自然分娩と聞くと、どのような分娩方法を想像しますか?医療介入が一切ない分娩方法?それでは、陣痛促進剤を使ったら、それは自然分娩でなくなるのでしょうか?今回は出産にあたって知っておきたい自然分娩の定義や流れ、費用、メリット・デメリットなどをご説明します。
自然分娩とは?経膣分娩とは違うの?

自然分娩とは、一般的に経膣分娩で医療介入をせず、自然の流れに沿った出産のことをいいます。しかし、陣痛促進剤やバルーンなどの医療介入をした場合でも、「経膣分娩であれば自然分娩である」という捉え方もあり、医療施設によって定義が異なります。
つまり、「これが自然分娩である」という明確な定義はないというのが現状です。なお、「経膣分娩」とは膣を通じて胎児を出産することなので、無痛分娩も経膣分娩のひとつですが、無痛分娩は医療介入があるため自然分娩には入らない、と捉えられるのが一般的です。
自然分娩の流れは?始まり方は?

自然分娩の流れは人それぞれですが、お産の始まりの主なサインは「陣痛」「破水」「おしるし」の3つです。
こそだてハックの読者アンケート(※)によると、「陣痛」から始まったという人が3分の1以上で、次いで「破水」と「おしるし」が始まりのサインだったという人が27%ずつという結果でした。
陣痛から始まる場合
陣痛とは、子宮が赤ちゃんを押し出すために行う収縮の際に感じる痛みです。陣痛らしきものを感じたら、痛みが治まって次の痛みが来るまでの時間を計りましょう。
定期的に起こる痛みがだんだん強くなり、間隔が狭まってきたら、陣痛の可能性があります。基本的に初産婦の場合は間隔が10分、経産婦の場合は間隔が15分程度になったら、病院に連絡をして指示を仰ぎます。
体験談
陣痛の間隔が空いていたので、「前駆陣痛かもしれない」と思い、しばらく家で耐えていました。しかし、あまりにも長く続くので「これはもしや陣痛かも」と思い病院に向かうと、子宮口がすでに4cm開いており、そこからあっという間に生まれました。(かおるママさん・30代)
破水から始まる場合
破水とは、赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れ、中に入っていた羊水が外に出てくることをいいます。破水は排尿とは異なり、自分の意思とは関係なく、透明もしくは薄い黄色の液体が流れ出てきます。ちょろちょろと少量ずつ出ることもありますし、バシャっと勢いよく流れ出ることもあります。
多くの場合は陣痛の後に破水が起こるのですが、「前期破水」といって陣痛の前に破水が起きることもあります。破水すると細菌感染の恐れがあるため、すぐに連絡して病院に向かいましょう。
破水したときのために、事前に大きめのバスタオルや夜用ナプキンを用意しておくと安心ですね。尿漏れと勘違いしやすいので、注意深く見分けてください。
体験談
夜中に破水しましたが、尿漏れとの区別がつかず、とりあえず寝ました。だんだんお腹が痛くなり、朝方におしるしがあったので、「あ、始まるんだな」とようやく気がつきました。(ジェニさん・30代)
おしるしから始まる場合
おしるしとは、子宮頸管の粘液などが、赤ちゃんを包む卵膜からの出血と混ざって出てくるものです。見た目は「ピンク色の、血の混じったおりもの」という感じです。
おしるしがきてすぐに陣痛が始まり、数時間で出産する人もいますが、おしるし後に特に何もないまま1週間以上経ってから出産したという人もいます。
体験談
おしるしから出産まで20時間と長くかかったため、夫も私も初めて感じる緊張と寝不足のうちに、初のお産を迎えました。(ソウくんママさん・30代)
自然分娩の方法は?

一口に自然分娩といっても、その方法はさまざまです。呼吸法によって陣痛の痛みを和らげるもの、産む姿勢にこだわらず自由な姿勢で産むものなど種類が豊富なので、出産に対する自分の考え方に合ったものを選べるといいですね。
ラマーズ法
「ヒッ、ヒッ、フー」というリズムが有名な呼吸法です。陣痛中は息を止めていきんでしまいがちですが、赤ちゃんに酸素を送るためにも、呼吸をしっかりと行いましょう。
病院によって呼吸法が多少異なることがあるので、助産師の誘導に従って呼吸を整えてください。
リーブ法(RIEB法)
Relaxation(リラックスすること)、Imagination(イメージすること)、Exercise(効果的に身体を動かすこと)、Breathing(しっかり呼吸すること)の頭文字をとった、中国気功法をもとに考案された呼吸方法です。
ゆったりとした腹式呼吸を学び、分娩のときは赤ちゃんの具体的な位置が示され、赤ちゃんと子宮口に意識を集中させます(※1)。
ソフロロジー法
ソフロロジー法は、自分の心を平安に保つための考え方です。普段から赤ちゃんに話しかけて母性愛を育んだり、イメージトレーニングで陣痛に備えたりすることで、安心して出産に臨めるようになるといわれています。
他の分娩方法と同じく痛みはあるのですが、イメージトレーニングを繰り返すことで、「この痛みを越えれば、赤ちゃんに会えるんだ」と陣痛を前向きに捉えられるようにしていきます。
アクティブバース
アクティブバースは、自分の好きなスタイルで産む方法です。フリースタイルとも呼ばれ、呼吸法や産む姿勢を自分で自由に決めます。
自分が生みやすいと感じるスタイルを選べるので、力をコントロールしやすく、スムーズに出産することができるといわれています。分娩の際に上半身を起こす人、四つん這いになる人、椅子に座る人などもいます。
自然分娩の費用は?

医療機関によって異なりますが、一般的には自然分娩の費用は40~80万円ほどです。
「国民健康保険または健康保険に加入していること」と「妊娠85日以上(妊娠4ヶ月以上)で出産していること」の条件を満たしていれば、出産育児一時金として42万円が行政から支給されます。
そのため、実際の自己負担費用は、分娩費用だけでいうと約15~25万円です。そのほか、入院費や新生児管理保育料などがかかります。
自然分娩のメリットは?
一般的に、帝王切開と比較して、自然分娩の方が産後の体調回復が早いというのは、大きなメリットのひとつです。
また、帝王切開の場合、病院の方針や母体・胎児の状態によっては立ち会い出産ができないこともあり、自然分娩の方が立ち会い出産できやすいという点もメリットだといえます。

なお、こそだてハックの読者アンケートの結果、「夫やパートナーが出産に立ち会った」というケースが7割を占めました。立ち会い出産を経験したママの体験談もご紹介します。
体験談
最初は恥ずかしくて、立ち会いは嫌でしたが、夫がいてくれたことにより心強かったし、安心して出産に挑めました。助産師さん達と一緒に声掛けしてくれたり、うちわで仰いでくれたりしました。(ゆちゃんさん・20代)
体験談
腰を一生懸命さすってくれたり、テニスボールで肛門辺りをグリグリしてくれたりしたので助かりました。(Mamiyさん・30代)
自然分娩のデメリットは?
無痛分娩、帝王切開などの医療介入がない場合、デメリットとして、陣痛の激しい痛みに耐えなければならないことが挙げられます。無痛分娩も、麻酔を注射する際に痛みを感じますが、陣痛の痛みの方が強いといわれています。
また、自然分娩は出産にかかる時間が分からないというデメリットもあります。帝王切開の場合は1時間ほどで手術が終わるため、それに向けて心の準備ができます。しかし、自然分娩だと「いつ終わるかわからない」という不安や焦りから、精神的に疲れることも。

上の円グラフも、こそだてハックの読者アンケートの結果です。これを見てもわかるとおり、陣痛開始から分娩まで「18時間以上かかった」という人もいれば、「4時間未満で生まれた」というママもいて、個人差が大きいことがわかります。
なお、妊婦健診で問題がなければ、経膣での自然分娩になるのが一般的ですが、分娩の途中で胎児や母体に問題が起きてリスクがあると判断されると、緊急で帝王切開に切り替わることもあります。
体験談
陣痛から25時間経過しても赤ちゃんが下まで降りてこず、心拍が低下気味だったため、急きょ帝王切開に切り替えることに。後遺症もなく、元気に生まれてくれたので、痛みを忘れてしまいました。(しょうまママさん・30代)
自然分娩で分からないことがあったら医師に聞こう
自然分娩の定義ははっきりしておらず、医師によって自然分娩の意味が違っていることがあります。医師の説明のなかで「自然分娩」という言葉が出てきて、どの意味で使われているか分からないときはすぐに尋ねるようにしましょう。
疑問に思うことは1人で悩まず、医師に聞くようにして、自分の理想の分娩方法を見つけられるといいですね。
※アンケート概要
実施期間:2017年5月26日~6月4日
調査対象:陣痛・出産の経験がある「こそだてハック」読者
有効回答数:369件
収集方法:Webアンケート