初めてのお産でドキドキのママにとって、分娩には不安がつきまとうもの。なかでも気になるのは「会陰切開(えいんせっかい)」のことではないでしょうか?自然分娩をしている初産婦さんが多数経験しているものでもあり、事前にどんなものかを知っておくと、安心してお産に臨めますよ。今回は、会陰切開について、切開や麻酔の方法、痛みがいつまで続くのか、傷跡は残るのかなどをご説明します。
会陰切開とは?
女性の外陰部と肛門の間にある、ひし形の部分を「会陰」といいます。会陰切開とは、分娩の際に会陰を切開して、赤ちゃんの頭の通り道を広げる処置のことです。
会陰の伸びが悪く、分娩がスムーズに進まないときや、赤ちゃんの頭が大きくて出てきづらいときなど、短時間でより安全に分娩を行うために、会陰切開が選択されることがあります。
会陰切開はどんなときに必要?
それでは、具体的にどのような場面で会陰切開を行うのでしょうか?大きく分けて次の3つの目的に分けられます(※1)。
1. 赤ちゃんの安全を守るため
胎児機能不全が見られ、お産が長引くと赤ちゃんの容体が心配な場合や、鉗子・吸引分娩、逆子を臀部(おしり)などから取り出す骨盤位牽出術などの産科手術が必要な場合に、会陰切開が行われます。
2. ママの安全を守るため
妊婦さんが心臓に疾患を持っている場合、子癇(しかん)発作や高血圧の悪化があるなど、分娩が長引くことで母体に負担がかかり、病状がさらに悪くなる可能性があるときには、会陰切開が選択されることが多くなります。また、お産が長引いて母体疲労が強い場合も同様です。
3. ママの会陰損傷を防ぐため
会陰の皮膚が厚くあまり伸びない場合や、赤ちゃんの頭が大きい場合、分娩時に腟や会陰が裂傷を起こす可能性があります。
軽度な裂傷であれば自然治癒が可能ですが、裂傷が大きく、複雑であると肛門や直腸粘膜にまでおよび、出血が多くなったり、便失禁の原因になったりすることもあり、手術で修復する必要があります。
そのため、大きなあるいは複雑な腟・会陰裂傷が生じると予想される場合は、人工的に会陰を切開し、出産後に縫合を行います。
なお、会陰切開を行うかどうかは、医師の判断に任されているところがあり、初産の分娩ではほとんど行う医師もいれば、あえて行わない医師もいます。
会陰切開の方法は?痛みはあるの?麻酔を打つの?
会陰の毛を剃り、腟の入口を中心に消毒したあと、腟口から肛門のほうにむけて縦、または斜め下方向にハサミを入れて切開します。この際、麻酔を行うかどうかは病院やお産の状態によって異なります。
局所麻酔をしたうえで切開するのが一般的ですが、麻酔をせずにそのまま切開することもあります。
陣痛の痛みのほうが強いため、「切開による痛みはあまり気にならなかった」という人が多いようですが、痛みを感じたという人もいて個人差があります。
会陰切開の縫合は痛いの?
出産後には、切開部分の縫合が必要になりますが、溶けない絹糸・合成糸か、体にとって異物になりにくい吸収糸のどちらかが使われます。絹糸や合成糸を使用した場合は、後日抜糸をしますが、吸収糸の場合は長くても1ヶ月もすれば体に溶けこんでなくなります。
実は、「産後の縫合が痛かった」という人もいます。産後すぐは疲労のピークにあるなかで縫合を行うため、より敏感に痛みを感じてしまうこともあります。
会陰切開後の痛みはいつまで続く?
会陰切開をしている最中の痛みはそれほど気にならなくとも、分娩後は、強さの差はあるものの切開した部分の痛みや違和感を覚える人が多いようです。
痛みが続く期間には個人差がありますが、1週間~1ヶ月程度で回復するのが一般的です。ただし、傷に雑菌がついて感染してしまうと、治りが遅くなって痛みが続く可能性もあります。心配なときは、産後の健診などで医師に相談してくださいね。
なお、授乳中のママでも、赤ちゃんへの影響を大きく心配することなく服用できる鎮痛薬も多くあります。痛みがつらいときは鎮痛剤の処方も医師に相談しましょう。
痛みがある期間は、椅子に座ったり、トイレで排便したりするのがつらいかもしれません。ドーナツ型のクッションを使うなど、痛みをやわらげるための工夫をしましょう。また、蒸れにくい下着をつけ、デリケートゾーンを清潔に保つことも大切です。
会陰切開後の傷跡は残る?
自然裂傷が起きると傷跡がギザギザになりやすいのですが、会陰切開の場合、人工的にまっすぐハサミを入れるので、綺麗に縫合しやすく、傷跡は残りにくいといわれます。痛みと同じで個人差がありますが、1ヶ月ほどで傷跡が目立たなくなります。
傷跡をあまり刺激しないよう、シャワーやトイレのときは強くこすらないように気をつけてくださいね。
なお、注意したい会陰切開の合併症に、「肛門括約筋」の損傷があります。肛門括約筋には便が漏れないようにする働きがあり、この筋肉の修復が十分でないと、便失禁や性交時の痛みにつながることがあります。こうしたトラブルがあるときは、産婦人科医に相談しましょう。
会陰切開を避けるためにできることを
痛みや傷跡などがほとんどないとわかっても、できれば切開したくないというのが本音ですよね。会陰切開をしないためにはどうすればいいのでしょうか?
そのためには、出産に備えて妊娠中からの準備が大切です。まず、呼吸法などをしっかりと身につけておくこと。お産の際にいきみを逃すなどしてゆっくりコントロールして、会陰が十分に柔らかくなるまで待てるようにすることがポイントです。
また、日々会陰マッサージを続けて、やわらかくしておくことも対策の一つ。会陰切開を避けるために今からできることはありますから、ぜひお産当日まで続けてくださいね。