毎月決まってやってくる生理。その出血が異常に多い状態を「過多月経」といい、外出時や就寝時も気になってしまうくらい悩まされる人もいます。過多月経には、思わぬ病気が潜んでいる可能性もあるので軽視できません。今回は、過多月経の原因や症状、治療法についてまとめました。
過多月経とは?生理の量が多いという基準は?
過多月経とは、生理時の出血の量(経血量)が異常に多くなる症状です。経血量には個人差がありますが、正常な量は20~140mlの範囲で、1枚のナプキンで3時間前後はもつ程度の量です。これ以上の出血が見られ、日常生活に支障が出たり、貧血が起こったりすると、過多月経と診断されます。
たとえば、「昼間、昼用ナプキンを当てていて1時間ほどで経血があふれてしまう」「寝るときに、夜用のナプキンを重ねても下着やシーツまで汚れてしまう」「ドロッとしたレバー状の経血のかたまりが多く見られる」という状態が続くのであれば、過多月経の疑いがあります。
経血量は自分では計れないものなので、上記のような症状がでたら、病院を受診するようにしましょう。
過多月経の原因は?生理の量が多いのは病気なの?
過多月経は原因によって「機能性過多月経」と「器質性過多月経」の2種類に分けられます(※1,2)。
機能性過多月経の原因
子宮に異常がなく、他にも原因となる病気がない場合に起こる過多月経を「機能性過多月経」といいます。
女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があります。通常は、エストロゲンの作用によって、受精卵が着床しやすいように子宮内膜が厚くなり、プロゲステロンがその状態を維持します。
妊娠が成立しなかった場合に、2つの女性ホルモンの分泌量が減り、子宮内膜が剥がれ落ちることで生理が起こります。
この女性ホルモンのバランスが崩れることで、過多月経となることがあります。また、原因がはっきりしないこともあります。
器質性過多月経の原因
主に子宮の病気や異常が原因で起こるものを、「器質性過多月経」と呼びます。具体的には、子宮筋腫(特に粘膜下筋腫というタイプ)や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症などによるものです。
そのほか、血液凝固系の病気や腎疾患、甲状腺機能の低下などが過多月経を引き起こしている場合もあります。
過多月経の治療法は?
過多月経は、原因に合わせて効果的な治療をすることが大切です(※1,2)。
機能性過多月経の治療法
機能性過多月経の場合、薬物療法を行います。
「ピル(経口避妊薬)」のようなエストロゲン・プロゲスチン配合薬や、止血剤の一種である「トラネキサム酸」、子宮内に挿入し、黄体ホルモンを放出する「レボノルゲストレル放出子宮内システム」、などで経血量が減ることがわかっています。
過多月経の程度が軽く、貧血も軽度であれば、ホルモンバランスの乱れを引き起こしている原因を取り除くことで様子をみることもあります。
過労や心身のストレスで体に負担がかかっていることが多いので、十分な睡眠・栄養バランスのとれた食事・適度な運動を心がけ、できるだけストレスフリーな生活に改善していきましょう。
器質性過多月経の治療法
器質性過多月経では、原因と考えられる病気を治療します。病気の種類や症状の程度、妊娠希望の有無などによって、最適な治療法を選択します。
原因となる病気によっては、薬物療法で病気の進行を抑えられる可能性もあります。しかし、病巣や子宮そのものを手術で摘出しなければならないケースもあります。
妊娠を希望している場合は特に、定期的な検査を受けることによる早期発見・早期治療が不可欠です。
対症療法
器質性過多月経、機能性過多月経いずれにしても、出血量が多いために貧血を招くことがあります。その場合、血液検査などを行ったうえで、対症療法として鉄剤やビタミン剤が処方される場合もあります。
過多月経は不妊の原因になるの?
「生理の出血量が多い」というだけで妊娠できないわけではありません。しかし、過多月経の原因として、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症などがある場合は、不妊症の原因になることがあるので注意が必要です。
不妊の原因となる病気があっても、先に説明したような治療法で治療を行えば、もちろん妊娠できる可能性もあります。治療を行うことが大切なので、異常を感じたら、早めに婦人科を受診するようにしてくださいね。
過多月経で生理の量が多いと思ったら婦人科へ
「日中、何度もナプキンを取り替えないと間に合わない…」といった生理の悩みを抱えている人は多くいますが、病院で治療を受けている女性の数は少なく、過多月経が見過ごされている場合も多いようです。そして、症状が悪化してから初めて受診して、治療が長引いてしまう人もいます。
過多月経による貧血を放っておくのはよくないですし、過多月経を引き起こしている原因によっては、早めの治療が必要です。毎月の生理の状態をよく観察し、少しでも違和感を抱いたときはすぐに病院を受診するようにしてください。