりますが、水分を摂取するときは常温で飲むと、肝臓の負担も少なくなり、むくみにくくなりますよ。また、むくみが気になる場合は、塩分を控えた食生活を心がけましょう。
妊娠中、喉が渇くときに注意したいことは?
妊娠中は飲み物の成分も気になりますよね。飲みたいものを飲めばいいというわけにもいかないので気苦労も絶えませんが、一体どのような成分に注意したら良いのでしょうか?
コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン
コーヒー・紅茶にはカフェインが含まれており、神経興奮作用で眠れなくなることも多く、また、胎盤を通して赤ちゃんにも影響がある可能性も否定できないため、妊娠中はできるだけ控えましょう(※2)。
どうしても飲みたいという人は、1日1~2杯程度に抑えるのが望ましいとされています。また、最近はノンカフェインのコーヒーや紅茶も増えているので、ぜひ試してみてください。リラックス効果もあるので、たまに飲む程度なら良い気分転換になりますね。
お酒に含まれるアルコール
アルコールは直接赤ちゃんに影響が出ます。発育障害や脳の異常などの原因につながることもわかっています。胎児性アルコール症候群という障害になりやすくなってしまうので、妊娠がわかった時点で控えてください(※3)。
緑茶・ウーロン茶に含まれるタンニン
コーヒーや紅茶をあまり飲めないので、お茶を好む妊婦さんは多くいます。ただし、お茶の種類には注意が必要です。お茶の中でも緑茶・ウーロン茶には、鉄分が吸収されにくくなるタンニンという成分が入っています(※4)。病院で貧血の診断を受けている人は摂取量に気をつけましょう。
また、ジュース類も飲み過ぎには注意してくださいね。果汁100%ジュースは美味しく爽やかでついつい飲んでしまいますが、ジュースは糖質・カロリーが高いので、体重が増えてしまいがちです。妊娠中にとるなら、不純物が含まれていない水や、カフェインの含まれていない麦茶などがベストです。
妊娠中に喉が渇くときは、水分補給をコツコツと
妊娠中には様々な体のメカニズムによって水分が必要となります。水分を摂りすぎると、むくんでしまうのではないかと気にする人もいるかもしれませんが、適切な量を適切に飲めば、それほど心配することはありませんよ。
これを機会に、何を飲めばいいか、何を飲んではいけないかをしっかり頭に入れ、喉の乾きを感じる前に、コツコツと水分補給することを心がけてくださいね。