臨月に入ると、これから迎える出産に不安を感じる人も少なくありません。経産婦さんも一度出産を経験しているとはいえ、出産の流れが前回と同じとは限りませんし、お産の痛みを知っているぶん、怖くなることもあるかもしれませんね。事前に出産の流れを把握・おさらいしておくことで、心の準備をしておきましょう。今回は、陣痛から出産までの時間や間隔、出産の流れをご説明します。
陣痛とは?陣痛はどう進む?
お産までに起こる陣痛には、「前駆陣痛」と「陣痛」の2種類があります。
「前駆陣痛」は出産前の準備運動として起こる不規則な子宮収縮で、まだ出産にはつながりません。
その前駆陣痛の後に起きる規則的な子宮収縮が「陣痛」で、分娩開始の合図になります。
「陣痛」が正しい医学用語ですが、一般用語として「本陣痛」とも呼ばれています。
本記事では、前駆陣痛との混同を避けるために、陣痛を本陣痛とも表記します。
前駆陣痛もお産が近づいている証ではありますが、そのあと陣痛(本陣痛)が始まるまでの長さには個人差があるので、すぐに病院に連絡する必要はありません。
陣痛が起きたら?
不規則だった痛みの間隔がだんだん規則正しくなってきたら、それは「陣痛(本陣痛)」です。初産婦さんは10分ごと、経産婦さんは15分ごとの陣痛がきたら、分娩開始とされます。
陣痛が始まったら、陣痛間隔を記録しましょう。
陣痛の始まりから次の陣痛の始まりまで何分間か、陣痛が続いた時間が何秒(何分)かを測ってメモします。最近では、陣痛の間隔を記録できるアプリがあるので、そちらを使うのも便利です。
初産婦さんは、痛みが現れてから次の痛みが現れるまでの間隔10分を切ったら、病院に連絡します。
ただし、規則的な陣痛がなくても破水が疑われる場合や、胎動が少ない、痛みが強いなど、気になることがあるときには、すぐに病院に連絡してください。
また、妊娠経過の状況によって、病院に連絡するように指示されるタイミングが異なるため、事前に医師や助産師に確認しておきましょう。
陣痛から出産までの流れは?
陣痛から出産までの分娩の流れは、大きく以下の3段階に分けられます。
- 第一期(開口期):陣痛が10分間隔になってから子宮口が全開大になるまで
- 第二期(娩出期):子宮口が全開大になってから赤ちゃんを生み出すまで
- 第三期(後産期):赤ちゃんが生まれてから胎盤が排出し終えるまで
陣痛から出産までの分娩の流れは第一期にかかる時間がもっとも長く、子宮口が全開大になれば、赤ちゃんに会えるまであと一息です。
陣痛から出産までの時間、初産婦はどれくらい?
「こそだてハック」の読者アンケート(※)によると、初産婦さんが陣痛開始から分娩までにかかった時間でもっとも多いのは、18時間以上という結果でした。
続いて多いのが4〜6時間という結果からも、出産にかかる時間には個人差が大きいことがわかります。
陣痛から出産までの時間、初産婦と経産婦の違いは?
一度出産を経験して陣痛の痛みを味わうと、「次回は少しでも陣痛の時間が短くなってほしい」と願う人も少なくないようですね。
一般的に、陣痛から出産までにかかる時間は、経産婦さんのほうが短い傾向があります。
こでは、第一期から第三期まで、それぞれにかかる平均的な時間をご紹介します(※1)。
初産婦 | 経産婦 | |
第一期(開口期) | 10〜12時間 | 4〜6時間 |
第二期(娩出期) | 2〜3時間 | 1〜1.5時間 |
第三期(後産期) | 15〜30分 | 10〜20分 |
前出の読者アンケート(※)でも、「第一子の方が、陣痛から出産まで長く時間がかかった」と答えたママが半数以上を占めました。
ただし、「第二子以降の方が長かった」という人も11%いるので、実際に出産を迎えてみないとわからないと考えておきましょう。
出産にかかる時間は個人差が大きいので、あくまでも目安程度に留めてくださいね。
続いて、出産の流れが具体的にどう進むのか、ご説明します。
【出産の流れ】第一期は陣痛の痛みが長くなる
本陣痛の間隔が10分以内になってから子宮口が全開大(10cm)になるまでの分娩第一期が、分娩期の大半を占めます。
子宮口の開き方には個人差がありますが、前述のとおり、所要時間は初産婦さんで10〜12時間、経産婦さんで4~6時間です。
この分娩第一期は、さらに準備期・進行期・極期の3段階に分けられます。
準備期
厳密には、規則的な痛みが始まってから、10分間隔の陣痛になるまでの期間も準備期に含まれます。
- 子宮口の開き:0〜3cm
- 陣痛間隔:8〜10分おき
- 1回あたりの陣痛継続時間:20~30秒
痛みはあるものの、まだ余裕がある時期です。眠ったり食事をとったりして体力をつけておきましょう。
経産婦さんは、この段階で入院となることが多くあります。
陣痛の痛みなかなか強くならない場合や間隔が縮まらない場合は、階段をゆっくり上り下りしたり、スクワットをしたりすると効果的ですよ。
破水をしていない場合は、入浴をしてもいいですね。
進行期
陣痛の間隔が短くなって、子宮口が徐々に広がっていく過程です。
- 子宮口の開き:4~7cm
- 陣痛間隔:4~7分おき
- 1回あたりの陣痛の継続時間:30~45秒
陣痛の間隔が短くなるにつれて、痛みも強くなります。この時期になると、初産婦さんも入院してお産に臨みます。
陣痛の痛みが次から次へとやってきますが、呼吸法などで乗り切り、陣痛と陣痛の間はゆっくり休みましょう。
そして、水分補給をしっかりして、こまめにトイレへ行っておきましょう。四つん這いやあぐらなど、できるだけ楽な姿勢を探してみてください。
極期
子宮口が全開大になるのも目前。あと、もう一息です。
- 子宮口の開き:8~9cm
- 陣痛の間隔:2~3分おき
- 1回あたりの陣痛の継続時間:45~60秒
痛みが非常に強く、力を入れていきみたくなります。しかし、子宮口が全開大になるまで、いきんではいけません。
このときにいきむと、かえって子宮口が開きにくくなったり、子宮頸管が裂けたりすることもあるので注意してくださいね。
医師や助産師から許可が出るまでは、つらいですが「いきみ逃し」をしながら乗り切りましょう。
【出産の流れ】第二期はいよいよいきみから出産へ
第二期になると子宮口が全開大になり、あとは赤ちゃんを生み出すだけです。
赤ちゃんが生まれるまでの所要時間の目安は、前述の通り、初産婦さんで2〜3時間、経産婦さんで1〜1.5時間です。
- 子宮口の開き:10cm
- 陣痛の間隔:1~2分
- 1回あたりの陣痛の継続時間:60~90秒
子宮口が全開大になったら、助産師の指示に従いながら、いきみ始めます。
タイミングや力の入れ具合は助産師からもアドバイスをもらえるので、心配しないで大丈夫ですよ。
多くの場合、子宮口が全開大になったと同じタイミングで破水も起こります。赤ちゃんに会えるときが確実に近づいていると考えて、リラックスしながら出産の山場を乗り越えましょう。
陣痛の波に合わせて何度もいきみ続けると、赤ちゃんの頭が見えたり隠れたりする「排臨(はいりん)」の状態になります。
そして、赤ちゃんの頭がひっこまずに腟から見えたままになる「発露(はつろ)」の段階へと進みます(※1)。
必要であれば、会陰切開が行われることもあります。医師からいきみを止める指示があったらいきむのを止め、全身の力を抜いて「ハッハッハッハ」と短く呼吸する短息呼吸に切り替えます。
赤ちゃんの頭が出れば、あとは多くの場合、赤ちゃんはスルリと出てきてくれます。いよいよ、10ヶ月近く待ちわびた赤ちゃんと対面の瞬間です。
【出産の流れ】第三期は出産後から胎盤が出るまで
赤ちゃんが生まれてから胎盤が出るまでの時期を分娩第三期といいます。
赤ちゃんが生まれた後に「後産陣痛(後陣痛)」という軽い子宮収縮が起こって、胎盤を体の外に押し出します。
所要時間は、前述のとおり初産婦さんで15〜30分、経産婦さんで10〜20分です。長くても1時間程度です(※2)。
赤ちゃんを生み出すときのようにいきむ必要はなく、自然と胎盤が娩出されるのを待つという感覚に近いでしょう。
胎盤が出たあと、会陰切開や裂けた部分があるときは縫合してもらいます。
出産後は、後陣痛により子宮が収縮して出血するので、出血量が落ち着いてくるまで分娩室で2時間ほど安静にして経過をみます。ママのお腹の上でカンガルーケアをしたり、授乳をしたりする病院もありますよ。
陣痛から出産までの時間は焦らず、落ち着いて
陣痛から出産までにかかる時間は、本当に人それぞれです。
妊娠中は運動不足になりやすく、筋肉が衰えるなど体力も低下しがちですよね。長時間のお産を乗り切るためにも、健康的な食事を摂る、適度な運動をする、睡眠や休息を十分とるなど、体力が落ちないようにしておくことが大切です。
落ち着いた気持ちで陣痛が来るのを待ち、陣痛が始まっても慌てず、リラックスして過ごしましょう。
「痛みが強くなるごとに赤ちゃんと対面できるときが近づいている」「赤ちゃんも陣痛の圧迫を受けながら頑張っている」と考えて、出産を乗り切れるといいですね。
※アンケート概要
実施期間:2017年5月26日~6月4日
調査対象:陣痛・出産の経験がある「こそだてハック」読者
有効回答数:369件
収集方法:Webアンケート