妊娠糖尿病とは?原因や症状、治療法は?入院は必要なの?

記事監修 産婦人科医 浅川 恭行
浅川 恭行 1993年東邦大学医学部卒業。2001年同大学院医学研究科卒業後、東邦大学医学部助手、東邦大学医療センター大橋病院講師を経て、2010年より医療法人晧慈会浅川産婦人科へ。東邦大学医療センター大橋病院客... 続きを読む

妊娠すると体調が大きく変化し、妊娠前には考えられなかったトラブルに見舞われることがあります。そのなかでも注意したいのが「妊娠糖尿病」。「体重が増えすぎないように注意していたのに、まさか糖尿病なんて…」と驚く人もいますが、妊娠中は誰でも発症する可能性があります。今回は、妊娠糖尿病の原因や症状、治療法についてご説明します。

妊娠糖尿病とは?

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「妊娠糖尿病」とは、妊娠の影響で発症する糖代謝異常の一種です。妊娠前から糖尿病と診断されていたわけではなく、妊娠中に初めて見つかったもので、糖尿病には至らないものを指します(※1,2)。

すべての妊婦さんのうち、妊娠糖尿病と診断される割合は約12%で、今まで糖尿病とは縁がなかった人でも発症することがあります(※3)。

妊娠糖尿病になると、様々な合併症が起こるリスクや、将来的に糖尿病になる可能性が高まるため、早期発見と適切な対処をする必要があります(※1)。

妊娠糖尿病の原因は?

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私たちの体内では、食事によって血糖値が上がると、膵臓(すいぞう)からインスリンが分泌されます。インスリンの働きによって、脳や筋肉ではブドウ糖が取りこまれ、肝臓や脂肪組織でブドウ糖からグリコーゲンや脂肪が作られるようになることで、血糖値が上がりすぎないようにコントロールされています。

しかし妊娠中、特に妊娠後期は、肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働きにくく、軽度の糖代謝異常が起こりやすい状態になります。その原因は、インスリン作用を打ち消す「胎盤性ホルモン」などの分泌が妊娠によって増えるためだと考えられています(※2,4)。

妊娠糖尿病になりやすい人は?

離乳食 注意

妊娠糖尿病のリスク因子として、次のものが挙げられます(※2)。

● 糖尿病の家族・親族がいる
● 肥満
● 妊娠中に体重が急増した
● 35歳以上の高齢出産
● 巨大児を出産した経験がある
● 尿糖で頻繁に陽性が出ていた
● 尿検査で、頻繁に尿糖陽性(プラス)が出る

妊娠糖尿病の症状は?母体や胎児への影響は?

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妊娠糖尿病に自覚症状はほとんどありません。喉が渇きやすくなったりトイレが近くなったりすることもありますが、このような症状は妊婦さんならよく起こるものなので、妊娠糖尿病によるものかどうかを判断することは難しいとされます。

自覚症状がないうちに悪化すると、母体と胎児に次のような合併症を引き起こすリスクが高まります(※2,4)。

母体の合併症

● 妊娠高血圧症候群
● 流産・早産
● 糖尿病の合併症(網膜症や腎症、神経障害など)

胎児の合併症

● 胎児発育不全、または巨大児
● 胎児機能不全
● 子宮内胎児死亡

また、母体だけでなく胎児も高血糖の状態になってしまうと、先天奇形や羊水過多症になる恐れもあります。さらに、高血糖を感知して胎児の膵臓から過剰にインスリンが分泌されてしまうと、赤ちゃんが大きくなりすぎて難産になったり、生まれた後に新生児低血糖に陥るリスクもあるのです。

妊娠糖尿病は検査でわかるの?

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先述のとおり、妊娠糖尿病は自覚症状がないにも関わらず、発症すると母体や胎児に様々な悪影響を与えるため、早期発見が不可欠です。

日本産科婦人科学会では、すべての妊婦さんを対象に妊娠初期・中期に妊娠糖尿病のスクリーニング検査を行うことを推奨しています(※5)。

まず妊娠初期に血糖値を測り、数値が高いときにはさらに「ぶどう糖負荷試験」を実施して、妊娠糖尿病かどうかの診断を行います。

妊娠初期の検査で陰性であった場合でも、妊娠週数が進むにつれてインスリンの働きが鈍くなるため、妊娠24~28週に再度スクリーニング検査を受ける必要があります。

妊娠糖尿病の治療法は?

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妊娠糖尿病と診断されたら、合併症を予防するため、入院したうえで食事療法を行い、妊婦さんの血糖値を正常に戻し、適正な体重増加を目指します。また、お腹の赤ちゃんの成長に必要な栄養をきちんとつけることが大切です。

妊娠中は、空腹時の血糖値が低い、食後の血糖値が高くなりやすいという特徴があります。そのため、食後に急に血糖値が上昇しないように、1日の食事量を4~6回に分ける「分食」を行うこともあります。

もし、食事療法であまり血糖値の改善が見られなければ、血糖値をコントロールするためにインスリンを投与することがあります。

妊娠糖尿病は産後にも影響するの?

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妊娠糖尿病は、胎盤から分泌されるインスリンを抑えるホルモンが影響していると考えられており、ほとんどの場合、出産後に胎盤が排出されると自然治癒します。

ただし、妊娠糖尿病と診断された人は、産後6~12週間後に再びぶどう糖負荷試験を受け、血糖値が元に戻っているか医師に見てもらいましょう。

また、一度妊娠糖尿病を発症した人は、発症したことがない女性と比べて、将来的に糖尿病になる確率がかなり高いといわれています。産後も定期的に検診を受けることをおすすめします。

なお、産後に母乳を与えると、ママも赤ちゃんも糖尿病になりにくくなるということがわかっています(※5)。産後も生活習慣に気をつけながら、定期的に検査を受けましょう。

妊娠糖尿病のリスクを減らしましょう

イメージ 手の平 朝日 希望

妊娠中はどうしても、生理的に糖代謝異常を起こしやすい状態です。完全に妊娠糖尿病を予防することは難しいですが、栄養バランスのとれた食生活や、無理のない範囲での運動を心がけ、できるだけ発症リスクを減らしましょう。

妊娠中の生活習慣に気をつけることで、ママ自身の合併症リスクを下げるだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康を守り、スムーズなお産をすることにつながりますよ。

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