陣痛がきても子宮口が開かない!原因は?開くにはどうしたらいい?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

臨月に入ると「いよいよお産!」という気分が高まりますよね。陣痛が始まり、自然と子宮口が開いてくればスムーズにお産も進んでいきますが、なかなか子宮口が開かずに陣痛に耐える時間が長くなる妊婦さんもいます。今回は、妊婦さんが少しでも安心してお産を迎えられるように、子宮口が開かない原因や、開くにはどうしたらいいのかなどをご説明します。

子宮口が開くとはどういうこと?

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子宮口から腟、外陰部へと続く部分は「軟産道」と呼ばれ、お産のときの赤ちゃんの通り道となります。

陣痛が起きて子宮が収縮すると、ホルモンの分泌により軟産道付近の筋肉がやわらかくなり、それにともなって子宮口が開き始めます。

子宮口は、赤ちゃんが産まれる直前には10cm程度まで開き、赤ちゃんが通れるようになります(※1)。

子宮口の開き方とお産の関係は?

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陣痛が来てから、お産が進むにつれて、次のように子宮口が開いていきます。

前駆陣痛・本陣痛

痛みを感じる波が不規則な段階は、「前駆陣痛」です。痛みの間隔が規則的になり、10分程度になったら「本陣痛」です。

一般的に、陣痛の間隔が10分おきくらいになると、子宮口は3〜4cmほどに開きます(※1)。

分娩第一期(開口期)

本陣痛の間隔が10分以内になり、子宮口が全開大(約10cm)になるまでの期間が「分娩第一期」です。

初産婦で10〜12時間、経産婦で4〜6時間が所要時間の目安です(※1)。ただし、子宮口の開き方には個人差があるので、もっと短い時間で開く人もいれば、開くのに12時間以上かかる人もいます。

分娩第二期(娩出期)

子宮口が全開大になったら、いよいよ分娩台に上がります。

ここから赤ちゃんが生まれるまでにかかる時間の目安は、初産婦で1.5~2時間、経産婦で0.5~1時間です(※2)。助産師からのアドバイスに合わせて、いきんだり、いきみを止めて短い呼吸に切り替えたりします。

分娩第三期(後産期)

赤ちゃんが生まれてから胎盤が出るまでの時期を「分娩第三期」といいます。しばらくは胎盤を押し出すための「後産陣痛(後陣痛)」があり、軽い子宮収縮が起こります。

陣痛がきても、子宮口が開かない原因は?

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一般的には、お産が進むにつれて子宮口が開いてくるものですが、なかには軟産道の筋肉がやわらかくならず、子宮口がなかなか開かないためにお産がスムーズに行かない人もいます。この状態を「軟産道強靭」といいます。

軟産道強靭には、次に挙げるようにいくつかの原因があると考えられています(※1)。

● 子宮下部に筋腫がある
● 子宮頸部円錐切除術などによる手術跡がある
● 子宮下部から頸管、腟管にかけて熟化が不十分である

特に、子宮頸管の熟化が不十分で伸びが悪いと、子宮が全開大になるまでの「分娩第一期」の時間が長くなります。年齢が高い初産婦の場合、熟化不全が見られやすいとされていますが、その原因ははっきりとはわかっていません(※1,3)。

軟産道強靭の影響でお産が長引くと、妊婦さんの体力が落ちてしまうだけでなく、微弱陣痛になってしまったり、逆に過強陣痛を引き起こしたりする可能性もあります。

子宮口が開かないときの治療法は?開くにはどんなことをするの?

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軟産道強靭により子宮口が開かないと、分娩が滞ってしまい、母体にも胎児にも命の危険が及ぶリスクがあります。子宮口を開くには治療が必要になることがありますが、その場合、原因と状況にあわせて次のような治療法が選択されます(※1,3)。

バルーンなどの挿入

子宮頸管がなかなかやわらかくならず、子宮口の開きが十分ではない場合、「ラミナリア」などの頸管拡張材や、「メトロイリンテル」というバルーンを挿入することがあります。

陣痛促進剤の投与

陣痛は来たものの、子宮口がなかなか開かない、または陣痛が弱まってしまい、お産が長引いている、といった場合には、プロスタグランジンなどの陣痛促進剤(子宮収縮薬)を投与することがあります。

ただし、薬の副作用で過強陣痛が起きると、子宮破裂や胎児機能不全などが引き起こされるリスクもあるので、医師が母体と胎児の状態を慎重に見ながら投与します。

帝王切開

子宮口を開く方法ではありませんが、微弱陣痛が長く続いていたり、お産が長引いて胎児機能不全を起こしている場合には、緊急帝王切開を行い、できるだけ早く赤ちゃんを外に出します。

子宮口を自分で開くにはどうすればいい?

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子宮口をスムーズに開くには、硬くなった産道の筋肉を、赤ちゃんが通りやすいようにほぐしてあげることが効果的です。

医師や助産師さんにもやり方を確認しながら、無理のない範囲で次のような方法に取り組んでみましょう。

積極的に体を動かす

子宮口を開くには、体を動かすとよいとされています。陣痛が来たあとも、動ける余裕があるうちは、家や病院の中を歩いたり、階段の上り下りやスクワットをするなど、股関節をやわらかくする動きをすると効果的です。

腰痛があるときには無理をせず、あぐらをかいて座った状態などで、ストレッチをするのがおすすめですよ。

体を温める

体が冷えると血行が悪くなり、筋肉が硬直してしまいます。そのため、子宮口を開くには体を温めるとよいとされています。

妊娠中でも飲める温かい飲み物を飲んだり、ひざ掛けを使ったりして下半身を温め、強張った体の筋肉をできる範囲でほぐしてあげましょう。

できる限りリラックスする

お産に向けた緊張により、知らず知らずのうちに体に力が入ってしまうと、子宮口がなかなか開かないこともあります。子宮口を開きやすくするために、できるだけリラックスを心がけましょう。

陣痛の痛みでなかなか落ち着けないかもしれませんが、付き添ってくれている家族や助産師さんと話したり、もうすぐ会える赤ちゃんのことを想像したりすることで、心身の緊張をほぐすように意識できるといいですね。

ラズベリーハーブティーを飲む

妊婦さんの中には、木イチゴから作られたラズベリーハーブティーを飲んで子宮口を開きやすくしたという人もいるようです。効果には個人差がありますが、子宮口が開かないのが心配な人は、水分補給がてらに試してみるといいかもしれませんね。

子宮口が開かないときも、落ち着いて

陣痛が来たのに「なかなか子宮口が開かない」と医師や助産師から言われると、焦ってしまうかもしれませんが、お産には必ず終わりがあります。赤ちゃんと対面できる瞬間を楽しみに、落ち着いて臨みましょう。

陣痛が来ても動ける余裕がある場合は、上で説明した子宮口を自分で開く方法を試してみるのもいいかもしれませんね。

お産には体力が必要なので、ずっと緊張したままの状態では疲れてしまいます。いざ分娩、というときにうまく力を入れたり抜いたりできるよう、自分がリラックスできる呼吸の仕方を、妊娠中から練習しておくと安心ですよ。

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