妊娠すると、「一日でも早く赤ちゃんの顔が見たい!」と思うものですが、赤ちゃんは時間をかけてママのお腹の中で育ちます。ところが、正期産と呼ばれる妊娠37週~42週未満より前に赤ちゃんが産まれる「早産」、または生まれそうになる「切迫早産」になる妊婦さんもいます。今回は切迫早産について、原因や症状、兆候、治療法、予防法をまとめました。
切迫早産とは?早産との違いは?

切迫早産と早産は別物です。早産は、赤ちゃんが妊娠22週0日~36週6日の間に生まれることですが、切迫早産とはその一歩手前の早産しそうな状態になることをいいます。子宮収縮が頻繁に起こり、子宮口が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態や破水してしまった状態で、もうしばらく妊婦さんのお腹の中で成長すべきなのに、赤ちゃんが生まれそうになってしまいます。
切迫早産と診断されたら、早産にならないよう日常生活への配慮や治療を受ける必要があります。症状の程度や対処によっては、早産にならずにすむ場合も多くあるので医師の指示に従って適切な対応を取るようにしましょう。
切迫早産の原因は?

切迫早産の主な原因は以下のようになります。
- 絨毛膜羊膜炎などの感染症
- 子宮頸管無力症や子宮筋腫、子宮奇形など子宮の異常
- 多胎妊娠
原因によって予防できることとできないことがありますが、多胎妊娠や何らかの子宮異常があると診断された方は注意が必要です。
切迫早産の症状や兆候は?

切迫早産の症状として、次のような兆候が見られることがあります。いつもと違う症状が少しでもあれば、すぐに産婦人科に連絡しましょう。
下腹部痛や背部痛
しばらく安静にしても痛みが治まらず、強くなるときは注意が必要です。子宮収縮が起こっている可能性があります。
お腹の張り
多くの妊婦さんが経験する症状なので、切迫早産とは気づかないこともよくあります。すぐに治まるお腹の張りだと問題ないことが多いですが、安静にしていても規則的にお腹が張り続けたり、10分間隔より短くなると要注意です。
不正出血
出産前には「おしるし」と呼ばれる、出血が混じったおりもの状のものが性器から出ますが、まだ出産時期ではないのにそのおしるしがあると切迫早産と判断される可能性が高いです。
おりものなどに混ざった少量の出血であれば心配ないこともありますが、トラブルの可能性もあります。
破水
破水してしまうと、子宮内に雑菌が侵入し、感染しやすくまります。感染した場合は1週間以内に出産へとつながるケースが一般的です。
ただし、尿漏れと間違えやすいので、見分け方を覚えておきましょう。詳しくは関連記事を参考にしてください。
切迫早産の診断方法は?

子宮収縮・破水・出血があるかどうか、子宮口が開いているかどうかを調べます。また、経腟超音波断層法で、子宮頸管の長さをはかることもあります。
赤ちゃんが産まれるときの通り道となる子宮頸管はお腹が張ると段々短くなり、子宮を支える力が弱くなって出産につながります。また、お腹の張りがなくても、子宮口が開いていることはあります。
切迫早産の治療法は?入院は必要?

基本的には薬を飲んで安静にします。早産で生まれる赤ちゃんは、週数が早いほど機能が未熟なので、障害が残ったり、ときには死亡してしまったりすることもあります。一日でも長くお腹の中での成長が必要なので、安静にしてなるべく妊娠週数をのばします。
子宮収縮抑制剤を服用して安静にしますが、内服薬と点滴があり、症状が治まらない場合には、点滴治療を行うために入院が必要になります。一般的には、ウテメリン・マグセント・ズファジランなどの薬が使われます。
場合によっては、子宮口の広がりを防ぐ子宮頸管縫縮術という手術を行うこともあります。入院期間は症状の重さによって異なりますが、2~3ヶ月間入院することもあります。
切迫早産の安静とは?便秘になったらいきむのはNG?

自宅安静のときには、できれば外出も家事もせず、トイレや食事以外は横になっているのが理想的な過ごし方です。妊婦健診で症状がよくなったと判断されたら、徐々に安静は解除されます。
入院となると安静の程度がさらに厳しくなりますが、症状がひどい場合は24時間点滴で、食事とトイレ以外は絶対安静で寝たきり状態です。トイレに行くときも点滴をしながらの移動で、お風呂も入れません。
「ずっと安静にしているのがつらかった」という先輩ママも多いようですが、お腹の赤ちゃんのため、出産時期が来るまでは我慢のしどころです。症状が改善すれば退院することもできますよ。
また、便秘になったときにいきんでもいいのかどうかという悩みを持つ妊婦さんも多くいます。いきむと子宮口が開いてお腹の赤ちゃんが出てこないかと心配になりますよね。
一般的な排便の程度であれば問題ありませんが、便秘は強くいきむ原因になります。妊婦さんも飲める便秘薬を病院で処方してもらったほうがいいでしょう。心配なことがあれば、恥ずかしがらずに産婦人科医に相談してくださいね。
切迫早産の予防法は?

切迫早産や早産の予防には、日頃から無理のない妊娠生活を心がけることが大切です。基本的なことですが、動きすぎや疲労に気をつけ、バランスの良い食事をとり、体を冷やさないようにしましょう。
また、早産をした次の妊娠では早産の可能性が高くなるので、前回の妊娠で早産や切迫早産だった妊婦さんは、普段から気になる症状がないかにも気を配りましょう。
また、切迫早産を引き起こす原因があれば、予防または治療しておくことも大切です。
絨毛膜羊膜炎
絨毛膜羊膜炎は赤ちゃんを包んでいる絨毛膜と羊膜が、細菌感染で炎症を起こし、切迫早産を引き起こしやすい状態です。一番の原因は、腟内の細菌が子宮内に感染することです。妊娠中に性交渉を行う場合は、予防のために必ずコンドームを使用しましょう。入浴は問題ありません。
また、歯周病も絨毛膜羊膜炎の原因になります。特に妊娠中は歯周病になりやすいので、口腔ケアをしっかり行いましょう。免疫力を高めるため、栄養バランスの良い食事や日光を浴びての散歩などの軽い運動も良いです。
子宮奇形
子宮奇形とは、多くは生まれながらにして子宮の形に異常がある状態です。正常な子宮の形に比べて切迫早産や早産になりやすいとされています。
早産を繰り返す場合、または子宮奇形の状態や程度によっては、妊娠前に手術を行うこともあります。
子宮頸管無力症
子宮頸管無力症では、子宮口から外につながる子宮頸管が、出産が近づいていないのに開き始めてしまう病気です。
家庭でできる予防法はありませんが、子宮頸管を糸やテープで縛って子宮口を開きにくくする「子宮頸管縫縮術」によって、早産を防ぐ方法もあります。
切迫早産と診断されたら、慌てず安静に過ごしましょう
切迫早産は妊娠・出産にとってリスクとなるため、「不正出血や腹痛があって、産婦人科へ診察に行ったら即入院」という妊婦さんもいます。少しでも症状に思い当たることがあればすぐに産婦人科を受診してくださいね。
早期発見をして、安静に過ごすことがなによりも大切です。