妊婦の葉酸はいつからいつまで必要?妊活中や妊娠前は?

監修専門家 助産師 鶴町 はるな
鶴町 はるな 茨城県立中央看護専門学校助産学科卒業後、総合周産期センターの産婦人科・NICU勤務を経て、クリニックでのフリースタイル分娩や無痛分娩にも携わってきました。現在は産後ケアや母乳外来を中心に活動しています... 監修記事一覧へ

妊娠中に葉酸を適切に摂取すると、生まれてくる赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減することが多くの研究結果からわかっています(※2)。でも、具体的にいつからいつまで葉酸を摂取したほうがいいのか疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。今回は、葉酸について、妊娠前や妊娠中に必要な理由、いつからいつまで摂るべきか、サプリメントから摂取したほうかいいのかをご紹介します。

そもそも葉酸とは?妊婦に必要な理由は?

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葉酸は、水溶性ビタミンの仲間で、ビタミンB群の一つです(※1)。妊娠中に葉酸を摂取することで、下記のような効果・効能が期待できます。

赤血球を作る

葉酸には、ビタミンB12とともに赤血球を作り出す働きがあります。葉酸が不足すると正常な赤血球を作ることができず、貧血になってしまいます(※1)。

特に妊娠中は貧血になりがちなので、葉酸を摂取することは貧血予防につながります。

細胞の新生を助ける

葉酸は、細胞新生に必要な核酸(DNA、RNA)を作る働きをしています(※1)。核酸は、遺伝子の情報を持っているため、胎児が成長する妊娠中に葉酸は大切な役割を担います。

神経管閉鎖障害のリスクを減らす

「神経管閉鎖障害」とは、脳や脊椎の神経管の一部が塞がらなくなる先天異常です(※2)。神経管が塞がらない部分がどこかによって障害の現れ方は異なり、大きく分けて「二分脊椎症」と「無脳症」があります。

近年の様々な研究から、妊娠前から妊娠初期(特に妊娠3ヶ月まで)に葉酸が不足しないよう適切な量を摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを減らす効果が期待できることがわかっています(※2,3)。

葉酸はいつから摂るべき?妊娠前は?

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前述の通り、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するためには、妊娠前からと妊娠初期(特に妊娠3ヶ月まで)に適切な量の葉酸を摂取することが大切です(※2,3)。

妊娠前からの摂取が望ましい理由は、実際に妊娠に気がついてから葉酸を摂り始めるのでは遅いこともあるからです。胎児の神経ができるのは受胎後およそ28日とされているため、厚生労働省は妊娠を計画している女性に対して、妊娠する1ヶ月以上前からの摂取を推奨しています(※2)。

赤ちゃんが欲しいと願って妊活をしている人や、もしかしたら妊娠しているかもという人は、今のうちから葉酸を摂取するようにしましょう。

妊娠前や妊娠中は葉酸をどのくらい摂取すべきなの?

計り スケール

厚生労働省の「日本人食事摂取量(2020年)」によると、18~49歳の妊娠前・妊娠している女性に対して、1日の葉酸摂取量を以下のように推奨しています(※2,3)。

● 妊娠前:食事から摂る葉酸240μg+狭義の葉酸400μg
● 妊娠初期:食事から摂る葉酸240μg+狭義の葉酸400μg
● 妊娠中期〜後期:食事から摂る葉酸480μg

狭義の葉酸とは、主にサプリメントなどの合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)のことをいいます。妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は、神経管閉鎖障害のリスク低減のために、1日400μgの合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の摂取が望まれる、とされています。

ただし、合成葉酸の1日当たりの上限摂取量は1,000μgなので、過剰摂取には注意してくださいね。妊娠後期の葉酸の過剰摂取は、産まれたあとの赤ちゃんの小児喘息や湿疹などのリスクが高まると考えられています(※3)。

そのため、妊娠初期はサプリメントを取り入れ、妊娠中期〜後期は葉酸を多く含む食品から摂取するなど、時期に合わせて上手に摂取していくのが望ましいでしょう。

食事から摂る葉酸は、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、枝豆や納豆、海苔などの海藻類、いちごなどに多く含まれています。妊娠前から、野菜をたくさん使った食事で、ビタミン・ミネラルを摂る習慣をつけましょう(※1)。

妊婦は葉酸をいつまで摂るべき?

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妊娠中は、血液を通じて赤ちゃんに栄養や酸素を送り込むため、体内の鉄分が足りなくなり、貧血症状を感じる妊婦さんが多くいます。赤ちゃんがどんどん大きくなる妊娠中期から後期は、特に多くの血液が必要になります。

貧血を予防するためには鉄分の摂取も効果的ですが、赤血球をつくり出す働きのある葉酸も欠かせません(※1)。

また、葉酸は妊娠中だけでなく出産後の授乳期にも摂取したい栄養素です。母乳は血液をもとに作られるため、赤血球を作り出す葉酸は重要な役割をします。実際に厚生労働省は、18~49歳の授乳中の人にも、1日340μgの葉酸を摂取することを推奨しています(※4)。

さらに、葉酸は核酸合成やアミノ酸代謝の補酵素として重要な働きをするため、産後の抜け毛予防にもなると考えられています(※5)。

妊娠中の葉酸摂取はサプリがいいの?

葉酸サプリ

葉酸には、「天然葉酸」と「合成葉酸」があります。

食品から摂取できる天然葉酸の成分は、水に溶けやすくて火に弱い「プテロイルポリグルタミン酸型」であるため、神経管閉鎖障害のリスク低減のために妊婦さんに推奨されているのは、合成葉酸から摂取できる「プテロイルモノグルタミン酸」です(※2)。

天然と合成と聞くと、天然の方が効き目があって体に良さそうに聞こえるかもしれませんが、推奨されているのは合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)であることを覚えておきましょう。

ただし、天然葉酸に全く効果がないわけではありません。体内に摂取されにくく、神経管閉鎖障害の低下に効果があったとする研究結果の事例数が充分にないだけです。

葉酸が多く含まれる食材や食品を摂りつつ、葉酸サプリメントから合成葉酸を摂取することを心がけましょう。

葉酸は妊娠前から意識的に摂取しよう

葉酸は、妊娠が判明する1ヶ月以上前から授乳期間が終わるまで推奨量を摂取し続けることが大切です。たとえば、赤ちゃんが1歳になるまで授乳を続ける場合、妊娠前から授乳が終わるまでの約22ヶ月の間は葉酸を摂り続けることが必要となります。

これだけ長い期間、適切な量の葉酸を摂取するためには、自分にあったサプリメントや食材を見つけることが大切です。葉酸サプリメントには様々な種類があるため、安全性や飲みやすさを重視して選ぶようにしましょう。

葉酸を多く含む食材についても詳しく知っておくと、毎日の食事に上手に葉酸を取り入れることができますよ。

妊活中や妊娠中の生活に葉酸を上手に取り入れて、健康的な生活を送っていけるといいですね。

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