下腹部にチクチクするような痛みやひきつるような感覚が現れたことはありませんか?いつもの生理痛と少し違うと思ったら「卵巣痛」の可能性があります。今回は卵巣の痛みの原因や、生理前後で現れる痛みによる違いなどをご説明します。
卵巣の痛みは、生理痛とは違う?
毎月の生理に伴う痛みは、子宮が経血の排出を促すために収縮することで現れるものです。痛みの強さは個人差がありますが、主に下腹部がドーンと重くなるような痛みを感じるのが特徴です。
一方の卵巣の痛みは、下腹部にチクチク・ピリピリするような痛みが現れることが多くあります。「いつもの生理痛とは痛みの感じが違う」と感じたら、卵巣痛の可能性があります。
卵巣の痛みは右下腹部と左下腹部のどちらで起きる?
卵巣の痛みが現れる場所は主に下腹部ですが、下腹部の左側が痛むのか、右側が痛むのかは人によって違います。これは卵巣が体の左右に1つずつあるからで、左右どちらかだけに痛みを感じやすい人もいれば、左右交互に現れる人もいます。
ただし、卵巣の位置は子宮に近いので、卵巣の痛みだと思っていたものが実は子宮の痛みだった、という可能性もあります。生理痛とは違う子宮の痛みは病気の可能性もあるので、一度婦人科で診てもらいましょう。
卵巣の痛みが生理後に現れる原因は?
生理が終わってから1~2週間後に卵巣の痛みが現れる場合、排卵に伴う痛みである可能性があります。だいたい排卵の前後3日くらいの時期に起きるものですが、痛みの原因は次の通りいくつか考えられます。
排卵前の卵巣の腫れによる痛み
卵巣内には卵胞と呼ばれる細胞があり、この卵胞が成熟すると卵子が排卵されます。卵胞は成熟すると大きくなって少し腫れたような状態になるため、その腫れのせいでチクチクとした痛みを感じることがあります。
排卵した後には数日かけて腫れが引いていくので、卵巣の痛みも次第に治まります。
排卵する瞬間の痛み(排卵痛)
卵子は飛び出すときに成熟した卵胞を突き破ります。卵胞はとても小さな細胞ではありますが、人によっては突き破られたときに痛みを感じることがあります。
いわゆる「排卵痛」と呼ばれるものですが、生理的なものなのであまり心配する必要はありません。ほとんどの場合、1~2日程度で痛みは治まります。
排卵後の出血による痛み
排卵時に、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することから、子宮内膜が剥がれてわずかに出血することがあります。これは「排卵出血」と呼ばれ、人によっては軽く引きつるような痛みを伴うことがあります。
排卵出血は、少量であればあまり心配はいりませんが、1週間も続いたり生理の時と同じくらいの量が見られたりするときには、婦人科を受診しましょう(※1)。
卵巣の痛みが生理前に現れたら、妊娠初期症状かも?
「そろそろ生理がくるかもしれない」と感じる時期に卵巣の痛みを感じた場合は、妊娠している可能性も考えられます。
妊娠すると、女性の体内で「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンの分泌量が増えます。hCGには、排卵後の黄体という組織を刺激し、プロゲステロンやエストロゲンなど女性ホルモンの分泌を促す働きがあります。
このhCGによる刺激で、排卵されている側の卵巣の中に、液体状の分泌物が溜まった「ルテイン嚢胞」が作られることがあり、それによって一時的に卵巣が腫れ、少し痛みを感じる人もいます。
妊娠によってできたルテイン嚢胞であれば、妊娠16週頃までに自然と小さくなり、消えてなくなります。基本的に治療する必要はありませんが、嚢胞が6cm以上の大きさになっている場合は、悪性の腫瘍と判別するためにしばらく経過観察が必要となります(※2)。
もしくは、受精卵が子宮内に着床するときに感じる「着床痛」を、卵巣の痛みと勘違いすることもあります。いずれにしても、生理予定日を1週間過ぎても生理が来ない場合は、妊娠検査薬で確認してみましょう。
卵巣の激しい痛みは病気の可能性もある
基本的に卵巣の痛みは生理的な現象によるものです。生理後の排卵痛や妊娠初期症状の痛みは軽く、様子を見ていれば自然と治まります。卵巣にチクチクした痛みを感じたくらいであれば過度に心配する必要はありません。
ただし、卵巣の痛みが3日以上続く場合や、激しい痛みを感じるような場合には、注意が必要です。激しい痛みがあったり、吐き気などの症状を伴ったりする場合には、排卵時や排卵後に卵巣から出血を起こして、お腹の中に溜まってしまう卵巣出血のほか、卵巣炎、卵巣がん、卵巣茎捻転、卵巣破裂が起こっている恐れもあります(※2)。
そのため、卵巣のある下腹部に今まで感じたことのないような痛みがあったら、すぐに婦人科を受診してください。